作品タイトル不明
832話 意外な接点
「にゃふー、コハネは可愛いね。カナデお姉さん、って呼んでもいいんだよ?」
「あんたの方が年下でしょ」
礼儀正しくて、清楚な感じがして、とても優しい。
そんなコハネはみんなのハートを撃ち抜いたらしく、笑顔があふれていた。
よかった。
みんななら大丈夫と思っていたけど、予想以上に早く仲良くなることができたみたいだ。
コハネも笑ってくれている。
彼女は使命のために全てを捧げてきた。
でも、今は使命だけじゃなくて、他にも色々なことがあると教えたい。
「話を戻すけど、コハネはどう思う?」
「はい。いくつか案はございますが……穏健派と接触して、そこから和平の道を探るのが正解ではないかと思います」
「でも、ソラ達の話を聞いてくれるでしょうか……?」
「うむ。穏健派は戦争をしたくはないみたいだが、かといって、人間に対する憎しみを捨てたわけではないからな」
難しい問題だ。
「確たることは言えないのですが、話をするくらいなら問題ないと思います」
「どうして?」
「穏健派のトップのジルオールとは、ちょっとした知人ですから」
「「「えええぇっ!?」」」
思わぬ事実が発覚して、俺を含めたみんなが驚きの声をあげる。
「おー」
「おぉ……?」
遅れて、リファとニーナがマイペースに驚く。
「どういうことですの? コハネさんは、ずっとこちらにいたのでは……?」
「申しわけありません、言葉足らずでした。24時間365日というわけではなくて、時折、外の様子を探っていました。使命を果たすためには、世界情勢を知ることも大事なので」
言われてみればその通りか。
完全に引きこもっていたら、なにもわからないまま。
ある程度は『知る』必要があるか。
「その際、ジルオールさんと知り合いました。話くらいは聞いてくれると思います」
「それは助かるよ」
「ただ、和平を結んでくれるかはわかりません」
「うん。それは俺達ががんばるところだと思う」
話ができるだけでも十分だ。
そこから先は、どうにかこうにか、俺達の手で切り開いていかないと。
「ひとまずの方針はこんなところかな?」
再び西大陸へ渡り、ジルオールと接触する。
コハネに仲介してもらい、和平についての話をする。
「ただ……」
モニカとリースの存在が気になる。
先の王都の事件はアリオスが関わっていたものの、彼は主犯ではない。
アリオスの話によると、全てを計画したのはモニカとリースだ。
魔族と和平を結ぶ。
そんな話をあの二人が黙って見過ごすだろうか?
こちらも警戒しないといけない。
「とりあえず……そうだな。また西大陸に渡る手段を考えようか」
「にゃー、前みたいにイルカに乗せてもらうのは?」
「できれば同じ手は使いたくないんだよな……」
魔族もバカじゃない。
俺達の移動手段を突き止めて対策をしていると思う。
「ぼく、泳いでいく!」
「えぇ!? さ、サクラちゃん、ワタシは、さすがにそれは……」
「大丈夫! フィーニア、紐に繋いでぼくが引っ張る!」
「えぇ!?」
「ひぁあああ!?」と悲鳴をあげつつ、海面上を引き回されるフィーニアが想像できた。
なんの罰だ……?
「ボクの眷属を使う?」
「んー……ちょっと数が足りないな。でもそこは、俺が使役して補えば……いや。結局、やっていることはイルカと同じか」
「里の門があればよかったのだがな」
「無茶を言わないでください。魔族のいる大陸に門を繋いだら、いざという時、大変なことになりますよ」
「そういう時は姉の料理で撃退……あ、いや。なんでもありません」
ソラに光のない瞳を向けられて、ルナが涙目で頭を下げていた。
「みなさんに翼があれば、空を飛んでいけばよいのですが」
「空か……魔族の防空網って、どれくらいか知っているか?」
「そうですわね……首都の近くはかなり厚いと聞いていますわ。同じく、国境である海も警戒が厚いと」
「それじゃあダメじゃない」
「イリスは抜けてるねー」
「タニアさんとカナデさんに言われたくありませんわ」
「「どういう意味!?」」
「ふふ、そういう意味ですわ♪」
話が先に進まない。
ただ、コハネは楽しそうに、にこにこと笑っていた。
「どうしたんだ?」
「あ、いえ。このように賑やかな時間は本当に久しぶりでして、つい、笑顔になってしまいました」
「そっか」
もっと楽しいことがあるって、それを教えてあげたい。
そのために、やるべきことをやりたいのだけど……さて、どうするか?
「レイン」
くいくいと、ニーナに服の端を引っ張られた。
「ん? ニーナは、もしかしてなにか案が?」
「ううん。でも……ママにお願い、してみるのは?」