作品タイトル不明
760話 冒険者狩り
ここしばらく、不審な事件が起きていた。
いくつかの冒険者パーティーが姿を消すという事件だ。
最初は依頼に時間がかかっているのだと思った。
あるいは、別の街へ遠征に出ているのだと思った。
しかし、そんなパーティーが一つだけではなくて、複数現れると話は変わる。
失踪と判断されて、なにかトラブルが起きているのではないか? という結論になった。
そうして、王都にある冒険者ギルドは情報収集を始めるのだけど……
そこで、予想以上にたくさんの事件が起きていることが判明する。
そして……
「入念な調査を繰り返した結果、生存者を見つけることができたんだ。彼はCランクの冒険者で、特に背後関係はない。恨みを買うようなこともしていない。そんな彼が、依頼の途中、何者かに襲われたらしい」
「襲われた……?」
「フード付きのローブを着ていたみたいで、顔はわからない。ただ、相当な凄腕で、逃げるので精一杯だったらしい」
その襲撃者は、おそらくアサシンだろう。
暗殺を専門とする者で、戦闘能力はかなり高い。
「さらに調査を進めたら……あちらこちらで冒険者の遺体が見つかった」
「それは……」
「魔物に返り討ちにあったとかそういうわけじゃなくて、皆、武器や毒が致命傷となっていたんだ」
「同じヤツが?」
「ううん、それはないと思う。被害者はけっこうな数で、それを一人でやるなんてちょっと無茶な話だからね」
だとしたら、複数のアサシンが動いているということ。
話がどんどん厄介な方向に転がっていく。
というか……
犯人は本当にアサシンなのだろうか?
もっと別の存在……例えば、魔族という可能性は?
ここ最近、魔族は活発に動いている。
そのことを考えると絶対にないとは言い切れない。
もっとも、これはただの思いつきで根拠は欠片もない。
ユウキなら、このくらいの可能性は考えているだろうから、わざわざ口にする必要もないか。
「そういうわけで、今、王都にいる冒険者はみんなピリピリしていてね。冒険者は民の生活に欠かせない存在だ。どうにかしたいと思っているんだけど、でも、内容が内容だけに力になってくれる人が少なくて……」
「それで俺に?」
「うん。立て続けの依頼……それに、危険度はとても高い。そんなものにレインを巻き込むなんて、本当に申し訳ないと思っているんだけど……」
「ストップ」
謝罪を重ねようとするユウキを制した。
「そんな大変な事件が起きているのなら、見過ごすことはできないよ。Aランク冒険者として、その義務はちゃんと果たす。それに……俺達、友達だろう?」
「……レイン……」
「友達が困っているのなら力になる。当たり前のことじゃないか」
「……ありがとう」
笑っているような泣きそうな、ユウキはそんな複雑な表情を見せた。
厄介な事件が続いていることで、心労がかなり溜まっているのだろう。
そんな友達を助けたいと、力になりたいと、ただただ強く思う。
「ただ、その報酬ってわけじゃないけど、お願いがあるんだ」
「お願い?」
「……十番目の最強種についての情報を集めてほしい」
種族名もなにもかもわからない、十番目の最強種。
ラインハルトが言うには、彼女に会えば全てがわかるらしい。
ただ、その情報はさっぱりだ。
どこから手をつけていいのか、まったくわからない。
「そうだね……うん。それもとても大事なことだ。わかったよ。僕の方でできることをしておく」
「ありがとう、助かるよ」
「なに」
ユウキは笑う。
「僕達は友達だろう?」
――――――――――
「……そんなわけで、冒険者狩りについてはそこで知ったんだ」
ユウキとの話の内容を、ある程度、アクス達と共有した。
魔族の件については話していない。
内容が内容なので、申しわけないのだけど、アクス達にも話すことはできない。
ちなみに、魔族の件はユウキが王達にしっかりと伝えてくれるらしい。
その上で今後の方針を話し合うらしいけど……
今は冒険者狩りの問題も重なっているため、早い進展は難しいかもしれないと言っていた。
「ってことは、レイン達もあの依頼を請けたのか」
「一応、Aランクだからな」
「今回は拒否してもいいらしいぜ? 危険な依頼だから、無理はさせられない、ってな」
そういう配慮をする辺り、とてもユウキらしい。
「でも、アクスは請けたんだよな?」
「当たり前だ。俺ら冒険者にケンカ売っといて、タダで済ますなんてありえねえ。落とし前はきっちりつけてやらないとな」
「そっか」
「なんだよ。なんで、そこで笑うんだよ」
「いや……アクスらしいな、って」
久しぶりに会うのだけど、彼はなにも変わっていない。
まっすぐで、己の信念に従い戦い続けている。
そんなアクスは、少し眩しく見えた。
「俺らしい? どういうことだ?」
「いつも通りバカ、っていうことじゃないかしら」
「おう! セルがそう言うのなら、俺はバカでいいぜ!」
いいのか……?
「ま、それはともかく」
アクスはこちらを見て、にかっと笑う。
「せっかくだから、またパーティーを組まないか? 厄介な依頼だし、一緒にやった方がいいだろ」
「もちろん」
断る理由なんてない。
俺は笑顔でアクスと握手をするのだった。