作品タイトル不明
882話 その後を考える
魔族達から魔力を貸してもらい……
そして、魔王を使役する。
うまくいけば、一時的かもしれないけど暴走を止めることができるはずだ。
ラインハルトの協力も得られるから、成功する確率は高いと思う。
「問題はその後なんだよな」
一人、夜風に当たる俺は、今後のことを考えていた。
魔王を使役したとして、戦争を止めたとして。
果たして、それで問題が解決するだろうか?
平和になるだろうか?
たぶん、無理だ。
魔王は憎しみという概念そのもの。
使役することができたとしても、それが永遠に続くわけじゃない。
俺は人間だから、いつか死ぬ。
そうしたら使役は無効化されて、魔王が解放されてしまうわけで……
封印と似たようなものなんだよな。
「方法は、封印よりも穏やかなものになっているけど……その間に、なんとかしないといけない。いけないけど……」
どうしたらいいんだろうな?
考えても考えても良いアイディアは出てこない。
「主さま」
振り返るとコハネの姿が。
いつもの穏やかな笑みを浮かべている。
「眠れないのですか?」
「そうだな。少し」
「あまり気負わないでくださいませ。主さまはお一人ではありません。わたくし達がおりますので」
「そっか……うん、ありがとう」
コハネがいる。
カナデやタニアやみんながいる。
そのことを忘れないようにしないと。
「……主さまが」
コハネが遠くを見つつ、静かに言う。
「主さまが今のままでいてくれたのならば、もしかしたら、魔王の問題は解決するかもしれません」
「コハネ……?」
もしかしたら、コハネはなにか知っているのだろうか?
疑問の視線を向けると、苦笑されてしまう。
「すみません、意味深なことを。わたくしも多くを知るわけではなくて……ただ」
「ただ?」
「主さまならば、どのような奇跡も成し遂げてしまうような気がして」
それは買いかぶり過ぎだと思う。
今まで奇跡を成し遂げたことなんてない。
なにか達成することができたとしても、それは、俺一人の力じゃない。
みんなの助けがあったからこそだ。
とはいえ……
今まで、ずっと世界を見てきたコハネの言うことだ。
ここまで言ってくれたのだ。
その期待に応えられるように、がんばらないと、って思う。
「もしも」
コハネの視線がこちらに戻る。
その表情も優しいものに戻っていた。
「どうしようもなく辛く、道に迷ってしまったのならば、その時はわたくしを頼りにしてください。なんとかしてみせましょう」
「なにか考えが……?」
「いいえ」
にっこりと笑顔を浮かべられてしまう。
「情けない話ですが、秘策のようなものはございません。戦闘における切り札ならあるのですが……アレが魔王の問題を解決するとは思えず」
「なら、今のは……」
「気合です」
「気合?」
思わずキョトンとしてしまう。
「それくらいの覚悟と気合を持つことが大事、と思いまして」
「……」
「主さま?」
「あははっ、そっか、そうだよな。うん。確かに大事だ」
色々なことがあって。
思えば、俺は考えすぎて、自分で自分を追い詰めていたのかもしれない。
でも、コハネの言葉で心が軽くなったような気がした。
絶対に成し遂げてみせる、じゃなくて。
みんなと一緒なら、なんとかなる。
それくらいの気持ちでいてもいい。
そんなことを教えられたような気分だ。
「ありがとう、コハネ」
「さて、なんのことでしょうか」
コハネは優しく微笑み……
その顔は、優しく月明かりに照らされていた。