作品タイトル不明
705話 水浴び、再び
「……暑い……」
リファがぐったりした様子で、そうつぶやいた。
見ると、他のみんなも汗を流している。
今日は日差しが強い。
湿気も多いから、馬車の中は蒸していた。
「にゃー……こうも暑いと、元気がなくなっちゃう」
「僕、ぐったり……にゃあ」
「サクラは、どちらかというとワンだよね!? 私の台詞とらないで! アイデンティティー!」
この暑さはみんなも堪えている様子で、いつもより元気がない。
……カナデはいつも通りかな?
急ぐ旅だけど、時間を気にして無理をして、体を壊したら元も子もない。
「涼しい場所を見つけたら、そこで休憩しようか」
「んー……この先に湖があるみたいやな」
念動力で地図をふわふわと浮かせているティナが、そう教えてくれた。
「みんなで水浴びでもせん?」
「おー、水浴び」
「いいですわね」
「た、楽しそうでしゅ!」
「水! 水!」
「自分、思い切り水浴びしたいであります!」
ティナ達は乗り気で……
「「「んー……?」」」
残りのメンバーは、ちょっと考えるような顔をして、それからこちらを見る。
「前みたいなことが……」
「さすがにないわ」
「でも、レインなのだ」
「問答無用の説得力ですね」
「まったまったまった」
その言い方だと、俺がしょっちゅう、そういう機会に遭遇しているみたいじゃないか。
いや、まあ。
いつだったか、みんなの水浴びを見てしまったことはあるけど……
でも、事故はその一回くらいで、他にはなかったはず。
「ごめんね、ちょっとした冗談だよ」
「みんなで水浴びしましょうか」
「「「おーっ!」」」
――――――――――
「にゃー、気持ちいい♪」
「生き返るわね」
一糸まとわぬ姿になったカナデとタニアは、さっそく湖に入った。
ひんやりとした感覚が足から伝わってきて、それが全身に広がる。
さきほどまでの不快感は消えて、代わりに爽快感を味わう。
「せっかくなので、翼も洗っておきたいですわね」
「あっ、て、手伝いましゅ!」
「僕も!」
イリスは翼を広げて、フィーニアとサクラがそれを綺麗に洗う。
仲の良いコンビだ。
「ニーナは、ウチが洗うな」
「あり、がとう」
「ボクもお願いしてもいい?」
「自分も!」
「はいはい、順番なー」
ティナは、甲斐甲斐しくみんなの世話を焼いていた。
ちなみに、人形の服は脱いでいる。
幽霊なので、暑さを感じないし、水浴びをする必要もない。
ただ、気分は別だ。
服を脱いで水に浸かると、心が洗われるような気がした。
「「……」」
思い思いに水浴びをする仲間に鋭い眼差しを向けるソラとルナ。
「わかっていたことですが、ニーナは仲間ですね」
「いや、しかし、覚醒した時は敵だぞ?」
「リファは……微妙に敵ですね。来年、どうなっていることか」
「フィーニアは仲間なのだ。しかし、サクラとライハは意外と……」
「ティナも、本体は絶対に大きいですし……むう。神はなぜ、このような不平等をソラ達に授けたのでしょうか? ずるいです」
「ずるいのだ」
「なにしてるん?」
「「胸の話!」」
ティナが呆れたように問いかえると、ソラとルナは、清々しいほどまっすぐに大きな声で応えた。
自分達はやましいことはしていない。
むしろ、とても真面目な話をしていた。
そう、態度が答えていた。
「そんなに気になるん?」
「なるのだ! ものすごくなるのだ!」
「持っている人にはわかりません」
「うーん……」
ティナが苦笑した。
同じ女性、気持ちはわからないでもない。
小さい頃、ティナも同じ想いを抱いたことがある。
なので、できる限り二人の力になりたいと思った。
「ちゃんと食べてちゃんと寝ると、成長にいいらしいで?」
「ちゃんと食べて……」
「ちゃんと寝る……」
ソラとルナはカナデとタニアを見て、なるほどと納得して……
しかし、リファを見て、あれ? と小首を傾げた。
ああ見えて、リファは健啖家だ。
それなのに微妙なライン。
果たして、今の話は真実なのか? 迷ってしまうところだった。
「え、えっと……牛乳を飲むのもええらしいな」
「毎日飲んでいます」
「浴びるほど飲んでいるのだ」
「あとは……好きな人に揉んでもらうとか?」
「好きな……」
「人……」
間を置いて、ソラとルナがぼんっと赤くなる。
「あわわわっ、れ、レインにそんなことを、ソラの胸を揉んでもらうなんて……」
「そ、そそそ、そのようなことはまだ早いのだ! ダメなのだ!」
「二人共、かわええなあ」
初心な反応を見せるソラとルナに、ティナはほっこりとした。
「あら、とても楽しそうで興味深い話をされていますね。わたくしも混ぜていただけませんか?」
イリスが参戦した。
「なるほど、イリスは……」
「我らの仲間になるのにふさわしいのだ!」
こうして、ぺったんこ同盟の仲間が一人増えたとかなんとか。