作品タイトル不明
993話 ラストバトル・その5
光の翼。
それは、精霊族の覚醒状態で発生する現象だ。
それだけではない。
竜を思わせるような装甲をまとい。
髪が伸びて、光り輝く。
竜族と天族の覚醒……
これでラインハルトは、四種族の覚醒を同時に使ったことになる。
「これが、俺の二つ目の切り札だ。四種の最強種の覚醒を同時に使うことで、その力は累乗で加算されていく。そうだな……名付けるのなら、『並列覚醒』とでも言うか」
つまり、今のラインハルトは……
覚醒した猫霊族の身体能力と、覚醒した竜族の力と魔力を持ち。
覚醒した精霊族と天族の魔法を操ることができる。
その上で、今までの数倍の力を身に着けている。
なんて無茶苦茶な……
諦めるつもりはない。
ただ、勝てる気がしない。
「この状態になると、手加減は難しい。できることならば、お前達は殺したくないが……最後に聞こう。続けるか?」
「もちろんだ」
心は絶望に囚われかけていたが、それでも、俺は即答した。
ここで負けるわけにはいかない。
折れるわけにはいかない。
俺は、俺の信じる道を進む。
そのために、仲間達がついてきてくれている。
俺一人の戦いじゃない。
これは、みんなの戦いだ。
だから……
「どこまでも食らいついてみせるさ」
「よくぞ言った、我が主よ。そなたのような主を持つことができて、私は幸せ者だな」
「僕もいるよ。ずっと、隣で支えてみせるから」
「今こそ、勇者の役割を果たす時だよね。その名に恥じない戦いを見せてあげる!」
エーデルワイス、ユウキ、シフォンも立ち上がる。
誰も心は折れていない。
なら……まだだ。
まだまだやれる。
「……諦めることはないか」
ラインハルトは残念そうに言う。
……もしかしたら、彼は本心では戦いは望んでいないのかもしれない。
戦火を撒き散らすことは本意ではないのかもしれない。
ただ、そうだとしても。
やはり、ラインハルトの主張を認めるわけにはいかない。
人間が人間らしく生きるために。
この世界に存在する権利を得るために。
「いくぞ」
「ああ」
残念だけど、対話は終わり。
後は力を示すだけだ。
最初に動いたのはラインハルトだ。
「来い、異界の魔剣」
ラインハルトは短剣を鞘に収めると、代わりに、召喚魔法で一振りの剣を手にした。
刀身だけではなくて、柄まで赤い剣だ。
その剣を掲げて、さらに魔力を練り上げる。
「イクシオンブラスト、イフリートディザスター、ガルーダブラスト」
超級魔法の連発。
破壊の嵐が吹き荒れて、玉座の間を滅茶苦茶にかき回していく。
「それくらいで!」
「ルナティックボルト!」
シフォンが極大の雷撃を放ち、ラインハルトの魔法を一部、相殺した。
そこにユウキが飛び込み、一気に距離を詰める。
なんていう無茶を。
一歩間違えたら、超級魔法が直撃していただろう。
でも、二人は賭けに勝った。
攻撃を突破して、ユウキは双剣を振る。
「はぁあああああっ!!!」
乱舞。
踊るかのように流れるような動作で、次々に斬撃を繰り出していく。
一切隙のない、流麗な攻撃だ。
これなら、と思うのだけど……
「その程度か」
「ユウキ!」
ユウキの猛攻をくぐり抜けて、ラインハルトが蹴撃を放つ。
側頭部をえぐるかのような、鋭い一撃。
俺は急いで前に出て、その一撃をアイギスで受け止めた。
「くっ!?」
きちんと防いだはずなのに、それでも、全身が震えてしまうかのような衝撃が伝わってきた。
これが、今のラインハルトの力か。
猫霊族と竜族、両方の力が累乗されていて、一気に打ち崩されてしまいそうだ。
「いいぞ、二人共」
さらに、エーデルワイスも飛び込んできた。
濃密な魔力を拳にまとわせて、それで殴りかかる。
ラインハルトは迎撃の拳を放つけれど……
しかし、それを強引に塗り替えるように、エーデルワイスはラインハルトの防御を貫いて、殴り飛ばした。