軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

772話 地下室

やってしまったものは仕方ない。

そう開き直ることにして、俺達は屋敷に潜入した。

「偵察を頼むよ」

貴族の屋敷だろうと、大抵、ネズミはいる。

そのうちの数匹と仮契約をして、周囲に散らした。

先に人がいれば鳴いて教えてくれる。

おかげで誰にも見つかることなく探索を進めることができた。

「すんすん、すんすん」

時折、立ち止まり、サクラが鼻を鳴らす。

アリオスの匂いがする部屋を探してもらっているのだけど……

屋敷内は人が行き来してて、中には香水をつけた人もいて、そのせいで細かな特定な困難になっているようだ。

「うー……匂い、邪魔。よくわからない……」

サクラの耳がぺたんと垂れた。

「サクラさん、大体の場所はわかりませんの?」

「んー……下の方?」

「ということは、地下でしょうか?」

「貴族の屋敷に地下室があることは珍しくないけど……」

シフォンが難しい顔になる。

「下手をしたら逃げ道がなくなっちゃうね。どうする、レイン君?」

「そう……だな」

「私は、多少の無茶をしても行くべきだと思う。リスクはあるけど、きっとリターンもあるはず。早く事件を解決して、王都の人に笑顔を取り戻さないと」

人々の笑顔が第一。

そう考えるシフォンは、間違いなく勇者だろう。

「よし。じゃあ、リスク覚悟で地下を探してみよう」

「うん」

使役するネズミに手伝ってもらうことで、わりと簡単に地下に続く階段を見つけることができた。

階段を降ると、簡素だけど広い部屋に行き着いた。

部屋の中に、さらに別の部屋に続く扉がいくつか見える。

「倉庫……かな?」

「たぶん。保管されているものは……っ!?」

手近な箱を開けてみると剣が収められていた。

一本だけではなくて、十本近くある。

箱は一つだけじゃなくて、数十はある。

合わせて数百本の剣。

これだけの武器を保管しているなんて……あからさまに怪しい。

「レインさま、こちらにも武具が」

「ポーションや煙幕とかもあるね」

「おいしそうな匂い!」

武器だけじゃなくて、非常食も保管されているみたいだ。

「これは……どういうことだ?」

いざという時に備えて、武具やポーション、非常食を蓄える貴族は多い。

ただ、これだけの量は異常だ。

災害などに備えているというよりは、戦争に備えているかのような……

「……サクラ、アリオスの匂いはどうだ?」

「わふー……ごめんなさい。よくわからない。ごめんね、レイン?」

「気にしないでくれ。そんなに落ち込む必要はないよ」

落ち込むサクラを励ますように頭を撫でつつ、もう一度、倉庫を見回した。

ふと、鍵のついた部屋があるのを見つける。

頑丈な鋼鉄製の扉。

普通の鍵ではなくて、魔法も組み込まれているようだ。

「部屋というよりは、巨大な金庫みたいですわね」

「これは……厄介だな。下手に触ると、たぶん、警報が鳴るようになっている」

「レイン君、詳しいね?」

「アリオスのパーティーにいた頃、ダンジョン内の宝箱の開封は全部俺が担当していたから」

ダンジョンの宝箱はトラップも多いから、全て俺がやらされていた。

色々とひどい目にあったものの……

あの時の経験が今に活きていた。

「この先が気になるけど……」

どうにかして鍵を正規の手順で開けるか。

あるいは、警報を解除する方法を探らないといけない。

「ふふ、わたくしにお任せください」

イリスは小さく笑うと、そっと唱える。

「いでよ」

イリスの手の先が光り……

光が収まると鍵が現れていた。

「それ……どうしたんだ?」

「鍵を『召喚』したのですわ」

「そんなことできたのか?」

「直接、その鍵を見て情報を限定しないと難しいですが……条件が揃えばこの通り。ふふ、わたくしは最強の中の最強の天族。これくらいはなにも問題ありません」

「そういえば、たまに夜、俺が寝ている時に、鍵をかけているはずなのに部屋の中でイリスを見たような気がするんだけど」

「……気のせいですわ」

イリスが思い切り視線を逸らす。

よし。

後でしっかり問い詰めておこう。

「まあ……今は調査を優先するか」

イリスから鍵を受け取り、さっそく部屋の中に入る。

扉と同じように、床や壁は鋼鉄で作られていた。

棚が並び、金貨が収められた袋が並んでいる。

「金庫みたいだな」

「前勇者はいないみたいだけど……」

サクラの鼻と俺の勘を信じて、金庫内を調査する。

金貨、金貨、金貨。

絵画と彫刻。

宝石。

色々なものが見つかるものの、アリオスに繋がる手がかりはない。

冒険者狩りに関わる手がかりもない。

外れか?

そう諦めかけた時……

「レイン、レイン!」

サクラがパタパタと尻尾を振りつつ、こちらにかけてきた。

その手には書類が握られている。

「これ!」

「えっと……?」

「匂い、する!」

「この書類から?」

不思議に思いつつ書類を受け取り、中身をチェックする。

「これは……」