軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

929話 歩み寄り、手を取り合い

王は席を立ち、深く頭を下げた。

その姿勢のまま、ただただ静かに、静かに謝意を見せる。

繰り返されてきた人間と魔族の戦争。

その原因を作ったのは人間であり、また、今まで戦いが続いてきたのも人間の責任によるところが大きい。

言葉で謝罪をしたとしても、それになんの意味があるのだろうか?

なにも意味はない。

そう捉えられたとしてもおかしくはない。

ただ、エーデルワイスは違った。

わずかに苦笑をした。

その苦笑は、自身に対する呆れのようなものも含まれている。

「よい、顔を上げよ」

「……これから、色々な話し合いをすることになるだろう。補償、賠償、協定……ただ、それらの前に、どうしても謝意を伝えておきたいのだ。もちろん、そこに意味を求められた場合、なにもないと答えるしかない。これは、儂の自己満足のようなものだ」

「ふむ」

「ただ、それさえもできないというのならば、前に進む資格なんてない。故に、まず最初に、謝罪をさせてほしい」

「……よい、と言ったぞ」

二度目の言葉で王は顔をあげた。

エーデルワイスは苦笑をしたままだ。

ただ、その雰囲気はどこか柔らかい。

「人間を簡単に許すことはできぬ」

「……そうだな」

「過去の罪だけではなくて、その未熟な精神性も認められない。私はこうして話し合いの場に立っているが、それに納得できぬ者もまだ多い」

「しかし」と間を挟み、エーデルワイスは続ける。

「私達魔族も、人間に許されないようなことをした」

「そのようなことは……」

「あるのだよ。殺されたから殺した。復讐を大義名分に、幼子を殺したこともある。それは、決して許されないことだろう。始まりはどうあれ、我ら魔族にも罪はある」

「……」

「なので、まず最初は、お互い様ということにしないか?」

「そのような……簡単な話にしてしまうと?」

「その方がややこしくなくてよい。複雑な話にしてしまうから、色々とこじれてしまうのだ。それに、なによりも……」

エーデルワイスも立ち上がり、王に手を差し出した。

「私達は、これから共に歩いて、肩を並べていくのだろう? なればこそ、対等な関係でいなければならぬ。そうだろう?」

「……感謝する」

王は、もう一度頭を下げつつ、エーデルワイスの手を取った。

――――――――――――

幾度かの休憩を挟み、会談はまだ続いている。

ただ、途中で俺達は席を外した。

何度か発言を求められて、手を取り合うことが必要だということを語ったのだけど……

それはもう、エーデルワイスも王も理解していた。

そして、実行に移そうとしていた。

全ての魔族、全ての人間が受け入れるというのは、なかなかに難しいことだろう。

それでも、明るい未来を掴むため、前に進むことを止めることはないはずだ。

これならもう必要ないと、俺達は会談の場を後にした。

後は、トップ同士が決めることだ。

それは、エーデルワイスと王ならば、うまいところに話を持っていけるだろうと信じている。

俺は俺にできることをしよう。

「……今のところ、大きな問題は起きていないか」

一人、魔王城を見て回る。

魔族だけではなくて、人間も多数、中にいる。

魔族は穏健派ではなくて、エーデルワイスを崇拝する過激派だ。

納得してくれたのか、不安はあったのだけど……

今のところ、問題が起きている様子はない。

全て受け入れたわけではないけど、魔王であるエーデルワイスの言葉だからこそ、無視することはできず、逃げることもせず、しっかりと考えることにしたようだ。

人間も魔族を敵視することなく、差別することもなく。

どう接していいかわからない様子ではあるが、ただ、怪我人には手を差し伸べるなど、小さな交流が見て取れた。

小さな心の触れ合い。

でも、たくさんの人が後に続いていけば、やがて大きなものになり、世界を変えていくことができるはずだ。

そう信じている。

「レイン」

振り返るとユウキがいた。

「さっき顔を合わせておいてなんだけど、ひさしぶり」

「そうだな……うん。ちゃんと言葉を交わすのは、けっこうひさしぶりだ」

笑顔と握手を交わす。

「ありがとう。レインのおかげで、なんとかなったよ。キミは英雄だね」

「そんなんじゃないって。それに、俺だけの力じゃない」

「いつもの謙遜かい?」

「いつも、って……いや、そうじゃなくて。本当に違うんだ」

仲間がいて。

シフォンやラインハルトがいて。

でも、それだけじゃ足りなかった。

エーデルワイスとの戦いの中、みんなの心を感じた。

それは大きな力となり、俺達を支えてくれた。

「だから、みんなのおかげというか……みんなの勝利だ。この結果だ。一人一人の努力と祈りによって作られた、そんな結果なんだよ」

「……そっか。うん、そうだと嬉しいね」

ユウキは優しく、柔らかく笑うのだった。