作品タイトル不明
630話 次は必ず
「させねえよ」
声はミナの影から聞こえてきた。
直後、影が盛り上がり、ヴェルグが姿を見せる。
「なっ」
エリスは驚いて……
しかし、すぐに我を取り戻して、そのまま剣を振り抜いた。
ターゲットはミナだけど、ヴェルグも敵だ。
ならば構うことはない。
このまま切り捨てる。
「ぐっ!?」
「ヴェルグさん!!!」
ミナをかばうようにしていたため、ヴェルグの背中が深く切り裂かされた。
苦痛の声と血が流れた。
それを見て、ミナが悲鳴に近い高い声をあげる。
「よくも……ホーリーアロー!」
「くっ」
光の矢を連射されて、エリスは後退する。
それでもなお、ミナは執拗にエリスを狙い……
「すまない、ヤツを取り逃がした!」
レインとサクラが割って入り、ミナの魔法からエリスを守った。
――――――――――
俺とサクラは、ヴェルグをじわじわと追いつめていたのだけど……
突然、ヴェルグは水が弾けるように消えてしまった。
慌てて周囲を確認すると、エリスとミナの近くに転移したヴェルグが。
慌てて援護に回る。
「すまない、ヤツを取り逃がした!」
「いえ、大丈夫です。ミナ・ルサージュをかばったらしく、手傷を負わせることができました」
見ると、確かにヴェルグは背中に傷を負っていた。
致命傷というわけではなさそうだが、それでも決して無視できない怪我だ。
もうまともに戦えないだろう。
これで三対一。
勝敗は決したようなものだ。
「ミナ・ルサージュ、これが最後の警告です。投降しなさい」
「そのようなこと、私は……!」
「投降しないのならば……斬る」
「くっ」
エリスは本気だ。
下手な真似をするのなら、迷うことなくミナの命を奪うだろう。
その本気を察した様子で、ミナは顔をひきつらせる。
「……」
「……」
睨み合い、緊迫した空気が流れ……
「だから、させねえよ」
それを打破するかのように、斬られ、まともに動けないはずのヴェルグが動いた。
影が爆発的に膨れ上がり、そのまま弾けた。
軽い衝撃は感じたものの、痛みはない。
攻撃力はないみたいだけど、ただ、視界が完全に塞がれていた。
いや、視界だけじゃない。
聴覚や嗅覚も失われている様子で、なにも感じ取ることができない。
まるで、ニーナやノキアさんが使う亜空間に閉じ込められたみたいだ。
攻撃か?
それとも……
下手に動くことはしないで、じっとする。
いつ攻撃が来てもいいように最大限に警戒をして……
ほどなくして暗闇が晴れた。
「レインさん、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。サクラも無事でよかった」
「オンッ!」
サクラとエリスは無事だった。
怪我一つしていない。
ただ……
「逃げられた……か」
ミナとヴェルグの姿はどこにも見つからない。
気配もない。
完全に見失ってしまったみたいだ。
「レインくーん!」
遠くにシフォン達が見えた。
今の騒ぎでこちらに気がついたらしい。
「はぁ、せっかくのチャンスを……頭が痛いな」