軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

573話 ランチタイム

太陽が頭上に登り、昼ごはんの時間に。

ちなみに、ごはんは一足先にティナが家に戻り、作っておいてくれた。

ソラも手伝おうとしたのだけど、みんなが全力で止めた。

体育の時間のおまけだ。

「さあさあ、うちのスペシャルランチセットや。みんな、召し上がれ」

焼きたてのパンはふかふかで、綿のように柔らかく、噛むとほのかな甘味が口の中に広がる。

メインのステーキは、下味をしっかりとつけた後、香草と一緒に焼かれていた。

肉の旨味がこれ以上ないくらいに引き出されていて、手が止まらない。

そして、付け合わせのマッシュポテトと野菜の炒めもの。

どちらも店を出しても通用するくらいにおいしい。

トドメに、甘いりんごを使ったアップルパイとりんごジュース。

どちらもりんごが使われているのだけど、味はまったくの別物で、不思議とくどくない。

むしろ、もっと食べたいとばかりに食欲が刺激されるので、たまらない味になっていた。

「「はぐはぐはぐっ!!!」」

カナデとタニアは猛然とごはんを食べていた。

一欠片も残さないという勢いで、隣に座るリファが呆れるほどだ。

「むう……せっかくなので、ソラも手伝いたかったのですが」

ソラは、ちょっと不満そうにしつつごはんを食べていて……

「……ルナさん。ソラさんは、ご自分の料理の腕を自覚していらっしゃらないのですか?」

「……うむ。むしろ、それなりに得意だと自負しているぞ」

「……恐ろしいですわね。わたくし、他の最強種を心底恐ろしいと思いましたわ」

「……我は得意だからな?」

ちょっと離れたところで、ルナとイリスが、ソラに畏怖の視線を注いでいた。

「おい、しい」

「ニーナ、ソースがついていますよ。じっとしててくださいね」

「ん」

ニーナとノキアさんは、ほっこりとした親子のやりとりを見せてくれる。

「オフゥ……」

「フィーニアよ、このわんこはなんと言っておるのじゃ?」

「お、お肉が足りない……です」

「なるほどのう、食いしん坊なのじゃな。って……なぜ妾のステーキを見る? やらんぞ、やらんからな?」

「オンッ!」

「さ、サクラちゃん!?」

アルさんのステーキを狙うサクラ。

ステーキが乗った皿を手に、屋内を逃げ回るアルさん。

そして、そんな二人をオロオロと見守るフィーニア。

うん。

なかなかにカオスだ。

「レインの旦那、おかわりいる?」

「もらおうかな」

「ほいほい」

ティナがおかわりのりんごジュースを注いでくれる。

コップがふわふわと浮いて、りんごジュースがなみなみと入ったピッチャーが傾いていく。

「このりんごジュース、ティナの手作りなんだよな?」

「せやでー。搾りたて、新鮮さ百パーセント。ただ、ちと甘味が足らんから、砂糖とかで調整しとるけどなー」

「それでこの味か。ホント、ティナは料理が上手だよな」

「にへへ、ありがとなー。そう言ってくれると、むっちゃうれしいわ」

ティナがにっこりと笑い、頬杖をついてこちらをじっと見つめる。

その笑顔は温かく、なんだか幸せな気持ちになる。

「なあなあ、レインの旦那。ところで、なんで勉強とか言い出したん?」

「きっかけはアルさんなんだけど……」

東大陸へ行って。

北大陸へ行って。

西大陸へ行って。

ここのところ、かなり慌ただしかった。

もちろん、合間合間に休憩はとっているのだけど……

肉体的な疲労はとれても、精神的な疲労は抜けていないかもしれない。

「だから、こういうイベントも必要なのかな……って」

「勉強したら、なおさら疲れへん?」

「あはは……でも、みんなで一緒にわいわいとやるのって、楽しいだろ?」

「あー、せやね」

「だから、そういう機会をもっともっと、たくさん作っておきたかったんだ。いつか、こんなささやかな幸せな時間も作れなくなるかもしれないから」

魔族の活動が少しずつ本格的になり。

また、裏でリースとモニカが暗躍する。

アリオスとミナ、アッガスの行方もわかっていない。

これから先……

いつになるかわからないけど、世界を揺るがすような巨大な嵐がやってくるような気がした。

だから、そうなる前にできるだけたくさんの思い出を作っておきたい。

後悔のないように、色々なことをしておきたい。

そう思ったんだ。

そう語ると、ティナは、ふにゃりと頬を緩める。

「レインの旦那らしいなー」

「そうか?」

「そうやで。うちは、そういうところが……」

じっと、こちらを見つめるティナ。

その瞳は、しっとりと濡れているようで……

どこか甘い熱を持っているようで……

魅了されてしまったかのように、なぜか目が離せない。

いや。

俺がティナを見ていたいのかもしれない。

「そういうところが……?」

「……レインの旦那のええところやと思うで」

にっこりと笑い、ティナはそう言った。

「そっか」

ちょっとドキドキした。

ティナも俺のことを……なんて。

そんな恥ずかしい勘違い。

……勘違いだよな?

「さてと」

ぐぐっと、ティナが伸びをした。

幽霊だけど、精神的に体が凝るのかもしれない。

「そろそろ後片付けをせんとなー」

「俺も手伝うよ」

「ありがとなー。あと……」

ティナが、死んだ魚のような目をして横を見る。

「……ソラがデザートを作ろうとしとるから、止めてくれると助かるでー」

「ソラ、ストップ!!!」