作品タイトル不明
893話 変わらない絆
「ごめんね、試すようなことをして。でも、魔王が覚醒したからやっぱり……っていう可能性もあったから、レインくんがどう動くのか知りたかったんだ。だから、ちょっと意地悪だったけど、あんなことをしたんだ」
「はぁ……心臓に悪い」
つまり……
シフォンは、俺が和平を結ぶために西大陸に渡ったことを知っている。
それを応援したいものの……
しかし、魔王が覚醒してしまった。
大きく状況が変わったため、もしかしたら、俺が方針転換して魔王討伐のために動いているかもしれない。
それならそれをしっかりと確認しないといけない。
だから、あえて敵対するような言動をとったという。
「にゃー……シフォンは、私達の行動に賛成してくれるの?」
こちらの事情はだいたい説明しておいた。
「うん、賛成するよ」
「あっさりしているのだ……」
「だって、レインくんだからね。そうすると思っていたよ」
「「「あー……」」」
みんなが謎の納得をしていた。
「ただ、詳しい事情はわからないから、そこら辺を教えてもらえると助かるかな?」
「実は……」
現状をかいつまんで説明すると、シフォンはとても難しい顔に。
「そっか、モニカが……」
もしかしたら、モニカと交友があったのかもしれない。
どことなく悲しそうではあった。
「……ジルオールっていう四天王は、味方? 裏切ったりしない?」
「それは問題ないと思う」
そんなことをするなら、とっくに実行しているはずだ。
「レインくんがそう言うなら大丈夫か」
「信じてくれるのは嬉しいけど、いいのか?」
「いいよ。レインくんの方が見る目はあると思うし。私は、たまにやらかしちゃうからね。たはは」
カグネでのことを言っているのだろうか?
別に、俺も完璧というわけじゃない。
間違えてばかりだ。
そこまで信頼されると、ちょっと困るというか……
でも、その信頼を裏切るわけにはいかないか。
「シフォンの……人間側は、どういう状況になっているんだ」
「……あまりよくないかな」
王は、最初から戦争に踏み切る覚悟を決めていたらしい。
その覚悟に、俺の行動が影響することはない。
あくまでも、俺の行動は時間稼ぎ。
軍を整えて……
そして、編成が完了したため、出陣。
都市機能を維持する最低限の部隊を残して、ほぼ全ての軍を出動させたという。
これまでにないほどの大規模な部隊のため、西大陸に到着するのは、おおよそ3日後。
そこで陣地を構築して、進軍に踏み切るまで、さらに4日。
つまり、残された時間は1週間ということだ。
「うにゃー、レインとの約束を破るなんて……」
「おしおきやな、ふふふ」
みんな、目が据わっている。
ちょっと怖い。
「今後の流れによってはレインくんに協力してもいいんだけど……ただ、魔王が覚醒したよね?」
「わかるのか?」
「わかるよ。西大陸に来てから、一気に空気が変わったもん。なんていうか……すごく嫌な感じ。悪意が絡みついてくるみたい。たぶん、王様も気づいていると思うよ」
「そっか」
「止めるのはかなり難しいと思う。それに私も……私は、勇者だから。レインくんの邪魔はしたくないけど、でも、やるべきことはやらないといけないと思っている」
つまり、魔王討伐だ。
「ただ、それ以上にいい方法があるのなら、そうしたい。だから、レインくんがなにをしようとしているのか、教えて」
シフォンはまっすぐにこちらを見た。
その瞳には、俺に対する信頼。
それと、疑問も乗っていた。
シフォンの立場からしたら当然の反応だ。
彼女は『勇者』なのだから、それにふさわしい行動と覚悟、決意を見せなくてはいけない。
ならば俺は、俺の覚悟と決意を語ろう。
「俺は……」
シフォンを敵と捉えず。
共に事態を打開する仲間として、こちらの考えていること、全てを打ち明けた。
その結果は……
「……それ、いいね」
ニヤリと笑うのだった。