作品タイトル不明
986話 王
「これは……!?」
玉座の間に向けて駆けている途中、城全体が大きく揺れた。
局所的な地震に襲われているかのようだ。
慌てて安全な場所に避難して、身を隠す。
「……収まったな」
「なんだろう、今の?」
「揺れだけじゃなくて、ちょっとだけだけど、ふわって浮くような感じもあったよね」
ユウキとシフォンが不思議そうに首を傾げた。
エーデルワイスが、じっと周囲を見る。
「ふむ……我が主よ。どうやら、皆がやってくれたみたいだ」
「それじゃあ……」
「ああ。動力炉は破壊されて、ラストレムナントは地に落ちた。第一段階は成功と言っていいだろう」
「よかった……それと、さすがだな」
みんななら大丈夫と思っていたけど、でも、不安もあった。
いざという時は無理をしなくていい。
自分の身を一番に考えて、撤退してもいい、とは言っていたのだけど……
「よしっ」
ついつい笑顔がこぼれてしまう。
とはいえ、喜んでばかりもいられない。
エーデルワイスが言ったように、まだ、作戦の第一段階が成功しただけだ。
ラストレムナントの機能を完全に停止させて……
そして、この先にいるラインハルトを止めなければ、勝ちではない。
ただ……
「行こう」
――――――――――
「……来たか」
古城の最上階に位置する玉座の間。
そこにラインハルトの姿があった。
ラストレムナントの主として。
世界に刃を向ける王として。
堂々としたもので、落ち着きと威厳を感じた。
俺達の行動を予期していたのだろう。
驚いている様子はない。
また、動力炉が潰されてラストレムナントが地に落ちたというのに、慌てている様子もない。
全て想定内なのだろう。
つまり……
ここからでも、まだ、逆転できる自信があるということ。
本当に底が知れない人だ。
俺は、この人に勝てるのだろうか?
……いや。
勝つのではなくて、乗り越える。
乗り越えてみせる。
「さすがだな。動力炉を狙ってくることは予想していたが、まさか、全てを破壊されるとは思っていなかった」
「素直に喜べないな……こうなることも、あなたの想定内のような気がする」
「どうだろうな」
ごまかされてしまう。
やはり底の知れない人だ。
「……本音を口にすると」
ラインハルトは苦笑しつつ、言葉を続ける。
「素直に驚いている。動力炉が全て破壊されたということは、ミツキ、アリエイル、モナ、オフィーリア……あの四人を退けたということだ。これは、本当に考えていなかった」
「……信じていたんだな」
「仲間だからな」
ラインハルトとミツキ達も、俺達と同じように絆で結ばれている。
なんだかんだ、彼も俺と同じ人間なのだ。
ふと、そう思うことができた。
「さて……始めるか」
気軽な様子で言い、ラインハルトは玉座から立ち上がる。
なにを始めるか?
改めて問うまでもない。
でも……
「ちょっと待ってくれないか?」
「なんだ? 仲間が駆けつけてくれることを期待しているのか?」
「いや、そうじゃない」
カナデ達は、ミツキ達の相手をして、たぶん、もう戦えないくらい疲弊しているだろう。
それだけの相手だ。
それなのに、さらに戦ってもらおうなんて考えていない。
現に、動力炉を破壊した後は脱出するように言ってある。
「なら、なにがしたい?」
「……話を」