軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

801話 果てに……

「ここは……?」

気がつくと、アリオスは見知らぬ場所にいた。

灰をぶちまけたかのように空は黒い。

地面はひび割れ、隙間から灼熱の溶岩が吹き出していた。

この世の終わりを体現したかのような場所だ。

「あちゃー、ついにアリオスもここに来たか」

「こんにちは……というのもおかしいですね」

「リーン? ミナ?」

リーンとミナが現れた。

おかしい。

二人は死んだと聞いている。

それなのにどうして……

「ああ、なるほど」

ふと、アリオスは本能的に理解した。

ここは死後の世界なのだろう。

そして、安息なんてない場所なのだろう。

今までしてきたことを考えれば当たり前の流れだ。

アリオスはついつい苦笑してしまう。

「まさか、こんなところで再会するとはね」

「アリオスもいつか来るだろうなー、とは思ってたけど、けっこう早かったのね」

「どうして、このようなことに……?」

「僕も色々と聞きたいけど……まあ、いいか。簡単に説明すると、レインと戦って負けたのさ」

「アリオスも?」

「も、っていうことは、リーンもかい?」

「まあね。あいつ、めっちゃ強くなってて、ばちぼこにやられたわ」

「僕もだよ」

二人で小さく笑う。

レインと戦い負けたからこそ、共感するものがあるのだろう。

「私はレインさんと戦っていませんが……」

「ミナも色々とあったみたいだね」

二人は憑き物が落ちたような顔をしていた。

最後の最後で満足できる生をまっとうすることができたのだろう。

それと、この死後の世界が関係していた。

ここは罪人に罰を与えると同時に、罪にまみれた魂を浄化する場所なのだ。

罰を与えて、魂をすり減らせて……

そうして汚れを削り取り、綺麗な魂に近づけていく。

「アッガスはいないのかい? まあ、僕なんかには顔を合わせたくないと思うけど」

「いるぞ」

「……アッガス……」

どこか疲れた様子のアッガスが姿を見せた。

「おつかれー。罰の時間、終わった?」

「ああ……今回も厳しかったな。もう勘弁してほしいところだ……」

「アッガスが音を上げるとはね……」

「ふふ、ここはめっちゃやばいよ? 罰として、ありとあらゆる苦痛を与えられて……でも、その後に癒やされるの。体だけじゃなくて心も」

「あのような罰を受けていたら、心なんて簡単に壊れてしまいますからね。でも、それでは罰の意味がなくなってしまう」

「だから治療することで一度リセットする。そうして、また罰を受ける……というわけだ。心が壊れて逃げることもできん」

「それは、また……」

これから待ち受けている苦痛を想像して、アリオスは苦い顔をした。

でも、それはすぐ苦笑に変わる。

仕方ない。

自分はそれだけのことをしてきた。

レインに勝つという目的のためだけに、仲間さえも切り捨ててきた。

「アリオス」

「……なんだい、アッガス?」

「俺は、俺を殺したお前を許さない」

「そうだね、それが普通だ」

「ここは、全ての者から許しを得なければ解放されることはない。つまり、俺がいる限りアリオスが解放されることはない」

「いいさ、それで」

「やけにあっさりしているな?」

「まあ、色々とあってね。それに……こういうことか」

とんでもない場所に来てしまったけれど、かつての仲間と話をしていると、不思議と心が安らいだ。

その感覚を得て、アリオスはレインの言っていたことを理解した。

信じること。

一人じゃないこと。

そして……仲間を持つこと。

その全てを理解したわけではないが、ある程度は共感することができた。

「なんだ……僕は、最初から道を踏み外していたのか。やれやれ、道理で勝てないわけだ」

「アリオス?」

「なんでもない、ただの独り言だよ」

ふと、大きな炎の塊が現れた。

それを見て、他の三人が顔をひきつらせる。

罰の時間がやってきたのだろう。

「今更だけど……アッガス、すまなかった」

「アリオス、お前……」

「リーンとミナもすまなかったね。色々と振り回してしまった」

「なんか、アリオスに謝られると調子狂うわね……」

「気にしないでください。アリオスだけのせいではないのですから。ここで一緒に罪を償いましょう」

「すまないけど、それはできないのさ」

「え?」

アリオスは苦笑した。

そんな彼の体は少しずつ薄くなっていく。

「アリオス……?」

「ここにいる僕は魂だけの存在。ということは、死後の世界だとしても存在することは許されない」

「どういうことですか? いったい、なにが……」

「ちょっと、説明しなさいよ! あんた……また勝手になにかするつもり!?」

「つもり、じゃなくて、した、後だからね。まあ……すまない」

アリオスの体が消えていく。

魂が消えていく。

それは、彼が交わした契約のせいだ。

絶対に違えることはできない約束。

それに従い、アリオスは魂を捧げることになる。

アッガス、リーン、ミナは、罪を償うことができれば転生が許される。

また新しい生を歩むことができる。

しかし、アリオスは違う。

転生することは許されず。

ここで完全に消滅する。

「アリオス! あんた……!」

「まってください、アリオス! 私はまだあなたに……」

「言いたいことだけ言って、逃げるつもりか!?」

「……本当に、僕はなにをしていたのやら」

次々に声をかけてくれる仲間達を見て、アリオスは吐息をこぼす。

仲間達のことをちゃんと見ていたら。

ちゃんと向き合っていたら。

レインが言っていたように、きっと違う結末が訪れていただろう。

最後の最後に気づくことができたのを幸いと言うべきか。

それとも、遅いと言うべきか。

「アッガス、リーン、ミナ」

アリオスは仲間達を見た。

そして、小さく笑う。

「僕はここで終わりだけど、君達の新しい生が幸せになることを祈っているよ……さようなら」

「「「アリオス!!!」」」

そして……

最後に小さな光が弾けて、アリオスの魂は消えた。

完全に消滅した。

アリオス・オーランド。

彼の人生はここで終わる。