作品タイトル不明
990話 ラストバトル・その2
「切り札を使わせてもらうことにした」
そう語るラインハルトに、特段、目立った変化はない。
見た目はなにも……いや。
外見に限った話で、中身は違う。
以前、共闘した時とはまったく違う質の力と、圧倒的なプレッシャーを感じる。
なんだ、この力は……?
まるで、複数の最強種を相手にしているかのような……
「ちっ、厄介なものを……」
エーデルワイスが苦い表情に。
「なにか心当たりが?」
「おそらく、『共鳴』だな」
「『共鳴』?」
「我が主のようなテイマーは、最強種などと契約した場合、その力の一端を得ることができるだろう? それと似たもので、『共鳴』は契約した相手の力を使うことができる」
「ただし」と間を挟んで、さらに続ける。
「力の一端を得るのではない。契約した相手の力、全てを得ることができる」
「なっ……!?」
反射的にラインハルトを見た。
目を凝らす。
テイマーが持つ観察眼で、今度こそ見逃しのないように、しっかりと見る。
そして……
見えた。
ラインハルトは、一見するといつもと変わらないように見える。
その身に大きな変化はない。
ただ、まとうオーラはまったく別のものに変質していた。
あふれる魔力も今までと大きく異なる。
ミツキ、アリエイル、モナ、オフィーリア……彼女達の幻影がラインハルトに重なる。
それぞれの力を最大限に引き出している様子だ。
力と魔力はエーデルワイスに匹敵……いや、彼女を超えているだろう。
「貴様……私と戦った時は、力を温存していたな?」
「本当にどうしようもなくなれば、『共鳴』を使うつもりだったが……レインがなんとかしてくれたからな。将来、敵となる者の前で切り札を軽々と見せるほど愚かではない」
つまり……
エーデルワイスと戦った時に、ありったけの力を使い果たした俺は愚かということになる。
まあ、その通りだ。
あの時、今の俺にできる手は全部打った。
ラインハルトはその全てを見て……俺の手の内を全て把握しているだろう。
あの時点で、ここまで考えていたか。
なんて計算高い。
そして、まったく油断をしていない。
……これは、エーデルワイス以上の強敵かもしれないな。
簡単にいくとは思っていなかったが、さすがにこれは想定外だ。
「改めて、始めようか」
ラインハルトが地面を蹴る。
ダンッ! と大きな音が響くほどに強く、そして、速く駆ける。
「くっ!?」
ラインハルトが一瞬で前の前に迫る。
これは……猫霊族の力か?
『共鳴』により、ミツキの力を丸々使えるようになった。
なんて厄介な!
「こ……のぉっ!」
ヤツの攻撃の方が速い。
そう判断した俺は、咄嗟に、リファと契約したことで得た能力、魔眼を使う。
効くかどうか不安ではあったものの……
成功。
少しの間だけだけど、ラインハルトの動きを止めることに成功する。
「今なら!」
「いける!」
シフォンとユウキが前に出た。
シフォンは魔法剣を輝かせて。
ユウキは双剣を踊らせて。
それぞれ、全力の一撃を叩き込むのだけど……
「甘いな」
「「なっ……!?」」
ラインハルトは、二人の攻撃を涼しい顔をして、軽く受け止めてみせた。
これは、猫霊族だけの能力じゃない。
たぶん……竜族の力だ。
身体能力と魔力……さらに、頑丈な体も手に入れているのだろう。
二人の攻撃はまったく届かない。
「それなら……!」
俺は、シフォンとユウキに目で合図を送る。
それを受けた二人は、すぐに後ろへ下がった。
「これはどうだ!?」
出し惜しみはしていられない。
クサナギの刃をカムイに。
その状態で放つ、最大の一撃を放つ。
ガァッ!!!
轟音が響いて、大気が震えた。
衝撃波が撒き散らされる。
粉塵が舞い上がり、視界が遮られるものの……
しかし、依然として強大なプレッシャーは消えていない。
声だけが聞こえてきた。
「悪くない攻撃だが、自分の視界も塞いでしまうのは褒められないな」
「……それでも、問題はないからな」
「なに?」
その時には、すでに俺は大きく後退していた。
そして……
「滅びよ」
エーデルワイスの一撃が炸裂した。