軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

616話 勇者パーティーの討伐

食事を終えた後、俺とカナデは、シフォンが泊まる宿へ移動した。

どうやら、他の人に聞かれたくない話らしい。

「これでよし」

シフォンは部屋に入ると、鍵をかけた。

話を他の人に聞かれることをずいぶんと警戒しているみたいだ。

いったい、どんな内容なのか?

自然と緊張してしまう。

ごくりとつばを飲み込んで……

「あっ」

キュルルル、とカナデのお腹が鳴った。

「……えっと」

「……なにか買ってこようか?」

「お願いだからそういう目はやめて!? あと、私は大丈夫だから!」

カナデは真っ赤になり、ぷるぷると震えつつ、そう言うのだった。

ただ、カナデのおかげで緊張が消えた。

恥ずかしそうにしているところ申しわけないが、感謝だ。

「じゃあ、話をしようか」

シフォンの様子も変わっていた。

さきほどは、なにか気負っていた感じがしたのだけど、今はそれがない。

これも、やはりカナデのおかげなのだろう。

特になにをするわけでもなく、そこにいるだけで場の空気を明るくする。

それもまた、カナデの才能なんだろうな。

「えっと……」

シフォンは迷うような顔に。

話をすると言ったものの、どこから切り出していいかわからないようだ。

ややあって、口を開く。

「遠回りしても仕方ないから、単刀直入に言うね。私達は今、とある任務を受けて動いているの」

「とある任務?」

「……元勇者パーティーの討伐だよ」

「なっ」

二重の意味で驚いてしまう。

まさか、アリオス達の対処をシフォンが担当することになるなんて。

旧勇者パーティーと新勇者パーティー。

その二つが激突したら、どうなるか?

結果は想像できない。

それともう一つ。

シフォンは、『討伐』という言葉を使った。

捕縛を目的としていない、ということになる。

「どうして、そんなことに?」

「最初は、私達には関係のない話だと思っていたんだけどね。私達の最終目的は、魔王を討伐すること。元勇者パーティーと関わる意味なんてない……はずだったんだけど、レインくんからの報告で、事態は変わってきたんだ」

「俺からの……あっ、そういうことか」

北大陸で起きた事件では、リーンとモニカが暗躍していた。

最終的に、その企みは阻止したものの……

リーンは魔族化して襲いかかってきた。

アリオス達が逃げ回り、小さな犯罪を犯すくらいならば、シフォンが出る必要はない。

騎士や冒険者に任せておけば、いつか捕まえることができるだろう。

しかし、リーンのように魔族化したら?

その時は、普通の騎士や冒険者では相手にならない。

Aランク以上の冒険者か、最強種。

あるいは……勇者。

「リーンさんが魔族になった、っていうのは、わりと衝撃的な報告だったんだ。もしも、残りのメンバーも魔族化したら? そして、各地で暴れたら?」

「……想像するだけで目眩がしそうだな」

「にゃー、とんでもない被害になるね」

「うん。だから、これ以上放っておけない、早く解決しないといけない、っていう結論になったの。それで……」

「シフォン達に、アリオス達の討伐命令が下された……というわけか?」

「レインくん、正解」

勇者に対抗できるのは勇者だけ。

間違ってはいないのだけど……

でも、こんな人間同士の争いに巻き込まれるなんて。

たぶん、シフォンは良い感情は抱いていないだろう。

でも、それを表に出すことはない。

これが勇者の使命と、しっかりと受け止めている様子だ。

強いな。

以前に比べて、純粋な力だけじゃなくて、心も大きく強くなっているみたいだ。

シフォンが、どこか輝いて見えるようだ。

「どうして、ホライズンに来たの?」

「この近くでミナさんの目撃情報があったの」

「ミナが……?」

「確定、っていうわけじゃないんだけどね。でも、他に手がかりはなくて……だから、とりあえずホライズンにやってきたの」

「なるほど」

だいたいの事情は理解した。

「俺に協力してほしい、っていうのは……」

「ごめんね。本当なら私達が解決するべきなんだけど、でも、レインくん達がいればすごく頼りになるから」

「ふへへー」

頼りになると言われて、カナデはうれしそうだった。

尻尾がぴょこぴょこと跳ねている。

「巻き込むべきじゃない、っていうのはわかっているの。ただ、今回の任務、絶対に失敗できない。もしも、ミナさんやアッガスさん……アリオスさんが魔族化したら? それが街中だとしたら?」

「……とんでもない被害になりそうだな」

「うん。だから、手段を選んでいられないの。最悪の事態になる前に、なんとしても止めないと」

そう言うシフォンから、強い決意を感じた。

必要とあれば、迷うことなくアリオス達を斬る。

その覚悟が伝わってくる。

「都合のいいことを言っている自覚はあるの。でも、私は……」

「わかった、いいよ」

「新しい勇者として、この事件を絶対に……って、あれ?」

シフォンがキョトンとした顔に。

「今、なんて?」

「いいよ、って」

「え、いいの?」

「なんでシフォンが驚くんだよ」

「にゃー、そこは喜ぶところじゃないかな?」

カナデと二人で笑う。

「で、でも、こんなこと引き受けてもらえるなんて思っていなかったから……」

「引き受けるよ。シフォンは友達なんだから、困っているのなら力になりたい」

「……レインくん……」

「それに……俺も無関係っていうわけじゃないからな」

相手がアリオス達というのなら、話は別だ。

ヤツの暴走は俺に原因があるし……

話を聞いて、放っておくことはできない。

「……過去に向き合わないとな」