作品タイトル不明
805話 第一王女との会談
「なにやら調べ物をしているみたいだが、すまないな」
「いえ、気にしないでください」
城の客間でココロさまと話をする。
大事な話があると呼ばれ、こうして顔を合わせることになったのだ。
十番目の最強種の手がかりを調べないといけないけど、でも、一度ココロさまと話をしたいと思っていたのでちょうどいい。
「まずは礼を言う。先の事件では力を貸してくれて、ありがとう。おかげで、どうにか乗り切ることができた」
「いえ、そんな。俺が原因の一端でもありましたから」
「元勇者のアリオス・オーランドか……ヤツめ、最後の最後まで迷惑をかけてくれる」
アリオスの件も報告済みだ。
話を聞いた王は、一言、「愚か者め……」とこぼしていた。
どことなく悔しそうな寂しそうな声で、色々と思うところがあったのかもしれない。
対するココロさまは、心底忌々しいという感じだ。
性格の差が現れている。
「今日は二つ、話をしておきたいことがある」
「はい、なんでしょう?」
「まずは、最強種についてだ」
その単語がココロさまの口から出てくるとは思わなくて、ついつい驚いてしまう。
「私も城の文献などを漁ってみてな。少しではあるが情報を手に入れた。役に立ててほしい」
「えっと……すごく助かりますけど、いいんですか?」
「父の意思に反していることか? なに、問題はない。父はああ言っていたが、協力してはいけないということはない。それに、私は第一王女ではあるが、その前に一人の人間だ。何者にも束縛されることはない」
とても性格が現れている台詞だと思った。
それと同時に、そう語るココロさまにユウキとサーリャさまの面影を見る。
性格はぜんぜん違うものの、やっぱり兄弟なんだな。
「十番目の最強種とやらだが、北大陸にいる可能性が高いようだ」
「北大陸に?」
「人間だけではなくて、他の最強種も避けて、遥か果てに暮らしているらしい。まあ、私が得た情報が正しいかわからないから、断定はできぬが」
「いえ、それでも十分です。助かります」
今はなにも情報がない。
そんな中、ある程度方向を絞って調査を進めることができるだけでも嬉しい。
「よかった。恩人の力になれたようだ」
「恩人だなんて、そんな……」
「いや、君は恩人だ。国と民の恩人だ。今回の事件だけではない。今まで起きた色々な事件……君がいなければ、どれだけの被害になっていたか。私は私で、今回謀反に加担した貴族達を抑える役をしていたため手が回らず……改めて礼を言いたい。ありがとう」
「あ、いや……」
再び頭を下げられてしまい、なんともむずがゆい気持ちに。
王族にこんなことをさせてしまうなんて、俺、不敬罪にならないかな……? 大丈夫だよな……?
「さて、一つ目の話は終わりだ。二つ目の話に移ってもいいか?」
「あ、はい。どうぞ」
「妹のサーリャのことだ。サーリャは君のことを好いているらしいな?」
「ごほっ!?」
飲んでいた紅茶を吹き出しそうになってしまう。
「ど、どこでその話を……?」
「本人から聞いた。久しぶりに会ったのだが、やけに明るいというか、以前と違うように見えてな。そこで問いただしてみたら、君の話を聞いた」
そこは黙っていてほしかったです、サーリャさま。
「えっと、俺はその……」
「いや、なに。責めるつもりはない。妹から好意を寄せているわけだからな。というか、私としては喜んでいる」
「え、そうなんですか?」
「ああ見えて、妹は人間不信なところがあってな。王女として完璧な振る舞いを身に着けてはいるものの、しかし、それは仮面だ。誰にも心を許していない。王族ではあるが、敵がいないというわけではない。むしろ、王族だからこそ敵がいる」
「それは……」
初めてサーリャさまに会った時のことを思い出した。
あの時、彼女は身内に命を狙われていた。
「そんな環境で育ってきたからな。表には出していないものの、すっかり人間不信に陥ってしまっていたのだ。しかし」
ココロさまは微笑み、こちらを見る。
「君に恋をしたというではないか。なんて素晴らしいことだろう」
「えっと……」
「妹は家族とその他少数にしか心を許していなかったが、それ以外の異性に心を許すのは初めてだ。恋も初めてだ。父がどう考えているかわからないが、私は、この恋を応援したいと思う」
「反対しないんですか? ほら、どこぞの馬の骨にやれん、みたいな」
「君は我が国の恩人だ。そんなものではない」
真顔でそう言われてしまい、少し照れてしまう。
「そういうわけで……どうだ? 君はサーリャのことをどう思っている?」
「え? いえ、それは……」
「私が言うのもなんだが、サーリャはとても可愛い。凛としているように見えて、プライベートではちょっとしたいたずら心を見せるところもある。それがまた可愛い。あと、意外と料理も得意なのだ。可愛い」
この人、可愛いって三回も言ったぞ。
もしかしてもしかしなくても、サーリャさまのことが大好きなのだろうか?
「どうだ、妹と付き合うつもりはないか?」
「えぇ!?」
「なに、王族だからといって気後れすることはない。君が王族になるのならば歓迎するし、逆にサーリャが王族を出ていくというのなら、それも許す。妹の幸せが第一だ」
「えっと……」
「ダメか? サーリャは好みではないか?」
「い、いえ。とても素敵な方だと思いますけど、でも、そういう話をきちんとしたことがないというか、まだまだお互いを知らないというか……」
「そうか。なら、知ればいいわけだな? よし、今度デートをしろ。問題ない。舞台は私がセッティングしよう」
「えぇ!?」
なんでこの人、こんなにも乗り気なのだろう?
こういう時は、妹に近づくな! とか反対するのがセオリーでは?
「そういうことは、本人の意思をしっかりと確認しないと……勝手に話を進めたら、サーリャさまに怒られますよ?」
「む……確かに」
「というか、どうしてそこまでしようとするんですか? その……言葉がすぎるかもしれませんが、ちょっとおせっかいがすぎるような」
「……そうだな、そうかもしれない」
ココロさまは落ち着きを取り戻して、そして、どこか遠い目をした。
「妹を幸せにすることができなかった。だから、妹には幸せになってほしいのだ」