作品タイトル不明
961話 潜入のために必要なこと、それは……
戦闘の音が聞こえてきた。
それなりの距離が離れているはずなのに、それでも、ハッキリと音が聞こえている。
それだけの激戦が繰り広げられている、ということなのだろう。
心配だ。
大丈夫だろうか?
俺達も戻り、参戦した方が……
そんなことを考えてしまうものの、我慢した。
それじゃあ作戦を立てた意味がない。
それぞれに役割が与えられている。
俺達は、俺達にできることをやらないと。
「レイン、この辺りでいいんじゃないかな?」
「ですね。ちょうど、ラストレムナントの裏側に回り込むことができたかと」
「コハネさんがそう言うのなら安心できますわ」
「あれ? 私も同じことを言ったんだけど?」
「ところで、ここから次はどうするの?」
シフォンが小首を傾げた。
ちなみに、突入メンバーは俺達のパーティーと……
シフォン率いる勇者パーティー。
それと、国を代表して、ユウキが参加している。
「確か……ルナさんに策があるんだよね?」
「うむ、我に任せるがよい!」
「今の今まで詳細を話さないところに、ソラは、一抹の……いいえ。かなりの不安を感じているのですが」
「安心するがいい、我が姉よ。見よ! これが我の秘策なのだ!」
力強く言い放ち、ルナが取り出したものは……
「絨毯?」
今度はタニアが小首を傾げた。
ルナが地面に広げたものは、コンパクトサイズの絨毯だ。
ただの絨毯ではなくて、なにやら魔法陣が描かれている。
「おー、綺麗な絨毯だぞ」
「これ……うーん? 絨毯なんて、どうするの?」
「まあ、見ているがいい。こういう時は、とてもシンプルな方が逆にやりやすく、そして、成功率が高いというものだ。というわけで……カナデよ」
「にゃん?」
「この絨毯の上に乗って、軽くジャンプするのだ。ああ、その際、要塞の方を向いていること」
「こう?」
言われた通り、カナデは絨毯の上でぴょんと跳ねて……
ドガァッ!!!
「うにゃあああああぁぁぁーーーーー……!!!?」
カナデがものすごい勢いで中に射出された。
ドップラー効果で悲鳴が遠ざかっていく。
あっという間にその背中が点ほどに小さくなり……
そのまま見えなくなった。
「「「……」」」
あまりに突然のことで、俺を含めて、みんな唖然としてしまう。
そんな中、ルナだけは得意そうに胸を張る。
「見たか! これが我の秘策、数百メートルを一気に飛び上がることができる、超強力魔法式射出装置なのだ!!!」
「アホですかっ!!!」
「ふぎゃん!?」
ソラの渾身のツッコミが炸裂して、ルナが地に沈んだ。
「バカですか!? バカなんですか!? 秘策があるというから任せたのに、こんな……こんな無茶苦茶な方法だったなんて!」
いや……うん。
これは、俺もさすがに擁護できないぞ。
「ま、待て、我が姉よ……これが、シンプルかつ、一番確実な方法なのだ」
「どこがですか!? カナデがお星さまになってしまったじゃないですか!」
「大丈夫なのだ。きっと、要塞に取り付いたのだ」
ルナは懲りることなく、ドヤ顔で語る。
……ここでドヤ顔ができる精神力は、本当、心から尊敬するぞ。
「超高速で一気に要塞に乗り込む。これが最適解なのだ」
「だとしても、飛行魔法を使うとか、他に方法があったでしょう」
「それでは、途中で撃墜されるかもしれぬ。だから、超高速を叩き出すために、こうして射出する必要があるのだ」
「そう言われると……」
「……問題はあるかもしれませんが、ルナさまの仰ることは正しいかと」
コハネが援護をした。
彼女の言葉なら……と、他のみんなも納得する。
その反応に、ルナはちょっと不満そうにしたものの、その不満は飲み込んで、話を先に進める。
「とにかく、これで侵入経路は確保したのだ。早く乗り込むのだ」
「「「……」」」
みんな、固まる。
たぶん、思い浮かべているのは、悲鳴をあげつつ吹き飛んでいったカナデの姿だろう。
アレをしないといけないのか……?
崖から飛び降りるよりも難易度が高く、恐怖が倍のような気が……
「あわわわ……」
ほら。
ニーナなんて、ガクガク震えているよ。
とはいえ……
他の方法はなさそうか。
ルナが言うように、これが一番早い。
「えっと……ルナ。これ、定員とかは?」
「三人までだな」
「なら、三人ずつ飛ぼう。それで、互いをフォローする感じで」
「オッケー。じゃあ、あたしは……そうね。ニーナ、一緒に行きましょう。それと、ティナ」
「ん……」
「オッケーやで!」
それぞれ三人組を作り、飛んでいく。
ちなみに、俺が組んだ相手は……
「えっと……よろしくね、レインくん」
「ふむ。勇者と一緒か……まあ、いいだろう」
シフォンとエーデルワイスだった。
それぞれ体を寄せ合い、せーの! で絨毯に乗る。
巨人に殴られたかのような衝撃。
一気に上空に吹き飛ばされて、高速で飛んで……
そのまま要塞の外壁に叩きつけられそうになるものの、エーデルワイスが魔法を使い、どうにかこうにか着地することができた。
「こ、これ……ものすごい過激なアトラクションみたいだね……心臓が止まるかと思ったよ」
「ふっ、勇者というわりに情けないな。我は、とても楽しいと感じたぞ?」
「むっ……わ、私だって楽しかったよ! ね、レインくん!?」
「俺に振られても……」
なんていうか……
最終決戦なのに、いつもと変わらない空気だな。
それが俺達の強みでもあり……
良いところなんだろうな。