軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

900話 混沌の戦場

魔王城の側面……俺達がいるところと反対側。

そこに、人間の軍が現れた。

それなりの距離があるけれど、なぜわかるのか?

答えは簡単だ。

国の旗が無数に掲げられていた。

数えきれないほどの騎士。

それだけではなくて、冒険者らしき人々も同行している。

「どうして、こんな……」

シフォンを信じていなかったわけではないけれど、1週間よりも早く行動をして……

でも、それでも甘い。

想定よりも早く人間の軍は動いた。

このままだと、穏健派の魔族は二つの軍を相手にしなければいけない。

そうなる可能性も予測していた。

だから、対処は可能だけど……でも、大きな被害が出てしまう。

最悪の想定はしていたが……

その最悪がやってきてしまった。

まずい、まずい、まずい。

どうする?

どうすればいい?

「……いや、まてよ」

魔王を使役するだけでは問題は解決しない。

『魔王』という概念を消滅させなければいけない。

概念は憎しみの塊のようなもの。

希望を示すことができれば、あるいは浄化できるかもしれない。

幽霊のようなものだ。

「逆にチャンスかもしれないな」

「にゃん?」

「みんな、目標を変えていいか? 魔王のところへ行く前に、人間の軍を迎え撃つ」

「主さま、どうされるつもりなのですか?」

「たぶん、あそこには王がいる」

人類の未来を決める戦いだ。

後方で縮こまっているわけにはいかない。

最善の判断を最速でするために。

そして、兵士達を鼓舞する意味も含めて、かなり近いところにいるはずだ。

とても現実的で合理的な考え方をする王だけど……

でも、今回ばかりは前線に出ていると思う。

「どうするつもりだ?」

「説得して、仲間にしてみせる」

その上で、改めて魔王のところへ向かう。

人間と魔族が手を取り合う。

それは一つの『希望』となるだろう。

もちろん、それだけで足りるとは思っていないけれど……

『魔王』を浄化するきっかけを作れるかもしれない。

「無理だな」

ラインハルトは俺の案を即座に否定した。

「ここまで来て和平を結べると思うか? 不可能だ。見ろ、連中は戦うつもりだ。ここまできて刃を収めるわけがない。一度、敵と決めた相手と手を取り合うことはせず、殴り合うことしかできない……それが人間だ」

「違う」

今度は、俺がラインハルトの言葉を即座に否定してみせた。

「そういう人間がいるのは否定しないよ。汚い連中もたくさんいるさ」

「……」

「でも、それだけじゃないんだ。そういう人間ばかりだったら、もう、とっくに自滅していると思う。違うんだよ。ちゃんと、他人を思いやる優しさを持っている人もたくさんいるんだ。だからこそ、俺達は、その想いを、心を伝えるための言葉を獲得しているんだ。そして、和解して、仲直りするための握手をするための手がある」

「軍を率いてきた愚かな王を、説得できると?」

「絶対に」

「……わかった」

ため息と共に、ラインハルトは頷いた。

「本当にお前は頑固なヤツだ。あの二人の子供だな」

「もしかして、父さんと母さんを知っているのか……?」

「二人も俺の教え子だ」

「そう……だったのか」

ラインハルトが、父さんと母さんにテイムの技術を教えて。

それが俺にも引き継がれている。

そうだ。

人間は、そうやって色々なものを残して、継いでいくことができる。

それは技術や知識だけじゃなくて。

物だけでもなくて。

想いも引き継がれていくはずだ。

優しさも流れていくはずだ。

そのことを王に思い出してもらう。

ラインハルトが背を向ける。

「ミツキ、アリエイル、モナ、オフィーリア……来い」

「にゃん? 人間をぶっ殺す?」

「違う。穏健派の魔族の援護にいくぞ。敵が一つ増えたとなれば苦戦は避けられないだろうからな」

「では、私達も、一度戻りましょう」

ジルオールが続けて言う。

「私達、魔族がいては問題があるかもしれませんからね」

「……すまない」

事実、その通りかもしれないので頭を下げるしかない。

「気にしないでください。代わりに、絶対に説得してください。でなければ、私達は、今日ここで終わりになるでしょう。私達、穏健派の運命……レインさんに託します」

「託された」

とても重いものを受け取ってしまった。

でも、怯むなんてことはない。

むしろ勇気が湧いてきた。

絶対に期待に応えてみせる……と。