軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

717話 過去へ

ダンジョンはそれほど広くない。

一層毎に広場があり、そこで試練のようなものを受ける。

無事、乗り越えることができたら次へ進むことができる、という仕組みだった。

試練の内容は、身体能力の測定。

判断力や危機回避能力の判定。

……などなど、ビーストテイマーとしての素質を図るようなものばかりだった。

いったい、このダンジョンはどういうものなんだろう?

悪意は感じられない。

逆に、どこか落ち着くような気がして……

本当に不思議なところだ。

「ここは……」

五層まで降りたところで、今までとは違う光景が広がった。

「にゃー……なんか、丸い部屋に出たね」

「それに、部屋全体が白いわ。なにかしら、これ?」

「ぼーっと、光って……いるね」

みんなで小首を傾げていると、ライハが、コンコンと床を叩いた。

「ふむ」

「どうしたんだ?」

「これ、魔道具であります」

「え?」

「この床……というか、部屋全体が魔道具になっています」

驚きの情報がライハからもたらされた。

この部屋全体が魔道具?

そんな巨大な魔道具は、見たことも聞いたこともない。

それはみんなも同じらしく、リファが懐疑的な視線をライハに向ける。

「それ、本当? ボク、こんなもの知らないよ」

「本当です。証明しろ、って言われても難しいのでありますが……自分、魔族だから、そういうものがわかるのです」

「なんで、わかるの?」

「それは、魔道具の元となるアイテムを作ったのは、魔族ですからね」

「「「えっ!?」」」

立て続けに驚きの情報が舞い込んできた。

魔道具は、魔法の力や魔力を封じ込めたアイテムのことだ。

色々な効果をもたらしてくれる。

その歴史は古く、ずっと昔の人間が開発した、って聞いているんだけど……

それは嘘の情報だった?

天族のように、誰かが塗り替えた?

「ライハ、その話は……」

さらに深く確認しようとしたところで、部屋の光が強くなる。

「な、なんだ!?」

「目にゃー!?」

太陽が間近に降りたかというほど、眩しい。

とてもじゃないけど目を開けていられない。

俺達は、巨大な白に飲み込まれて……

「……あれ?」

気がついた時は、周囲の光景が変わっていた。

さっきまでダンジョンの中にいたはずなのに、なぜか、村の中へ戻っていた。

「ふぁ……?」

「あたし達、ダンジョンにいたはずなのに……」

「転移? ボク達、地上に戻された?」

「……ううん、違うよ」

カナデが首を横に振る。

「風と土の匂いがしないから、ここは地上じゃないと思う」

「なら、これは……?」

「アニキ。自分達、特に移動したわけじゃないです。周囲の景色が変わったというか、えっと……たぶん、あのバカでかい魔道具が、自分達にこの光景を見せているんだと思うのであります」

「そんなものが……」

ライハの言葉を信じるのなら、常識を超える技術だ。

どうして、そんな魔道具があるのか?

誰がなんのために用意したのか?

謎は深まるばかりだ。

……ただ、一方で解明されていく謎もあった。

「あっ!?」

突然、カナデが大きな声をあげた。

そちらを見ると、村の空を暗雲が覆うのが見えた。

そこから現れるのは、空を覆い尽くすほどの大量の魔物と……

そして、魔族。

「これ、は……」

「レイン、大変だよ! 村が襲われているよ!」

「落ち着きなさい、カナデ。ライハの言う通りなら、これはただの映像。たぶん、実際に起きていることじゃないわ」

「タニアの言う通りっす。巨大な魔道具によって、自分達は、なにかの記録映像を見せられているのかと」

「なんの……記録?」

「嫌なものであることは間違いなさそう」

魔物が暴れ始めた。

村人達は抵抗するものの、圧倒的な数の差は覆せない。

次々と家が燃えていく。

「この光景は……」

そうだ。

見覚えがある。

これは……

「……村が襲われた日だ……」

「「「えっ」」」

「間違いない。この光景は、あの日の……村が襲われた時と同じなんだ」

胸を突かれるような苦しみ。

心を砕かれるような悲しみ。

それらが襲いかかってきて、呼吸が荒くなってしまう。

まっすぐ立っていることができず、ふらついて……

「アニキ!」

ライハに支えられた。

他のみんなも駆け寄ってくる。

「レイン、大丈夫? 顔色、すごく悪いよ……」

「あんな光景を見せられているんだもの、仕方ないわ」

「誰か知らないけど、悪趣味。ボク、怒る」

「外に……出る?」

「いや……大丈夫だ」

本当は大丈夫じゃない。

今すぐにでも、ここから逃げ出したい。

それほどまでに、村が滅びた日を見るのは辛くて苦しい。

でも、なにか意味があるような気がした。

とても大事な、なにかを伝えようとしているような、そんな気がした。

だから……がんばらないと。

「あの日のこと……詳細は、俺もわからないんだ。気がつけば、全部なくなっていたから……だから、それを知ることができるのなら……知りたい!」

「……レイン……」

カナデはとても心配そうな顔をした。

でも、それはすぐに消える。

なにかを決意したように、強く頷く。

「なら、私達はレインを支えるよ。ね、みんな?」

カナデはにっこりと笑い、次いで、みんなを見た。

「ええ、もちろんよ。レインは、あたしのご主人さまだもの」

「ぎゅって、すると……落ち着くと、思うの」

「レイン、なでなでする?」

「アニキのために、がんばるのであります!」

「……ありがとう、みんな」

ちょっとだけ泣きそうになってしまったのは、秘密だ。