作品タイトル不明
863話 譲れない想い・その5
「甘いですね」
「なっ!?」
もう一人のモニカが背後から斬りかかってきた。
しかし、目の前に、すでにモニカがいる。
幻?
いや、この圧は本物だ。
慌てて目の前のモニカとの競り合いを止めて、横に跳んで後ろからの攻撃を回避した。
剣が風を切る音。
これが幻影とは思えない。
「これは、いったい……」
「ふふ。これも、私の能力ですよ」
「幻影を作り出す能力をさらに鍛えることで、実体を持たせることを可能にした」
「面白いでしょう?」
さらに、三人目のモニカが現れた。
笑っている。
笑っているのだけど……
でも、泣いているようにも見えた。
「この力があれば、私は復讐を果たすことができます。でも……こんな力がなければ、今も、笑って暮らしていたかもしれない……」
「……モニカ……」
「同情は不要ですよ?」
「……ああ、そうだな」
俺は、俺のためにモニカの想いを踏みにじると決めた。
なら、それを貫き通すだけだ。
「メガボルト・マルチショット!」
複数の雷撃で複数のモニカ達を撃つ。
魔法で迎撃されるか。
あるいは、跳んで回避されてしまう。
攻撃は失敗したものの、モニカ達は体勢を崩した。
追撃をすれば、さらなる効果を発揮できるかもしれないが……
それは止めておく。
「ですから……」
「甘いですよ?」
さらに、四人目。
五人目のモニカ現れた。
左右から挟み込むようにして剣を振る。
でも……
「それは読んでいた」
「「っ……!?」」
俺は慌てることなく、冷静に攻撃を回避した。
無理に反撃に移ることはしないで、後ろに跳んで、一度距離を取る。
実体のある幻影を作り出すことができる。
わざわざ三人目まで姿を見せたのは、これで終わり、と思わせるためだろう。
実際は、四人目も五人目も作り出すことができた。
「私の手の内が読まれていましたか……」
「わりと、あからさまだったからな」
「失態ですね。もっと成長しないと、リースさまに怒られてしまうかもしれません。なので……私のために、成長のために、ここで死んでくださいね?」
「断るよ」
複数のモニカが同時に攻撃を仕掛けてきた。
ここまで人数が多いと、普通はごちゃごちゃになってしまうのだけど……
モニカ達はスムーズに連携を成し遂げている。
まあ、当たり前か。
全部、自分なのだ。
意思疎通は完璧。
まったく問題のない連携を可能としているのだろう。
「本当に、あなたという人は厄介ですね」
「いつでも、どんな時でも私達の前に立ちはだかり、邪魔をする」
「これだけの能力を見せつければ、大抵の人は、絶望に包まれるというのに」
モニカ達は苛立ちを募らせてきているようだ。
戦いがうまくいかないことに、ではなくて……
俺の言動一つ一つが引っかかっているらしい。
「悪いな、邪魔をして。でも……」
ナタリーさんを始め、ホライズンの人達を思い返す。
王都の優しい人達のことも思い返す。
他、今までに出会った人達のことも思い返して……
そんな人達に、モニカは刃を向けようとしている。
モニカの想いは理解できるものの……
でも、優しい人達を傷つけることは納得できない。
俺が、俺の裁量で物事を決める。
高慢と言われるかもしれないが、でも、そうすると決めた。
「悪いが、モニカの想いは……ここで打ち砕かせてもらう!」