軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

593話 心の洗濯

「うにゃーん♪」

カナデは大きくジャンプをして風呂に飛び込んだ。

バシャーン! と水しぶきがあがる。

「ちょっとカナデ、行儀悪いわよ」

「やっほー」

「ふははは!」

「あ、ルナ!? それとリファも真似をして……まったくもう」

リファとルナも同じように風呂に飛び込み、それを見たソラが呆れたようなため息をこぼした。

「ええか、ニーナ? ああやって飛び込むのはマナー違反や」

「うん」

「私達はゆっくりと入りましょうね」

ニーナの姉的なポジションに収まっているティナと、ノキアさんに連れられて、ニーナはゆっくりと湯船に浸かる。

残りのメンバーも湯に入る。

「んー……気持ちいいですわ」

「ろ、露天風呂なんて、とても贅沢です……わ、ワタシなんかが入っていいのでしょうか?」

「オフゥ……」

快適な露天風呂に癒やされているらしく、みんな笑みを浮かべている。

サクラもとろけるような顔をしていて、顔半分まで浸かっていた。

「かーっ、素晴らしいのじゃ。こうなると、酒が飲みたくなってくるのう」

「ふふ、お酒ならありますよ」

「タニアちゃーん、一緒に飲む?」

「先にいただいてるぜ」

「私がつぎましょう」

宴会を始めてしまう母親組。

とても楽しそうだった。

それもそのはず。

なにしろ、今日から露天風呂が解禁になったのだ。

猫霊族の里には露天風呂があったものの、掃除などの手入れが面倒なので放置されていた。

荒れ放題。

でも、そのままではもったいない。

そこで、コツコツとメンテナンスが行われて……

今日、解禁となった。

そして、日頃の稽古の疲れを癒やすために露天風呂を満喫することに。

みんなで楽しむことに。

そう……みんなで。

「はあ……」

「あれ? レイン、どうしたの。顔、赤いよ?」

「そりゃあ……」

「もしかして恥ずかしいの? 大丈夫。みんな水着を着ているんだから」

カナデが言うように、みんな、水着着用だ。

男の俺も一緒なのだから、当たり前なのだけど……

それでも落ち着かない。

水着を着ているのだから問題はないはずなのだけど、でも、風呂という環境が妙な感情を刺激しているというか……

海で遊ぶのとは違い、なぜか目のやり場に困ってしまう。

「はぁー……お風呂は心の洗濯ね」

「うむ、とても気持ちいいのだ」

「露天風呂だと開放感があって、いつもと違う感じがしますね」

俺は落ち着かないのだけど……

でも、みんなは喜んでいるみたいだから、いいのかな?

「クゥ!」

クウが元気よく湯船を泳いでいた。

キツネって、泳げたっけ……?

あと、風呂好きだったっけ……?

疑問に思うものの、まあいいか、と思考を放棄する。

落ち着かないものの、露天風呂は最高だ。

気持ちよくて心地よくて、自然と体から力が抜けていく。

ついでに、日頃の稽古の疲れも抜けていくようだ。

「ねえねえ、レインくん。お風呂、気持ちいいねー」

ミルアさんが笑顔で近づいてきた。

その後ろで尻尾がゆらゆらと動いていて……

どことなくサメを連想する。

「はい、そうですね」

「ところで……」

「はい?」

「久しぶりに会ったタニアちゃんの雰囲気がなにか違うんだけど、レインくんはどういうことか知らない? タニアちゃん、ちょくちょくレインくんのことを見ているんだけど」

「えっと……」

ものすごく心当たりはあるのだけど……

内容が内容だけに、勝手に口にしていいものか、ものすごく迷う。

「ちょっと母さん! 変なことレインに聞かないでよ!?」

「えー、変なことってなにー?」

「ぐっ、そ、それは……」

「私ね、タニアちゃんが本気なら反対はしないよ? そりゃあ、かわいいかわいいタニアちゃんがどこかに行っちゃうのは寂しいけど……でも、やっぱり幸せになってほしいからね」

「母さんっ!!」

「ひゃー♪」

ミルアさんは、全部お見通しらしい。

その上でタニアをからかっていたらしく、娘に怒られて逃げ出した。

騒がしいけど……

でも、こういう日常はとても楽しい。

みんなと出会った最初の頃を思い出して、自然と笑みが浮かぶ。

「レインさん、お風呂はどうですか?」

ふと、スズさんが隣に並ぶ。

「はい、満喫しています」

「なら、良かった。こうしてのんびりすることも大事ですよ」

「それは……」

「ここしばらくの間、なにがあったのか……カナデちゃんから大体のことは聞きました」

「……」

「レインさんが強くなりたいと願う理由もわかりました。でも、無理をしたらダメですよ」

ちょんと、鼻先を指で押された。

「張り詰めた糸はいずれ切れてしまう。だから、こうして適度に息を抜かないと」

「……スズさん……」

「お風呂は心の洗濯、って言いますからね。ぴったりだと思いませんか?」

俺のために、わざわざ露天風呂を用意してくれたのか。

その気遣いがとてもうれしい。

「そう……ですね」

すぐに気持ちを切り替えることは難しい。

今まであったこと、全てを割り切ることは、たぶんできないだろう。

それでも。

今は、こうしてゆっくりしたいと思う。

スズさんの好意を無駄にしないで……

みんなと一緒に過ごす時間を大事にしたいと思う。

「スズさん」

「はい」

「……ありがとうございます」

「どういたしまして♪」