作品タイトル不明
915話 終わりを祈る者・その7
「「「っ……!?」」」
いよいよエーデルワイスが本気を出す。
その力の一端に触れた俺達は、一瞬ではあるが、怯え、すくんでしまう。
これが、彼女の本気……
なんていう力だ。
今までは半分の力と言っていた。
それはハッタリであってほしい。
嘘であってほしいと思っていた。
エーデルワイスの言葉は、嘘だ。
半分の力というのは、間違いだ。
だって……
「なんて……力だ」
対峙しているだけで意識が飲み込まれてしまいそう。
心が砕かれてしまいそう。
これが彼女の本気?
今まで半分の力というのは、まるきりの嘘だ。
本当は二割くらいではないだろうか?
そう思うほどの力の差を感じた。
こんな相手、どうすれば……
「主さま!」
「っ!?」
コハネの悲鳴のような声で我に返る。
気がつけばエーデルワイスが目の前に迫っていた。
まったく予備動作が見えなかった。
転移したかのようで、視認できないほど速い。
回避を……
ダメだ、間に合わない!
「くっ!!!」
アイギスのシールドを展開。
ほぼ同時に激しい衝撃が走り、視界がぐるぐると回転した。
吹き飛ばされた、と理解するのに数秒。
その数秒の間にエーデルワイスは、さらに追加の攻撃を叩き込んできた。
拳を連打して、アイギスの盾を壊してしまう。
同時に左手に魔力を集中させて、ゼロ距離で……
「イクシオンブラスト……む?」
避けられない。
直撃を覚悟したが……
「あぶ、ない」
ギリギリのところでニーナに転移で助けられていた。
「ありがとう、助かったよ」
「ん」
「ふむ、神族の転移か。面倒だな」
エーデルワイスの視線がニーナに固定された。
その視線を受けて、ニーナがびくりと震える。
「うちの子に……」
「なにするつもりなのよ!」
ティナとタニアを先頭に、みんなが前に出た。
この状態のエーデルワイスを前に、防御を考えていたらダメだ。
攻撃は最大の防御というが、まさにそれ。
とにかく高火力を叩き込み、どうにかこうにか怯ませるしかない。
多対一。
圧倒的な数の有利を活かせば、どうにか……!
――――――――――
「ぐっ……なんて、やつだ……」
全身が痛い。
あちらこちらに傷を負い、自身の正確な状況を把握できていない。
後方でフィーニアやミルフィーユが必死に治癒してくれているけれど、間に合わない。
怪我をしているのは俺だけじゃない。
みんなだ。
誰も彼も満身創痍で……
あのラインハルトでさえ服を赤に染めて、肩で息をしていた。
「全力の私を前に、よくぞここまで保った。その力だけは褒めてやろう」
対するエーデルワイスは……無傷。
ありったけの攻撃を叩き込んで。
魔法を直撃させたはずなのに、しかし、ダメージを受けている様子がまったくない。
ソラとルナに確認したが、結界の類は確認されていない。
単純に硬いのだ。
「人間よ。最強種達よ。そして、勇者よ。今は、お前達を強者と認め、敬意を表してやろう。故に……死ね」
エーデルワイスは、とんっと軽く後ろに跳んで距離を取る。
そこから魔力を溜める作業に入った。
超級魔法を無詠唱で連発できるほどの彼女が魔力を溜める。
嫌な予感しかしない。
どうにかして止めたいが、どうすれば……
「……主さま」
ふと、コハネが隣に並び、こちらを見る。
その視線には決意らしきものが宿っていた。