作品タイトル不明
980話 チームイリス・その1
「邪魔ですわ!」
襲い来るゴーレムを、イリスは魔法で蹴散らした。
サクラは殴り飛ばした。
フィーニアは炎を極限まで束ねた翼で撃ち抜いた。
彼女達を止めようと、大量の兵器が殺到するものの……
その全てが返り討ちに遭う。
兵器が弱いのではない。
一体でベテランの冒険者数十人を相手にできるような、強力な力を持つ。
それが十数体。
普通に考えれば絶望しかないのだけど……しかし、今回は相手が悪い。
イリスは、最強種の中の最強と呼ばれている天族。
サクラは物理と速度に優れた呀狼族。
そしてフィーニアは、攻防兼ね備えた特別な最強種。
彼女達を常識で止めることはできない。
破竹の快進撃を続けて……
そして、三人は動力炉に辿り着いた。
「ようこそ」
待ち受けるは、イリスと同じ翼を背中に宿す者。
天族のオフィーリアだ。
どこかの誰かのように、いきなり攻撃をするようなことはなくて、ぺこりと頭を下げて、礼儀正しく三人を迎える。
「私が、この動力炉の守護者となります。動力炉を破壊したいというのなら、私を倒してからにしていただきましょう」
「……オフィーリア姉さま……」
一瞬、イリスは切ない表情に。
姉と慕う相手と戦う。
そのようなことは、できるなら避けたい。
しかし、すでに覚悟は決めた。
オフィーリアがラインハルトに付き従うように、自分も大事な主を見つけた。
己の全てを捧げてもいいと思えるような、そんな人を見つけることができた。
ならば、退くという道はない。
「みなさん、やりますわよ」
「いいの?」
「イリスさんは、下がっていても……」
「大丈夫ですわ。これは……ただの姉妹ケンカですから」
「「……」」
サクラとフィーニアが目を丸くした。
オフィーリアも目を丸くした。
イリスは、戦うは戦うけど……
しかし、殺し合いをするつもりはないと明言したのだ。
一斉に笑う。
「ふふ。とても素敵でございますね」
「わふー、なら、ぼくもがんばる!」
「ええ。わたくし達の力、見せてさしあげましょう」
そして……戦いが始まる。
――――――――――
「来たれ、異界の炎」
まずは小手調べ。
イリスは使い慣れた魔法を放ち、
「い、いきましゅっ!」
合わせて、フィーニアも炎の翼を広げて、攻撃を重ねた。
イリスとフィーニアの合体攻撃。
二つの炎は一つとなり、紅蓮の業火と化す。
それはオフィーリアを飲み込もうと疾走する。
獣のように、鳥のように。
「問題ありません……来たれ、異界の炎」
オフィーリアもまた、炎を召喚した。
迫る業火にそれをぶつけて、相殺してみせる。
イリスとフィーニア、二人分の力を、たった一人で打ち破る。
初手から力の差を見せつけられて、イリスとフィーニアはわずかにたじろいだ。
「ひぃっ……!? な、ななな、なんであんなにぃ……!?」
……フィーニアは、たじろぐを通り越して怯えていた。
とはいえ、戦意が消えたわけではない。
臆病で人見知りなところは変わらないものの、仲間を見捨てることは絶対にない。
きちんと成長しているのだ。
「続けて……おや?」
追撃に移ろうとしたところで、オフィーリアは、一人、姿が見えないことに気づいた。
魔力を使い、周囲を探知して……
「上ですか」
「わふっ、後ろ!」
驚きの跳躍力で、サクラが直上から襲撃をしかけてきた。
さらに、途中で空気を蹴り、軌道を変更。
そのままオフィーリアの背後に回り込み、くるっと回転しつつ、両足のキックを叩きつける。
こうしたトリッキーな動きこそ、呀狼族の得意技だ。
「……問題ありません」
「わふ!?」
オフィーリアは対処が間に合わなかった。
まともにサクラのキックを受けた。
それでも、ダメージはほとんどない様子で、平然と立っている。
サクラの片足を掴んで、そのままスイング。
地面に叩きつける。
「かっ……!?」
「少し、おしおきが必要ですね」