作品タイトル不明
561話 秘密会議
目を覚ましてから、さらに三日が経った。
その間、みんなにもみくちゃにされて……
ついでに、カナデやタニアの時と同じように盛大に説教をされて……
反省。
アルテラを倒すためとはいえ、さすがに無茶をしすぎた。
もうあんな無茶はしない、ように……
……確約はできないな。
まあ、これは俺の秘密ということで。
とにかくも三日が経ち、ようやく俺は自由に動けるほどに回復した。
体力も魔法力も限界を超えて使い切っていたらしく、それで三日寝込んで、そこから完全回復までさらに三日かかったらしい。
動けるようになってまず最初にしたことは……
風呂だ。
西大陸へ潜入して……
アルテラと戦い……
それから三日寝込み、三日静養して……
かなり汚れてしまっていた。
体は拭いてもらっていたものの、臭うかもしれない。
「レイン、臭うにゃ……」
とか言われたら、俺は相当なショックを受ける自信がある。
なので、風呂に入りさっぱりした。
それからごはんを食べて空腹を満たし、新品の服に着替えて身も心もスッキリと。
そうして身なりを整えたところで、ユウキの部屋を尋ねた。
正確に言うと、呼ばれていた。
「どうぞ」
ノックをすると、中からユウキの声が聞こえてきた。
扉を開けて部屋に入り、
「えっ」
「久しぶりだな、レイン・シュラウドよ」
ユウキだけではなくて、王もいた。
思わぬ展開に驚き、目を丸くしてしまうものの……
王の前で、いつまでも棒立ちになっているわけにはいかない。
慌てて膝をついて、頭を下げる。
「よい、頭を上げよ」
「しかし……」
「ここは公の場ではない。それに、英雄にそのようなことをさせたとなると、民から大きな反感を買ってしまう」
「英雄?」
「そこでキョトンとするのが、レインらしいよね」
ユウキが小さく笑う。
「囚われている民を助け出して、さらに四天王の一角を撃破した。これを英雄と言わずなんと言う?」
「えっと……」
囚われていた人はともかく、アルテラについては完全に成り行きだ。
それに、俺一人で成し遂げたことじゃない。
みんなの力とユウキの力と……そして、グレイの力だ。
「まあ……英雄については、今はいいか」
俺の考えていることを察してくれたらしく、王は話を別のものへシフトさせる。
「今回の件について、すでにユウキから報告を受けている……ありがとう」
「え?」
王は立ち上がり、そして頭を下げた。
「そんな、頭を上げてください!」
「いや、それはできぬ。ユウキの力になるだけではなく、たくさんの民の命を救ってくれた。そして、四天王を倒すことで民の無念を晴らしてくれた。これだけのことをしてくれたのだ。まずは、頭を下げて礼を言うのが基本であろう」
「むう……」
意外というべきか、なんというべきか。
ユウキと違い、王はけっこう頑固だった。
似ているところもあれば似ていないところもある。
不思議な親子だ。
「具体的な報酬については、後日、検討したい」
そこは一般的な額であればいいのだけど……
色々と追加されてしまいそうで、変な意味で怖い。
「今日は、この三人だけで話しておきたいことがあって、それでレインに来てもらったんだ。まだ回復したばかりなのに、ごめんね」
「いや、気にすることはないさ。もう十分に動けるから、問題はないよ」
「そっか、ありがとう」
ユウキと軽いやりとりを交わしていると、そんな俺達を見て、王が微笑ましそうな顔をしていた。
王というよりは、親の顔をしている。
ユウキに友達ができたことを喜んでいるのだろうか?
ただ、その顔はすぐに真面目なものに。
「さて……本題に入ろう」
その一言で、ビシリと場の空気が引き締まった。
「今回の件について、ユウキから詳細な報告は受けているが……その上で、改めて確認したい。そなたは、魔族についてどんな印象を抱いた?」
「それは……」
「そなたが思う、率直な意見を聞かせてほしい」
「そう、ですね……」
西大陸での出来事を思い返しつつ、慎重に言葉を選んでいく。
「……俺達人間とさほど変わりないように見えました」
「ふむ」
「魔族は破壊と混沌を好み、全ての生き物の天敵……そう思っていたのですが、実際に接してみるとそんなことはなくて」
「普通に対話をすることができた、と?」
「はい」
うれしいことがあれば笑い。
悲しいことがあれば涙を流す。
俺達人間となんら変わりはない。
「アルテラはまったく話が通じないし、外道といえるような行為を繰り返していたけれど……でも、人間にもそういう者はいる。そのことを考えると、やはり、あまり違いはないように感じました」
「そうか……ユウキと同じ意見になるか」
「ユウキも?」
「うん。僕も、レインも同じ考えだよ。アルテラは絶対に許せないけど、でも、カシオンとかはうまくすれば友達になれそうな気がしたし……全ての魔族が僕達が想像してきたとおりの存在じゃないんだと思う」
「ああ、そこは同感だ」
王が人払いをしている理由がわかった。
こんな話、他には聞かせられないよな。
今までの概念を覆すかのような衝撃的な内容で……
下手をしたら人々に大きな衝撃を与えてしまい、混乱を招いてしまう。
「問題はそれだけではない。強硬派に穏健派……そして、中立派。魔族の中にも派閥があり、それぞれが争っている」
「どの派閥が勝利するかによって、今後の戦況が大きく左右されるだろうね」
強硬派が勝てば、人間と魔族の争いはより苛烈なものになるだろう。
しかし穏健派が勝てば、あるいは停戦……夢を語るとするならば、和平を結ぶことができるかもしれない。
「とはいえ、まだまだ不確定な情報が多い。こう、と断定することはできないな」
「できるなら、和平が一番いいんだけどね」
「ユウキ、それは甘い考えというものだ。仮に和平を結べることになったとしても、それに反発する者は必ず出てくるだろう。魔族に恨みがある者は多く、人間に恨みがある魔族も多いだろう」
「そう、だね……」
「とはいえ、やる前から諦めるつもりはない。二人の話を改めて聞いて、魔族についてよく知らねばならないと思った。もしかしたら、の可能性を探ることも儂の仕事だろう」
これから、魔族に対して人はどう向き合っていくのか?
それはわからないけど……
ただ、良い流れが生まれてほしいと祈らずにはいられなかった。