作品タイトル不明
821話 全てを拒絶する結界
翌日。
無理のない範囲で、それでいて、できる限り速く山を登っていく。
ただ……
「……」
俺はちょっと上の空だった。
原因はライハだ。
昨日の夜、一緒に話をして、それから……うーん。
あの後、ライハは強引に見張りを交代して、強引に俺をテントに戻らせた。
結局、深い話はできないままだ。
今朝になってもそれは変わらない。
昨日のあれは……まあ、そういうことだよな?
それ以外に考えられない。
「まさか、ライハまで……」
「れ、レインしゃん、どうしたんですか……?」
「あ、いや。なんでもないよ」
不思議そうにするフィーニアには悪いけど、事情を説明するわけにはいかない。
あと、ライハの件について、本当に申しわけないのだけど今は待ってほしい。
考えをまとめる時間がほしいとか。
自分の気持ちと向き合う時間がほしいとか。
色々と理由はあるのだけど……
今は、十番目の最強種に会うこと。
そして、魔族と和平を結ぶこと。
その二つのことを最優先に考えていきたい。
とはいえ、それは逃げのようなもので……
「はぁ……俺、卑怯なヤツだなぁ……」
自己嫌悪だ。
「よし、よし」
ぽんぽんと、ニーナが優しくタッチしてきた。
よくわからないけど俺に元気を出してほしい、といった感じだ。
「ありがとう、ニーナ」
「ん♪」
お礼に頭を撫でると、三本の尻尾がぴょこぴょこと嬉しそうに揺れた。
「むー……なんだか、ニーナもいい感じ?」
「あたし達、遅れている……?」
先頭を行く二人がこちらを見つつ、そんなことを言う。
気持ちはわからないでもないけど、よそ見をしながら歩くのは危ないぞ。
「あいた!?」
突然、カナデが転んだ。
言わんこっちゃない。
「大丈夫か?」
「うん……ありがとう」
尻もちをつくカナデに手を貸した。
「前を見ないと危ないわよ」
「うー……タニアに言われたくないよぉ」
「ふむ? カナデはおかしいのではないか?」
「えぇ!? いきなりディスられた!?」
ルナの発言にショックを受けた様子で、カナデの尻尾がへにゃへにゃとなる。
「あ、すまん。そういうわけじゃないのだ。今の転び方がおかしいのではないか、と言いたかったのだ」
「そう言われてみるとそうですね」
「わたくしが見た感じ、カナデさんはなにかにぶつかり、それで倒れたように見えましたわ」
「ボクも同じ」
「にゃん?」
当の本人はよくわかっていない様子だ。
よそ見をしていたせいだろう。
でも、なにかにぶつかった……か。
周囲はそこそこに険しい山道で、たくさんの木々が生えている。
当然、道なんてものはない。
木々をかきわけて、岩をどかしつつ前に進んでいたのだけど……
「ぶつかるようなもの、ない!」
「そうっすね。それに、カナデの姉御なら岩も蹴散らしそうっす」
「なににぶつかったんやろ?」
ティナは不思議そうにしつつ、念動力でふわりと浮いた。
ふわふわと飛んで、ゆっくりと前に進み……
「あたっ」
こつん、という感じで空中で止まる。
「なんや、これ? 見えない壁みたいなもんがあるで」
ティナは両手を前に出して、ぐいぐいと押すような感じで進もうとした。
しかし、ある程度進んだところでゆっくりと押し返されてしまう。
「ぼくもやる!」
サクラが前に出た。
ぐいぐいと押し進み……
しかし、ほどなくして押し返されてしまう。
「あはははっ、楽しい!」
「サクラ、遊びじゃないのよ。まったく」
「しかし、気になる現象ですね。どう考えても自然のものではないでしょうし……」
「もしかして、これが……?」
ノキアさんの言っていた結界だろうか?
どんなものだろうと、俺も前に出た。
手を出して、触れるようにしてゆっくりと歩いて……
「あれ?」
しかし、俺はなににも遮られることなく、すんなりと前に進めてしまう。