軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

820話 ライハの心

自分はライハ。

魔族だ。

尻尾と翼と角。

それがデフォルトの姿。

覚醒した時は、それらがもうちょっと大きくなり、雷を操ることができる。

自分で言うのもなんだけど、けっこう強い方だと思う。

故郷にいた頃、乱暴な性格で周りに迷惑をかけていた同胞を成敗したことがある。

当時、自分は子供。

相手は大人。

すごい! なんて力だ! と自分は称賛された。

嬉しかった。

誰かの役に立てることが、こんなにも気持ちいいことだったなんて。

それから自分は、村のためにがんばった。

考えることは苦手だ。

だから、力を活かして、困った同胞を成敗したり。

それから魔物を倒したりして、村の安全に注力した。

そんなことをしていたら、ある日、魔王軍のために働くように……と、偉い偉い同胞から命令を受けた。

そんなことを言われても……というのが自分の本音だ。

確かに、魔族は人間に酷いことをされた。

その恨みを今も引き継いでいる人は多い。

でも、自分はそうは思っていない。

事件が起きたのはずっと昔のこと。

それを今も引きずり、恨みと憎しみしか考えないっていうのは、なんかこう……ちょっと違うと思うのだ。

そのために戦えと言われても、うーん、って迷う。

だから、自分は逃げることにした。

戦争に参加なんてしたくないし、人間だとしても無意味に殺したくない。

自分は逃げて、逃げて、逃げて……

でも、捕まってしまった。

そこからの記憶は曖昧だ。

なにか妙な実験台にされて、ずっと記憶にモヤがかかっている。

自分が自分じゃなくなるような感覚。

あぁ、ここで終わりか……

短い生だった。

そう思った時、人間に助けられた。

レイン・シュラウド。

ただの……というとちょっと、いや、かなり語弊があるけど、とにかくも人間だ。

それと、色々な最強種がいて、とても親身になってくれた。

自分は彼をアニキと慕い、そして契約を結んだ。

特になにか目的があるわけでもなくて、逃げてきた今までの生。

それは終わりにしよう。

これからは、アニキと仲間のためにがんばろう、そう思った。

それから一緒の時間を過ごして。

いくつかの事件に関わって。

そうしているうちに、自分は、自然とアニキを目で追いかけるようになっていた。

興味があったんだと思う。

人間なのに魔族である自分によくしてくれて。

そして、呆れてしまうくらいのお人好し。

かと思えば、ここぞという時はすごい力を見せて。

こうと決めたことは最後まで貫き通す。

なんてすごい人だろう。

こんな人間、見たことがない。

自分はますますアニキに興味を覚えた。

見るだけじゃなくて、時間を見つけては声をかけていた。

そして、色々な話をした。

この前、夜、見張りをするアニキと一緒に話をした。

アニキの戦う理由。

戦わない理由。

それはエゴと言われても仕方のないものだ。

自分が人間だとしたら、まずは人間のことを第一に考える。

魔族に事情があったとしても。

戦争の原因が昔の人間にあったとしても。

それでも、まずは今を乗り越えることを考えて、魔族があくまでも敵となり、和解する術が絶望的にないとしたら、戦う道を選ぶ。

だって、それが一番じゃないか。

絶対に失敗できない。

そんな状況で不確実な方法を頼りにするわけにはいかないのだから。

でも、アニキは不確実な方法を選んだ。

理想論を取ることにした。

その理由が笑えた。

世界のため、とか。

人間と魔族の平和のため、とか。

そんな大層な理由じゃなくて……自分のため。

自分が魔族だから、できるなら戦いたくない……て。

その言葉を聞いた時、自分は、なんかもうダメになった。

アニキは自分のことをここまで強く考えてくれている。

大事な仲間として、家族のようなものとして。

こんなこと初めてだ。

そして、こんな気持ちも初めてだ。

なんかもう、アニキの顔をまともに見ることができない。

チラチラと見ることしかできない。

目が合ったりしたら、心臓が爆発してしまいそうなほど高鳴る。

うん。

これはもう……そういうことだ。

だから自分は、その気持ちを伝えたくなって。

無性に伝えたくなって、そっと、アニキの頬にキスをするのだった。