軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

627話 他に道はない

「みなさん、ここに隠し通路が!」

二人の姿が消えた後、すぐに周囲を探索すると、エリスが隠し通路を見つけた。

ナイスだ。

「ふむ……罠は仕掛けられていないと思う。純粋に、いざという時の避難経路として作られたものだろう」

「さきほどの土煙のおかげで、足跡が残っていますね。二人がここを使ったのは間違いないかと」

ステラとエリスは、よく現場を見ているな。

その観察力は、俺も真似したいところだ。

「すぐに追いかけよう!」

「うん、そうだね」

シフォンが頷いて、ステラとエリスが表情を引き締めた。

この先で、なにが待っているのか?

ミナを捕らえることができるのか?

いくらかの不安と疑問を抱きつつ、俺達は隠し通路へ入った。

――――――――――

「はっ……はっ……はっ……!」

ミナとヴェルグは、隠し通路を走り続けていた。

隠し通路は狭く、二人が並ぶのが精一杯だ。

おまけに迷路のように入り組んでいるため、ところどころで足を止めてしまう。

ミナは元より、ヴェルグも隠し通路の構造を把握しているわけではなかった。

「どう、して……!」

「あん?」

走りつつ、ミナはヴェルグに非難めいた視線を送る。

「どうして、彼らに攻撃をしたのですかっ」

「おいおい、待てよ。あれは俺の仕業じゃ……」

「私の目をごまかせるとでも?」

「……」

「あれは間違いなく、ヴェルグさんの攻撃でした」

ホライズンへ移動する際、ヴェルグの力を使った。

彼の力は、影を操るというものだ。

影から影へ渡る。

影の中に潜む。

そして……影から攻撃をする。

そんな能力を有していた。

その力を見ていたミナにはわかる。

さきほどの攻撃は野良の魔物の仕業ではなくて、レイン達の自作自演でもなくて、ヴェルグの犯行だ。

会談を壊すかのように、彼が仕掛けたものだ。

ミナはヴェルグを睨みつけて……

そして、ヴェルグはため息をこぼす。

「あー、悪かった。確かに、あれは俺の仕業だ。独断だ。やるにしても、一言、事前に相談しておくべきだったな」

「相談……ということは、最初から攻撃を考えていたのですか?」

「もちろん」

ヴェルグは悪びれることなく頷いてみせた。

そんな彼の態度に、ミナはくらりと、軽い目眩を覚えてしまう。

いったい、なにを考えているのか。

人間と魔族の和平のためには、勇者を味方にすることは絶対だ。

それなのに、わざわざケンカを売るような真似をするなんて……

「悪いな、我慢できなかった」

「我慢……?」

「さっきはあっさりと話したが……街に放って、勇者にやられた俺の部下は、大事な仲間だったんだよ。家族みたいな付き合いをしていたな。だから、あいつがやられたと知った時、正直、頭に血が上った。で……勇者に思い知らせてやろう、ってくだらないことを企んだのさ」

「それは……」

「悪かったよ、短慮だったと反省してる」

「……わかりました。そういうことなら仕方ありません」

「そう言ってもらえると助かる。俺が招いた事態でなんだが、今は逃げることを優先しようぜ」

「はい」

ヴェルグの説明に納得したらしく、ミナは気持ちを切り変えた様子で、前を向いて走り続ける。

そんな彼女を見て、ヴェルグは内心で笑う。

なんてちょろい女だ。

普通に考えて、適当な穴だらけの話、信じるだろうか?

信じるわけがない。

直情的に動く者を使者に選ぶわけがないし、勇者が憎いのならば、まずは真正面から糾弾するべきだ。

他にも、色々と穴のある話なのだけど……

ミナは簡単に信じてしまっていた。

そういう性格だから、という理由だけではない。

ミナがそれだけヴェルグのことを信頼しているから……だから、簡単に彼の話を信じてしまった。

疑うこともなく受け入れてしまた。

良い傾向だ。

ヴェルグは、己に与えられた本当の使命が達成できそうだと、ほくそ笑む。

彼に与えられた本当の使命は、ミナのサポートでも護衛でもない。

ミナを焚き付けて、そして、リーンのように堕として……

勇者にぶつけることにある。

勇者を倒したのなら、それはそれでよし。

失敗しても、極上の魂を得ることができる。

どちらに転んでも損のない策だ。

俺のために、せいぜいがんばってくれよ。

ヴェルグは内心で笑いつつ、ミナと一緒に隠し通路を駆けていった。