作品タイトル不明
874話 できることを探して
人間と魔族の戦争。
幾度となく繰り返されてきた悲劇が、再び起きようとしている。
絶対に起こしてはいけない。
どうにかして止めないといけない。
そう思い、ここまでやってきたものの……
全て無駄だったのだろうか?
「……主さま……」
コハネが心配そうに俺の手を取る。
「コハネ、俺は……」
彼女との約束を守ることができなかった。
結局、魔王が覚醒してしまった。
こうなったら、もう……
「終わりなのですか?」
「……え……」
「もう、主さまは終わりにしてしまうのですか?」
「……っ……」
コハネの問いかけが胸に刺さる。
諦めてしまう?
終わりにしてしまう?
ダメだ。
そんなこと、できるわけがない。
魔王が覚醒した。
否応なしに、他の魔族と戦うことになるかもしれない。
それだけじゃない。
魔王が覚醒した以上、人間も……王も動かざるをえない。
約束は無効。
軍を動かしてくるだろう。
でも。
「終わりになんてしない」
状況は絶望的だ。
だとしても、まだできることはあるはずだ。
それに、終わってもいない。
俺は、ここにいる。
まだ前に向かって歩いていくことができる。
なら、とことん突き進んでいこう。
「ありがとう、コハネ。おかげで覚悟が決まったよ」
「いいえ、わたくしはなにもしておりません。全て、主さまの心の強さの現れです」
「そんなことないさ。みんながいなければ、俺なんて、とっくに折れていたと思うから……だから、こうして支えてもらえるのは、本当に助かるんだ。嬉しいんだ。だから、ありがとう」
「……ぁ……」
ぽんぽん、とコハネの頭を撫でた。
って……しまった。
みんなにするように、ついつい、いつもの癖で。
みんなはともかく、コハネは嫌がるかもしれないのに……
「ふぁ……」
コハネはどこかうっとりとした様子で、頬を染める。
それから、俺の手に自分から頭を寄せてきた。
「これが、みなさまの言う主さまの『なでなで』なのですね。とても素晴らしいものです。この身が熱くなり、ドキドキしてしまいます」
「えっと……嫌じゃない?」
「もちろんです。この身は、髪の毛から爪先の爪に至るまで全て主さまのもの。どのようにしてくれても問題ありません」
「おおげさだなあ……とにかく、ありがとう」
「んっ」
もう一度、頭を撫でると、コハネは嬉しそうに微笑んだ。
それを見て、
「……なんか、一気に距離を縮めていない?」
「……真打ち登場、っていうところかしら?」
「……レインは、ああいうのが好きなのでしょうか?」
「……うーむ、我はちと苦手だぞ」
「……油断できないね」
なにやら、カナデ達がこそこそと密談。
「もや、もや……?」
「ニーナ、その感覚は大事にするんやでー」
ニーナの様子もちょっとおかしい。
なんだろう?
「よし!」
気持ちを切り替えていこう。
どうしてこんなことに、と、絶望して足を止めるのではなくて。
まだできることは? と、前を向いて希望を探していこう。
その先に待ち受けるものがなにか?
それはまだわからないけど……
きっと、明るいものを掴むことができる。
そう信じて、どこまでも突き進んでいこう。
……みんなと一緒に。