軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

923話 祈りと希望・その4

なんなのだ、この連中は?

エーデルワイスは戦闘を継続しつつ、しかし、その胸中に焦りが生まれていた。

叩いても叩いても立ち上がる。

これで終わりと、人間は元より最強種でさえ防ぐことのできない攻撃をぶつけたとしても、それでも倒れない。

なぜだ?

なぜ死なない?

エーデルワイスに蓄積されている記憶を見る限り、ここまで戦うことのできた者はいない。

ほとんどの者が『魔王』の力の前に倒れていた。

勇者という存在も同じだ。

それなのに……

「なぜだ……!?」

戦況はエーデルワイスに傾いていてる。

攻撃を連発して、敵は防戦一方だ。

それでも、削りきれる気がしない。

倒しきれる気がしない。

それともう一つ。

「この私が、あのような戯言に……!」

レインの言葉がエーデルワイスの胸中をざわつかせていた。

魔王として覚醒した以上、やるべきことはただ一つ。

人間を滅ぼす。

それが絶対無二の使命。

そのはずなのに……

「くっ!?」

エーデルワイスの中にある使命が揺らいでいた。

これは本当に正しいことなのか? ……と、わずかな疑念を抱いてしまった。

正しいことだ。

迷うことはない。

そう自分に言い聞かせているものの、一度生じた疑念は消えず、少しずつ膨らんでいく。

それを成し遂げたのはレインの言葉と……

そして、彼女の中にある魂の存在だった。

リースとモニカ。

二人は魔族と人間でありながら、本当の母娘のように……いや。

それよりも強い絆で結ばれていた。

二人の魂が捧げられて、己の中にあるからこそ、よくわかる。

言葉でごまかした関係ではなくて。

心に嘘をついているわけではなくて。

魂と魂の結びつきがある。

そのような在り方を示した二人がいるのならば、自分の行いは正しいのだろうか?

レインの言うこともまた、一理あるのではないか?

そして、もう一つ。

アリオス・オーランドという魂。

彼は人間の勇者で、天敵というべき存在だ。

しかし、勇者とは真逆の行いをして、堕ちて、魔族となった。

魔族になった目的に共感を覚えることはないのだけど……

敵として認識して、分かり合うことはできないはずの相手に、普通、なりたいと思うだろうか?

どのようなことがあっても、それを避けたいと思うのが普通ではないか?

それなのに、アリオスは魔族になることを選んでいた。

その選択に迷いを抱いていない。

つまり……

やや極端な話ではあるが、アリオスは、人間と魔族の種族差に意識が囚われることはなくて……

ある意味で、魔族を受け入れていた。

最初の頃はともかく、後々、その存在を認めていた。

リースの力を借りるということは、手を貸してもらうことで……

誇張かもしれないが、支え合うことを示していた。

それは、共存の可能性を示したことにならないか?

「ありえぬ!」

リースとモニカ。

そしてアリオスの魂は稀有な例だ。

エーデルワイスの中にある魂の大半は、人間に対して強い敵意を抱いている。

人間を殺せ。

滅ぼせ。

恨みを晴らせ。

彼らの魂が怨嗟の声を発している。

それを無視することはできない。

それを叶えることこそが、魔王である自分の使命だ。

しかし……

「魔王じゃなくて、エーデルワイスっていう、キミ自身の想いを教えてくれ!」

「くっ、そのような戯言を……!!!」

わずかな迷いを覚えて。

わずかな揺らぎを抱いて。

そんな時に、レインによって投げかけられた言葉。

それが、決定的に、致命的にエーデルワイスの心を動かしていた。

「私の想いは……どこだ?」