軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

848話 戦うだけではなくて

ちょうどいいタイミングというか。

最悪のタイミングというか。

曲がり角でリースとモニカとばったり遭遇した。

「同行者がいると聞いていましたが……なるほど。あなたなのですね」

「久しぶりだな」

「そう身構えないでください。今日は戦うのではなくて、会談をするのでしょう?」

「……ああ、それもそうだな。悪い」

ついつい身構えてしまったけど、リースが言うように、今日は戦いが目的じゃない。

俺のわがままで会談を実現してもらったのだ。

それを壊すようなことをしてはいけないと、頭を下げた。

「……」

「うん? なんで驚いているんだ?」

「いえ……あなたは、本当に素直な人間なんですね」

「そうかな?」

「自覚がないところも変わらず……ふふ。モニカが色々な意味で気にするわけですね」

「リースさま」

後ろに控えていたモニカが拗ねるように言う。

なんだろう?

普段の彼女は、刃のように鋭い印象があるのだけど……

今は、年相応に柔らかい雰囲気をまとっていた。

これがモニカの素なのだろうか?

「みなさん、こちらへ」

カシオンが慣れない口調で、みんなを会議室へ招いた。

横に長い大きなテーブルを挟んで、強硬派と穏健派が対面で座る。

俺とコハネはジルオールの隣に。

カシオンは席に座ることなく、ジルオールの後ろに控えていた。

リースとモニカは並んで座る。

お供の魔族数人は、カシオンと同じように、その後ろに立つ。

「さて……この度は、私達の呼びかけに応じていただき、ありがとうございます」

ジルオールがそんな言葉を口にして、会談が始まる。

「まずは、この場に来ていただいたこと。そちらに感謝を」

「いえ。こちらこそ、話し合いの場を設けていただいたこと、感謝しますよ?」

リースは不敵に笑う。

ただ、その言葉に嘘はないように思えた。

そう感じるほどに敵意や悪意がない。

「事前に資料が届いていると思いますが……今回の会談の目的は、穏健派と強硬派が手を取り合い、建設的な未来に向かい歩いていくこと。同じ魔族で争うのは終わりにしましょう、という話になります」

「ええ。そこについては異論はありません」

「理解いただき、感謝いたします。では、話を進めますが……」

そこからは、互いの派閥の情報についての交換だった。

現状、どれだけの力を持っているのか?

力だけではなくて、生活環境や物資などはどうなっているのか?

そういった現状のすり合わせを行う。

物資が豊富で人員も安定しているのは、穏健派だ。

内政に力を注いでいるらしく、資源も資金も豊富。

対する強硬派は、軍事に力を注いでいるらしい。

生活基盤はやや不安定ではあるものの、軍事力は増しているという。

アルテラとゼクシードを失い、その補填に奔走しているのだろう。

その原因を作った俺がここにいるわけだけど……

大して恨まれている気がしない。

過ぎたことは考えても仕方ない、ということなのだろうか?

「……このような現状でしたら、互いに協力して、手を取り合うことが可能だと思いませんか?」

「ええ、そうですわね。それが理想的でしょう。ただ……」

リースは、やや好戦的な目をジルオールに向ける。

「私達の根底にある『目的』は、どうしても合致しないのでは?」

「……」

「そこに致命的なズレがある以上、友になることはできない。一時的な協力などは可能でしょうけどね」

「……どうしても戦いを望むのですか?」

「当然でしょう」

リースは、呼吸をするように自然に答えた。

「今までに魔族が積み重ねてきた想いを晴らすために。魔王様が望むものを成し遂げるために。そのために、この手をどこまでも血に染める……それが、私達『魔族』がやるべきことなのでは? それこそが使命なのでは?」

「……」

同じ魔族としてリースの話にも一理あると考えているのだろう。

ジルオールは反論しない。

ただ、受け入れることもなくて、沈黙を保つ。

ややあって、ジルオールがこちらを見た。

「レインさんはどう思いますか?」

「……発言、いいんですか?」

「もちろん。そのために、ここまで付いてきたのでしょう?」

「ありがとうございます」

会談に同席したこと、無駄にならないようにがんばらないとな。

戦うのではなくて。

平和的に解決するために、なんとしてもリースとモニカを説得したい。

「……とあることで、魔族の事情を知った。過去、なにが起きたのか……その全てを知ることができた」

「あら」

それは意外なことだったらしく、リースが驚いた顔に。

すぐに驚きの表情を消して、笑みを向けてくる。

「なら、理解できるでしょう? 私達が戦う理由と、その意味を」

「ああ、理解できる」

「素直ですね。なら、このような会談に同席した意味は?」

「あなた達が持つ理由と意味を、消すために」

「へぇ……」

おもしろい、という感じでリースの目が細められた。

ただ、それは決して好意的なものではない。

むしろ敵意さえ感じる鋭く、棘のあるものだった。