作品タイトル不明
881話 二度目の共闘
「いったい、なにをやっているんだ、お前は……?」
あの後、モナがものすごく素直になって、ラインハルトに連絡をとってくれた。
少ししてラインハルトがやってきて、ミノムシ状態になっているモナを見て、呆れる。
なんていうか、こんな大変な時なのに緊迫感というものがない。
でも、それでいい。
悲壮感に暮れたり、絶望に包まれるよりも、楽しく笑っていた方が何倍もいい。
「うぅ、だって仕方ないんだよ。そりゃあ、ふらふらしてるコウモリみたいなヤツだけどね? それなりの矜持というか、ラインハルトに使役されている身、っていうのはちゃんと理解しているつもりさ。でも、あれは、もう……なにもかもどうでもよくなって、負けてしまうくらいに酷いものなんだ……」
「……お前達は、いったい、モナになにをしたんだ?」
「えっと……ちょっと料理を食べてもらっただけなんだけど」
「料理?」
ラインハルトは、本気で困惑した様子だった。
まあ、意味はわからないよな。
こんな手段が用いられることに、俺も意味がわからない。
なにはともあれ、こうしてラインハルトを引っ張り出すことができた。
どうにか協力を得たい。
「それで、俺に対する人質か?」
「まさか、そんなつもりはないよ」
「せっかくのチャンスなのに?」
「……たぶん、あんたとぶつかることは避けられないんだと思う。ただ、そんな卑怯な手を使うつもりはない。やるなら、正々堂々とまっすぐに。そうでないと、納得させられないだろうから」
「甘いヤツだ」
なんて言いつつも、ラインハルトは苦笑していた。
「で……」
ラインハルトは席についているメンバーを見る。
俺と仲間達。
ジルオールとカシオン。
そして……コハネ。
「珍しい顔と懐かしい顔がいるな」
「お久しぶりでございます、ラインハルト」
「そうだな、本当に久しぶりだ」
柔らかい笑み。
過去を懐かしんでいるようだった。
「このメンバーで話をするとなると……まあ、大体の予想はつくが、一応、聞こうか。こんなことをしてまで俺を呼び出した用件は?」
「魔王の対処に協力してほしい」
若干の沈黙。
驚いているように見えた。
「……討伐ではなくて、対処か? どうするつもりだ?」
「魔王を使役して、戦争を止める」
「な……」
さすがにその発想はなかった。
そんな感じで、ラインハルトは目を大きくして驚いた。
「正気……なのか? 相手は魔王だぞ?」
「でも、最強種だ。使役することが可能だ」
「無茶を考える……普通に考えて討伐した方が早く、簡単で、確実だと思わないか?」
「そうかもしれないけど、でも、それじゃあ根本的な解決にならない」
「そう言うということは、魔王のことを理解しているか」
「まあ、使役した後でどうするか、そこはまだ思いついていないんだけどさ……でも、時間稼ぎをすることができる。それ以上の悲劇と愚行を繰り返すことを避けられる」
「時間があれば、なにかしら方法を思いつくことができると?」
「できるさ」
言い切ってみせた。
人間は愚かかもしれないけど……
でも、賢い。
力を合わせることができる。
そう信じている。
今は思いつかなくても。
昔はできなかったことでも。
みんなでがんばれば、なんとかなるはずだ。
曖昧な希望ではあるけれど、今は、その希望が大事だと思う。
なにもできない、無意味だ、どうせ避けられない……なんて。
そんな暗いことを考えるよりも、もっと前向きに明るいことを考えていきたい。
それが俺の道だ。
みんなが頷いた。
それでいい、と肯定してくれているようだった。
その信頼があるからこそ、俺は前に進むことができる。
「……」
ラインハルトは沈黙を見せた。
口元に手をやり、考える仕草を取る。
協力してくれるだろうか?
協力してくれないだろうか?
伝えるべきことは伝えた。
後は、彼の答えを待つだけだ。
「……仮にうまくいき、魔王をどうにかすることができたとして」
ややあって、ラインハルトは口を開いた。
「俺が人間を滅ぼすことに変わりはない。止めるつもりはない。それについては、どう思う?」
「その時は、その時で。俺は、全力で止めてみせるよ」
「それに」と間を挟んで、さらに言葉を重ねる。
「ラインハルトも、魔王を放置するつもりはないだろう? ラインハルトは人間を滅ぼすつもりだけど、でも、それは人間だけ。最強種とか動物とか、そういうのは気にしないだろう?」
「それは……」
「なら、今は、一時的にでもいいから協力関係を結べないかな? 利用すると思ってくれていい。まあ、俺は利用するつもりはないけど」
「……やれやれ」
ラインハルトはため息をこぼした。
とても呆れている様子だけど……失敗したか?
「本当にお前は、子供の頃から変わっていないな。一見すると穏やかだけど、でも、実はとても頑固で、やりたいことはやり遂げる。わがままというか、なんというか……困ったヤツだ」
「えっと……ごめん?」
「今回だけだ」
そう言い、ラインハルトは席を立つ。
「ラインハルト?」
「俺だけでは意味がないだろう。オフィーリア達を呼んでくる。数日かかるだろうから、その間に細かい策や、その後のことを考えておけ」
「それじゃあ……」
「あくまでも一時的な関係だ。それを忘れるな」
ラインハルトはそう言って、外に出て……
「ふふ。これが、ツンデレというものなのですね」
コハネが小さく笑うのだった。