作品タイトル不明
897話 私達のやるべきこと
お守りが完成して、予備を含めて量産も完了した。
その翌日。
レイン達は、魔王城に進軍するための準備を進める。
武器、道具などの補充。
それだけではなくて、長期の行動も想定して、水や食料の手配も。
作戦会議。
一つだけではなくて、いざという時に備えて複数の策を練る。
レイン達と魔族は一つになって……
同じ目的のために手を取り合い、前に進んでいた。
その光景は、いつか、ラインハルトが求めていたものだ。
しかし……
今、その光景を見ても、ラインハルトはなにも思わない。
なにも感じない。
彼の心はすでに凍りついて、そして、揺るぎない目的を定めているのだから。
――――――――――
「よーし、こんなところかな!」
カナデは荷物を運び終えて、にっこりと笑う。
作戦会議など、難しいことはよくわからない。
なので、明日の決戦に備えて準備を手伝うことにした。
食料や水などの荷物を運び終えて、作業は終わり。
後は、明日に備えて休むだけだ。
「おかえりなさいませ」
宿に戻るとコハネに迎えられた。
部屋の中を見ると、レインを除く仲間が全員揃っていた。
「あたし達にできること、もう終わりかしら?」
「んー……どうなのだ?」
「ちゃんと工程を把握しておいてください。ソラ達にできることは、もうなにもありません。後は、明日を待つだけですよ」
「すや、すや」
窓の外は暗く、すでに陽は落ちている。
ただ、寝るにはまだ早い。
それと緊張も重なり、眠気はやってこない。
「お守りはできたっすけど……明日、うまくいくっすかね?」
ライハが不安そうに言う。
背中の羽が落ち着きなく、ぱたぱたと揺れていた。
「ぼく、がんばる! 悪いやつ、どーん!」
「サクラちゃん、えっと、その……今回、悪い人は特にいないのでは……?」
「そうだった……」
魔王を止めなければいけないが、しかし、敵というわけではない。
いうなれば被害者。
レインが契約をして、暴走を止めて、助けなければいけない。
また、魔王の影響を受けている魔族も同じだ。
自我を失い、戦うだけの駒になっている。
止めなければいけない。
強硬派の魔族は、魔王の影響を受けていなかったとしても戦争を望んだかもしれないが……
それはそれ、これはこれ。
やはり、助けなければいけないのだ。
でなければ、魔王の問題を解決した後、和平を結ぶなんてことは不可能。
「なるべく傷つけないようにせんとなー」
「捕獲用の罠、あるいは非殺傷武器が欲しい方は、わたくしにおっしゃってくださいな。わたくしの魔法で簡単に取り寄せられるので」
「僭越ながら、わたくしもそのような武器がありますので、必要とあれば」
「あら。コハネさんは、どのような武器を?」
「ゴム弾やテーザーガンなどがございます」
「ごむ? てーざー? にゃん?」
「ま、あたしはやめておくわ。二人の武器が信用できないってわけじゃないけど、やっぱり、拳で戦うのが一番慣れているもの」
「のう……きん」
「誰よ!? ニーナにこんな言葉を教えたのは!?」
タニアが怒り、仲間達が笑う。
明日は決戦。
人類と魔族の未来を賭けた戦いが繰り広げられる。
しかし、彼女達に悲壮感はない。
絶望もしていない。
勝利を確信しているようだった。
なぜか?
答えは簡単だ。
彼女達の主が、「やり遂げてみせる」と言ったからだ。
なら、自分達は主を信じるだけ。
どんなに難しいことだとしても、自分達は信じる。
契約とか、そういうことは関係なしに。
レイン・シュラウドという人間を、心の底から信頼して、好意を寄せているから……
だから信じるのだ。
それが彼女達の力の源。