作品タイトル不明
719話 忘れていた邂逅
「これは……?」
再び部屋全体が発光した。
また、なにか見せられるのか?
「……っ……」
目を開けていられないほどの強烈な光に包まれた。
軽い浮遊感。
ややあって光が収まり、目を開ける。
「にゃー……なんだろう、ここ?」
「森の中の広場……かしら?」
みんなが不思議そうにする中、俺だけは驚きに目を大きくしていた。
「これ……」
「レイン、心当たりがあるの?」
「あ、ああ……うん。ここも村の一部だよ。俺は、ここでよく、ビーストテイマーの訓練をしていたんだ」
村から離れているから、大きな動物を呼ぶことができる。
そして、離れすぎていないから、なにかあった時はすぐに大人が駆けつけることができる。
わりと便利な場所で、ここで俺はずっと、ビーストテイマーの訓練をしていた。
父さんや母さん。
近所の人達に教えてもらい……
あるいは、一人で励んだり。
「なんか、懐かしいな」
自然とそんな声がこぼれ出た。
ここで俺は色々なことを学んだ。
ずっと訓練をしてて、動物達と触れ合っていて……
子供時代の一部と言っても過言じゃない。
魔法で作られた映像とはいえ、もう一度見ることができたのは素直に嬉しい。
「……あ……」
軽い足音が近づいてきて……
ほどなくして、『俺』が姿を見せた。
ただし、子供の頃の俺だ。
六歳ぐらい……かな?
だいぶコンパクトな姿をしていて、俺にもこんな頃があったんだなあ、と無性に懐かしくなってしまう。
やっぱり、これは過去の映像か。
「きゃわわわ!?」
「あ、あの子レインよね!? レインの小さい頃なのよね!?」
なにやら、カナデとタニアがものすごく興奮していた。
「小さいレイン……かわ、いい」
「じゅるり」
「自分、なでなでしたいであります!」
ニーナとライハの反応はいいけど、リファは、なんでよだれを垂らしている?
もしかして、血を吸いたいのか?
「よし、今日もがんばるぞ!」
小さな俺は元気よく言って、口笛を吹いた。
その音に反応して、犬と猫が現れる。
犬と猫は、小さな俺を見ると嬉しそうに鳴いて……
次いで、互いを見て威嚇する。
「ああ!? こら、ケンカするな。ケンカはダメだ」
「ワンワンッ!」
「シャーッ!」
小さな俺は二匹のケンカを止めようとするけど、犬と猫はまるで聞いてくれない。
共に毛を逆立てて威嚇をして、一触即発の雰囲気だ。
「え、えっと……こ、こういう時は……!?」
小さな俺は、どうしていいかわからない様子で、ものすごく慌てていた。
こういう時は焦ったらいけない。
堂々とした態度を見せて、こちらが上だということを二匹に認識させて、それから、争うなと命令すればいい。
……でも、この頃の俺はまだまだ未熟で、なにもわからない。
二匹がケンカするのを見ていることしかできなくて……
ガサッ。
その時、茂みをかきわける音が響いた。
突然のことに、小さな俺はビクンと震えて驚く。
ケンカをしようとしていた犬と猫も動きを止めて、音がした方を見る。
「……子供か」
姿を見せたのは……ラインハルトだった。
「にゃ、にゃんですと……?」
「あれって……ラインハルトよね?」
「でも、なにも変わって、ないよ?」
「レインが子供だから、ラインハルトも若くなっているはず???」
みんな、混乱した様子で頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
カナデは、尻尾で『?』を作っていた。
そんな中、ライハが小首を傾げる。
「ねえねえ。ラインハルトって、誰であります?」
「あ……そっか」
そういえば、ライハにはラインハルトのことは説明していなかった。
ただ、今はこの光景から目を離したくない。
「ごめん。後で説明するから、それでいいか?」
「わかりました」
ライハが納得したところで、視線を元に戻す。
「……あなたは誰ですか?」
突然現れたラインハルトに、小さな俺は、一歩、後ろへ下がる。
知らない大人に警戒感を示しているようだ。
「ただの旅人だ。そう警戒しなくていい」
「本当ですか? それを証明することは?」
「難しいな」
「……」
小さな俺は警戒を解かない。
むしろ、より強く警戒したみたいだ。
そんな俺を見て、ラインハルトは苦笑する。
「やれやれ……妙に警戒感が強いのは、俺の血を引いているからか?」