作品タイトル不明
970話 チームタニア・その2
「あなた達……ふざけた真似をしてくれたわね」
地の底から響いてくるかのような、アリエイルの声が聞こえてきた。
舞い上がる粉塵のせいで、その姿は見えない。
ただ、声を聞く限り、大してダメージは受けていないと判断できた。
「いいわ、そちらがそういうつもりなら、私も遠慮しない」
アリエイルの声は闘気に満ちていた。
大気を震わせるほどに激しく。
心弱き者の意思をくじくほどに猛る。
「覚悟なさい」
舞い上がる粉塵の中……
二つの輝きが。
それはアリエイルの瞳の光。
赤く、赤く、赤く……
どこまでも深い紅に染まる。
そして……
「ガァアアアアアッ!!!」
獣のごとき咆哮。
粉塵を一瞬で撒き散らして。
落ちてくる瓦礫を吹き飛ばして。
……真の最強が降臨する。
「なぁ!? こ、これは……」
「ドラ……ごん」
タニア達の前に現れたのは、巨大なドラゴンだ。
その鱗は金色に輝いて。
翼は空を覆うほどに大きく。
そして、全てを圧倒するほどのプレッシャー。
「ちっ……まさか、ゴールドドラゴンだったとはね」
『あら、知っているの? なかなか博識ね、褒めてあげる』
「母さんに色々と叩き込まれたから」
ドラゴンは複数の種が存在する。
レッドドラゴン、ブルードラゴン、グリーンドラゴン……
中でも一際強い力を持つのが、ゴールドドラゴンだ。
その力は、竜族の中でトップクラス。
敗北したという記録はなし。
強いて挙げるならば、個体数が極めて少ないため子を成すことが難しい、というのが弱点だろうか?
『これが私の真の姿……そして、覚醒よ』
「やっぱり……ね」
タニアは苦々しい顔をした。
竜の形態に戻ったにしては、感じる力は圧倒的すぎる。
最強種の切り札……覚醒状態に移行したのだろう。
竜族の覚醒状態は、基本、本来の姿に戻り、使用することとなる。
そして、元の数倍、十数倍の力を得る。
それが竜族の覚醒だ。
『さあ、塵に返してあげる!』
アリエイルは前足を振り上げて……
巨人が槌を振り下ろすかのように、一気に地面に叩きつけた。
「あうあう!?」
「ニーナさん!」
地震が起きたかのように床が揺れて、ニーナが転ぶ。
慌ててティナとコハネが駆け寄り、起こした。
タニアはふんばり、体勢を維持。
そのまま反撃の拳を振りかぶる。
「これでも……喰らいなさいっ!!!」
『甘いわ』
アリエイルは、その巨体からは想像もできないほど俊敏に動いてみせて、タニアの攻撃を回避。
さらに、その場でターンをして、尻尾を鞭のように払う。
「ぐっ……!?」
直撃。
タニアは、次は踏みとどまることができず、吹き飛ばされた。
床を転がり、壁に激突。
大きな穴を開けて、ようやく止まる。
「かはっ……なんて、バカ力なのよ……」
「タニアさん!」
「あたしは大丈夫……まだまだやれるわ。それより、そっちは?」
「わたくし達も問題ありません」
「せやけど……なんや、いきなりピンチになってしもうたな」
ティナはうまく笑えない様子で、苦い表情を浮かべていた。
ニーナ、コハネも似たような感じだ。
「……みなさま。いざという時は、わたくしの力で……」
「大丈夫よ」
コハネの言葉を遮り、タニアが自身たっぷりに言う。
「たにあ……?」
「相手が切り札をいきなり切ってきた。それに驚いたけど……でも、あたし達だって、切り札を持っているわ。そうでしょ?」
タニアは不敵な表情を浮かべて、歩いて……
再びアリエイルの前に立つ。
『なに? また吹き飛ばされに来たのかしら?』
「いいえ、吹き飛ばされるのはあんたの方よ」
『あははは! 面白い冗談ね。どうやればそんなことができるのか、後学のために教えてくれるかしら?』
「それはね……こうするのよっ!!!」
アリエイルがそうしたように……
タニアの瞳もまた、紅に輝いた。