作品タイトル不明
569話 ノキアの授業
軽いトラブルはあったものの……
みんなの学力アップのために授業が始まる。
「では、授業を始めますね」
壇上に立つノキアさんは、けっこう様になっていた。
もしかしたら、昔は誰かにものを教えていたのかな?
「私の担当は芸術ということなので、絵を描いてみましょう」
サポート役の俺は、みんなの机にペンと紙を配る。
黒ペンだけじゃなくて、赤や青や緑など、様々な種類が揃っている。
貴族の子供が使うようなペンセットなので、それなりに値段はするのだけど……
気がつけばそれなりの貯蓄ができていたため、たまにはパーッと使うことにした。
「しつもーん。絵って、なにを描けばいいの?」
「なんでもいいですよ。カナデさん達の好きなものを描いてください」
「にゃるほど」
「それを見て、私が添削するので。では、どうぞ」
ノキアさんの合図で、みんなは一斉にペンを走らせた。
――――――――――
三十分後。
みんなは絵を描き終えたらしく、それぞれペンを置いた。
「はい。では、そうですね……カナデさんから見せてくれますか?」
「はーい。私が描いたものは、コレだよ!」
そう言って、カナデが自信たっぷりに見せたのは……
「魚?」
「うん。私の大好きなもの♪」
とてもうれしそうに、カナデの尻尾がゆらゆらと揺れていた。
「おおう、これは……」
「なかなかリアルですね……」
魚の絵を見たルナとソラは、感心したように言う。
実際、カナデの絵はなかなかのものだった。
その場の光景をそっくりそのまま切り取ったかのようで、とても精密に魚が描かれている。
躍動感もあり、今にも泳ぎだしそうだ。
「これは意外ね……食べることしか能のないカナデに、こんな才能があったなんて」
「びっくりですわ」
「びっくり、ねこ」
「ニーナにまで言われた!?」
ガーンと、ショックを受けたような顔に。
ただ、なんだかんだでその後は素直に絵を褒められて、カナデはご機嫌だった。
「はい、カナデさんはとても上手ですね。これだけ上手に描くことができるということは、よほど魚のことが好きなんですね。そういう情熱、強い思いはとても大事です。芸術に限らず、色々な場面で役に立つことでしょう。みなさん、しっかりと覚えていてくださいね」
「「「はーい」」」
ノキアさん、本当に教師役が板についている。
みんなもすっかり生徒になりきって、元気よく返事をしていた。
「では……次は、フィーニアさんとサクラさんの絵を見せてください」
「ひゃ、ひゃい!」
「オンッ!」
フィーニアとサクラがそれぞれの絵を……いや、待て?
サクラはどうやって絵を描いたんだ?
「あら、これは……」
フィーニアは花の絵を。
サクラは、フィーニアを描いていた。
「おー、綺麗だね」
「うむ。ちと荒いが、しかし、これはこれで風情があっていいのう」
「あ、ありがとうごじゃいまひゅ……」
みんなに褒められて、フィーニアは照れて真っ赤になってしまう。
「サクラって、どうやって描いたの……?」
「口でペンを咥えていたみたいだけど……それで、ここまで描けるなんてすごいわね」
サクラが描いたフィーニアは、素直な感想を言うのならば、ちょっと雑だ。
線がズレているし、色々と荒い。
でも、見ていると微笑ましい気持ちになることができるというか……
小さな子供が描いたような絵で、温かい感じがするんだよな。
「うん。この絵、俺はとてもいいと思うぞ。がんばったな、サクラ」
「オンッ! オンオン!! クゥーン」
「うわわっ」
とてもうれしそうにするサクラに飛びつかれて、尻もちをついてしまう。
そのまま顔を舐められて……うん、ベタベタだ。
喜んでくれているのはわかるのだけど、手加減してほしい。
「では、次はタニアさん」
「ふふん、真打ち登場ね!」
タニアは自信たっぷりに、自分が描いた絵を披露した。
それを見たカナデが、眉をひそめる。
「……山?」
「いいえ、これは川ではありませんか?」
「わたくしには、丘に見えるのですが……」
「あたしよ、あたし! 本来のあたしの姿! かっこいいでしょ!?」
どうやら、タニアは竜形態の自分を描いたらしい。
でも、なんというか……
とてもそうは見えないというか、絵柄が独特というか……
「タニアは絵が下手なんだね。ボク、理解した」
「なぁっ!?」
リファのストレートな感想に、タニアがショックを受けたような顔に。
そのまま、がくりと膝をついてうなだれてしまう。
「自信作だったのに……」
「がんばろ?」
ぽんぽんと肩を叩いて、カナデが慰めていた。
「タニアさんの想いは伝わってくる、とても良い絵だと思います。ただ、少し乱暴というか、想いが乗りすぎているみたいですね。絵は、誰かに見てもらうことが前提のものです。見られる、ということを意識して描くといいかもしれませんね」
ノキアさんのアドバイスは的確だ。
「では、次にイリスさん」
「ふふ……わたくしの描いた、好きなもの、の絵はコレですわ」
そう言って、イリスが見せた絵は……
「これは……俺か?」
俺が描かれていた。
ただ、やたらと美化されているような?
あと、謎の光や花が添えられている。
「ええ、レインさまですわ」
「なんでまた、俺を?」
「あら、当然ではありませんか」
イリスは、ドキっとするような艷やかな笑みを浮かべる。
「レインさまが、わたくしの好きなもの、だからですわ」
「「「ぐぐぐ」」」
やられた! というような感じで、みんながうめくのだった。