作品タイトル不明
982話 チームイリス・その3
「本気でいきましょう」
オフィーリアの髪が伸びて、水の中にいるかのように、ゆらゆらと揺れていた。
背中の翼は蝶のような羽に変わり、キラキラと光り輝いている。
覚醒だ。
恐ろしいほど濃密な魔力が放たれている。
今までは様子見。
そして、これからは本気。
フィーニアとサクラは、ごくりと息を飲む。
ただ、イリスは平然としたままだ。
余裕の笑みすら浮かべている。
「では、わたくしも……」
イリスも覚醒状態に移行した。
オフィーリアと同じような姿になり……
それだけを見るならば、二人は姉妹にしか思えないだろう。
「……一つだけ、よろしいですか?」
イリスは切なそうな寂しそうな……
そんな困った顔をしつつ、オフィーリアに問いかけた。
「わたくし達が勝ったとしても負けたとしても……オフィーリア姉さまは、この戦いの後、どうされるおつもりですか?」
「この後……?」
オフィーリアは小首を傾げた。
「……考えていませんでした」
ラインハルトのために。
それだけを考えて、ここまで駆け抜けてきた。
他のことはなにも考えていない。
思い浮かぶこともない。
「そうですか……ふぅ。なら、なおさら、負けるわけにはいきませんね」
「イリス……?」
「未来を掴み取るために戦うわたくし達が、未来を考えていない方に勝てない道理はありませんわ……そう思いませんか?」
「……」
一瞬……本当に一瞬ではあるが、オフィーリアは苦い顔をした。
「さて……フィーニアさん、サクラさん。もう少しがんばりましょう」
「は、はい!」
「わふっ!」
フィーニアとサクラは、任せて! という感じで頷いた。
対峙する三人と一人。
イリス達の方が数は優勢ではあるが、しかし、戦力差はまだ開いている。
オフィーリアの覚醒というのは、イリスもまともに見たことがない。
通常時であれほど厄介だったのだから、覚醒したら、手に負えないくらいになっているだろう。
しかし。
こちらは頼もしい味方がいる。
不思議と、負けるわけがないと思うことができた。
「……本当に、わたくしはレインさまの影響を受けているのですね」
苦笑して……
「いきますわ!」
「い、いきましゅ!」
「いく!」
三人は同時に駆けた。
事前に示し合わせたわけではない。
他の二人ならこうするだろうな、とそれぞれが考えて、判断した結果だ。
イリス達は、それぞれ別方向からオフィーリアに向けて突撃した。
これもまた、自然に行ったことだ。
即席のチームで即席の連携を行う。
普通なら、そんなものは通用しないのだけど、彼女達の場合は違う。
互いの動きをカバーしつつ、相手を活かすような攻撃をみせて、見事な連携を披露してみせた。
強い絆で結ばれている証拠だ。
即席だとしても、完璧にこなしてみせる。
「来たれ……」
「っ!? 散開!」
「終焉の白撃」
オフィーリアが極大の反撃を撃つ。
世界が光に包まれたかと思うほどの、強烈な一撃だ。
直撃すれば、最強種であろうとただではすまない。
ただ、イリスがその挙動に先に気づいたことで、三人は回避に成功した。
連携を繰り出している中、一転して回避に移行する。
そんな簡単に切り替えることは、なかなか難しい。
これもまた、日頃の時間を積み重ねてきて、培われた絆のおかげだろう。
しかし。
「終焉の白撃」
「連撃!?」
もう一度、世界が白に染まる。
そこまでは読めない。
イリスは悲鳴じみた声をあげた。
極大の光の奔流が迫る。