軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

847話 力ではなくて心で

一週間が経った。

戦闘の準備が進められて。

その一方で、会談のセッティングも進んでいた。

ジルオールは俺との約束を守ってくれた。

まずは話し合いを。

そこで決裂したのなら、後は力と力がぶつかることになる。

うまくいく可能性は低いと思う。

それでも、やらないわけにはいかない。

最初から諦めるわけにはいかない。

無駄と切り捨てるのではなくて。

やれるだけのことをやって、後悔を残したくない。

後悔を全て、完全に消すなんてことは無理だけど……

それでも、できることを。

この手に掴めるものを掴んで、前に進んでいきたい。

――――――――――

「では、行きましょう」

戦闘の準備が終わり……

同時に、会談が開かれることになった。

穏健派の代表であるジルオールは、当然、参加する。

カシオンも護衛として付き添う。

その二人についていく形で、俺とコハネも参加することになった。

他のみんなは留守番だ。

まずは話をしたいという俺の話をちゃんと聞いてくれて。

それだけではなくて、実行に移してくれて。

本当にありがたい。

ある程度の打算もあるだろうけど……

それだけじゃなくて、ジルオールの誠意も感じられた。

彼女の期待を裏切らないようにしないとな。

「会談はどこで?」

「魔王城です」

「……」

まったく予想していなかった場所を告げられて、ついつい言葉を忘れてしまう。

「そんなところで……?」

「不安に思う気持ちはわかりますが、魔王城が一番都合がいいのですよ」

魔族にとって、魔王は神様と同じくらい神聖な存在だ。

彼女の命令は絶対。

逆らうことは許されない。

そんな魔王の膝下で暴れるようなことがあれば、最大級の不敬。

魔王が覚醒していなくても、それは関係ない。

魔王に逆らう、その尊厳を傷つけた……として、魔族の中では禁忌に当たるらしい。

リースは、わりと好き勝手やっているらしいが……

それでも魔族なので、魔王城で暴れることはないだろう、とのこと。

逆に、ジルオール達も戦闘を行うことはできない。

だからこそ、相手も安心して会談に乗ることができるはず。

「なるほど、そんな理由が」

「でも、そんな場所を私達に教えていいの? 大事なんだよね?」

「彼女がレインさんの仲間となっている以上、隠していても意味はないことかと」

ジルオールの視線がコハネに向いた。

「もしかして……コハネは、魔王城の場所を知っている?」

「はい。存じております」

「ちょっと。なんでそんな大事なことを黙っているのよ?」

「えっと……興味本位で近づかれては大変なことになってしまうかもしれませんので」

「「「うっ」」」

何人かが目を逸らす。

図星を突かれたのだろう。

誰が目を逸らしたか……

それは本人の名誉のために黙っておくことにしよう。

なにはともあれ。

俺達は魔王城へ移動することになった。

といっても、歩いて向かうわけじゃない。

精霊族と同じように、転移の魔法陣が敷かれていたため、一瞬で移動が完了する。

とはいえ、この転移はいつでも使用できるわけではないらしい。

強硬派と穏健派、その二つが承認することで、初めて起動できる仕掛けになっているとか。

納得だ。

日頃からほいほい利用できたら、魔王城を政争に巻き込んでしまうかもしれない。

それだけはやってはならないと、己を戒めているのだろう。

「ここが魔王城か……」

転移の魔法陣は、魔王城の手前……城下町に繋がっていた。

いや。

城下町跡、と言った方が正しい。

魔王城の管理や、睡眠状態にある魔王の世話をする人が最低限残っているだけで、他はいない。

それと、ここは町ではなくて要塞なのだとか。

魔王が覚醒した時、戦争の拠点として利用される。

故に、普段からここで日常を過ごす者はいないらしい。

「こう言ったらなんだけど、わりと普通なんだな」

「そうですね。私も、ここに来るのは初めてなのですが……普通に綺麗でございます」

コハネが言うように、魔王城はとても綺麗だった。

石を切り出して、積み重ねられて建てられたであろう城は、とても大きい。

しかし、見るものを威圧するような外観ではなくて、むしろ心を奪うような荘厳な造りとなっていた。

白の塗料も使われていることで、より明るい印象を受ける。

まさに、『白亜の宮殿』という感じだ。

「魔王さまが眠る場所ですからね。きちんとしたところにしなければいけません」

ジルオールがもっともなことを言う。

それもそうだ。

アルガス王が禍々しい城に住んでいたら、普通に嫌だ。

「こちらへ」

ジルオールの案内で魔王城の中へ進む。

俺は緊張していたが、コハネはいつも通りだ。

さすがだな。

その心の余裕、俺も見習いたい。

「ふふ。私も緊張しておりますよ?」

「え」

「ただ、それを顔に出していないだけです」

「というか、なんで俺の……」

「主様は、とてもわかりやすいので」

むう。

コハネにまで、みんなと同じようなことを言われてしまった。

そんなに俺はわかりやすいだろうか?

ちょっとした悩みになってきたぞ。

そんなことがありつつ、魔王城の中を進み……

「あら」

不意に、リースとモニカと出会う。