作品タイトル不明
939話 お母さんズ
ラインハルトとの決戦を控えた前だけど、たくさんの人の協力で旅行に行き、英気を養うことができた。
正直、これはとてもありがたい。
王都でアリオス達と戦い。
その後、西大陸へ渡り、リースとモニカと戦闘。
さらにエーデルワイスと激突して……
思えば、かなり無茶なことをしたものだ。
よく乗り切った、と自分で自分を褒めてやりたい。
それくらいの強行軍だ。
それからの旅行。
みんなも疲労が溜まっていたらしく、いつも以上に笑顔だったような気がする。
疲労は回復。
気力も体力も充実。
これで万全……とはいかない。
ラインハルトの戦闘力は、エーデルワイスより下だろう。
彼の仲間達はとても強いが、たぶん、カナデ達と互角か少し上。
やってやれないことはない、と思う。
ただ……
そうそう簡単にいくわけがない。
相手は、初代勇者であり、長い時を生きて蓄えてきた知恵がある。
魔王城の攻防で見せたものが全てなわけがない。
切り札の一つや二つ……いや、十くらいは隠し持っているだろう。
だからこそ、世界を相手に戦う自信を見せている。
それだけの大物を相手にするのだから、俺達は、レベルアップが必要だ。
こちらも切り札が必要だ。
英気を養い、準備はできた。
「さあ、交渉の時間だ」
――――――――――
「……なんだかのう、儂らの里が最近、都合よく使われすぎているような気がするのう……」
精霊族の里の長がぼやく。
いや、えっと……
そこは、本当にごめんなさい。
ただ、物理的な距離を無視できて移動できる精霊族の里は、本当に便利なのだ。
通常時はともかく、時間のない非常時はどうしても頼りにしてしまう。
「ま、細かいことを言うでない。普段、廃村のように静かな里が賑やかになるのじゃ。楽しくてよいではないか」
ソラとルナの母親のアルさんが、カカカ、と笑う。
場所は長の家。
円卓を囲むということはなくて、それぞれ、適当な場所に腰かけて……あるいは壁に背を預けていた。
俺達と……
スズさん、フウリさん。
アルさん、ミルアさん、レゾナさん。
エルフィンさん、シグレさん。
ノキアさん。
それと、ソラとルナの友達のユキ。
他、多数の最強種。
最強種の会議だ。
「さて、レインよ。お主には色々と借りがあるからのう。こうして、要望に従い我らが集まってみせたぞ。避難準備中ではあるが、まあ、それくらいの時間は構わんからな」
「ありがとうございます」
「ふんっ。別にあんたのためなんかじゃないわ。勘違いしないでよね」
「ユキはツンデレですね」
「ツンデレなのだ。心配して、わざわざ参加してくれるとか、良い友達なのだ」
「なっ!? そ、そそそ、そんなわけないじゃない? ソラとルナが関わっているから、無理を言って参加させてもらったとか、そんなわけないじゃない!?」
とてもわかりやすい子だった。
「ま、話はだいたい、予想がついておるがのう」
「ラインハルトさんのことですね?」
「あれ? お母さん、ラインハルトを知っているの?」
「ええ、もちろん」
「にゃんで?」
「秘密です♪」
スズさんは、本当、秘密が多いから困る。
妙なところまで知識が伸びているような気がするんだよな。
「それで、僕達に協力を……というところかな?」
フウリさんが、話をまとめるように静かに言う。
それに対して、俺はしっかりと頷いた。
「ラインハルトは、ある意味で、魔王……エーデルワイスよりも厄介な相手です」
「む。主よ、それは聞き捨てならぬな。たかが人間に私が負けるとでも?」
「はいはいー、エーちゃんは黙っとこうなー」
「エーちゃん!?」
「かわいい、かわいい」
「待て、お主ら。それは私のこと……こらっ、頭を撫でるでない!」
いつの間にかエーデルワイスもみんなに馴染んでいるようでなにより。
って、話が逸れた。
「ラインハルトの目的は、人間の殲滅。このまま放置することはできません」
「でしょうね。しかし、私達は関係ありません。彼が狙うのは、あくまでも人間のみ。私達、最強種は関係ありません」
「じゃからこそ、こうして避難準備をしているからのう……」
エルフィンさんとシグレさんは、あくまでもクールに言う。
ただ、突き放しているわけじゃなくて、こちらを試しているのだろう。
「結局、レインは、俺等にどうしてほしいんだ?」
レゾナさんが鋭い視線を向けてきた。
「まったく関係のない俺達にも、ラインハルトと戦え……っていうわけか?」
「可能なら。難しいとしても、他の面で、なにかしらの協力をしていただけると嬉しいです」
「はぁ……お前、舐めてんのか?」