軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

557話 有言実行

「……くぅっ!!!」

一瞬、意識が飛んだ。

危ない。

アルテラが切り札を用意して、痛烈なカウンターを仕掛けてくることは……予想していた。

かなり痛い思いをするだろうと、覚悟はしていた。

ただ、その予想を超える攻撃で……

下手をしたら、そのまま死んでしまっていたかもしれない。

反省だ。

でも……賭けに勝つことができた。

俺は生きている。

ここからは、本当の反撃だ。

いや。

決着をつける時間だ。

「おおおおおぉっ!!!」

「なっ……!?」

足を前に出して、ふんばる。

そして、アルテラに向けて再び突撃する。

俺が死んだと思っていたのだろう。

あるいは、死ななかったとしても、もう動ける体ではないと思っていたのだろう。

俺を見て、アルテラが目を大きくして驚く。

ギィンッ!

さすがというべきか。

アルテラは動揺しつつも、咄嗟に炎の剣を生成して、俺の一撃を受け止めた。

「なんで……なんで生きているの!? お腹に穴を空けて、ついでに焼いたのに! 普通死ぬのに! 死ななくても、動けるわけがないのに!」

「さて、なんでだろうな」

答えは……フィーニアと契約したことで得た治癒能力だ。

どこまでの傷が治癒されるのか、詳細は判明していなかったのだけど……

最強種と契約したことで得た力だ。

切り傷を治す、なんていうショボい能力ではなくて、ある程度の大怪我も治してしまうだろうという推測はしていた。

まあ、実際にそんなことをするわけにはいかなかったので、試すことはしなかったが……

通常時は、浅い傷なら自然治癒する。

深い傷はなかなか治癒しない。

でも、そこに魔力を込めれば?

治癒に専念すれば?

結果は……大成功だ。

これは賭けだった。

大怪我も治すことができると判断して、あえて隙を作り、アルテラの一撃を食らう。

そして治癒能力で回復して……今度は逆にアルテラの動揺を誘い、隙を作る。

かなり危ない橋を渡ることになったが、賭けは俺の勝ち。

まあ……

治癒能力も限界があり、一瞬で再生ということは無理。

ゆっくりと傷口がふさがりつつあるものの、本来なら絶対安静。

動き回るなんてありえない。

現に、足を前に出す度にとんでもない激痛が走る。

神経を直接針で刺されているかのようだ。

「……でも!」

これくらいの痛みがどうした?

ルイエは、もっともっと痛かったはずだ。

それなのに、俺が音を上げるわけにはいかない。

グレイは、最後まで抗い続けたはずだ。

勇気を枯らすことなく、己の信念を貫き通したはずだ。

俺が弱音をこぼしていたら、彼に笑われてしまう。

そうだ。

これくらい……どうってことはない!

「ふ、ふんっ、こんなもの……!」

アルテラは炎の剣を解除して、そのままカムイを受け止めた。

動揺したせいで忘れていたようだが……

炎化しているため、物理攻撃が通用しないことを思い出したのだろう。

事実、カムイはアルテラの体をすり抜けてしまう。

ただの短剣で炎を斬ることはできない。

なら、斬れるようにすればいい。

カートリッジは全部使い切った。

なら、どうすればいいか?

「俺の全部をくれてやるっ!!!」

俺の魔力は、タニアと契約したことでかなり上昇している。

それを全てカムイに注ぎ込んだ。

「ま、まだそれを使えたの!?」

「切り札はとっておくもの、って言っていたよな? コイツが俺の切り札だ!」

威力は本来のものより劣っているだろう。

長時間維持することもできないだろう。

それでも数秒保てばいい。

今回しか使えなくて構わない。

この一撃を叩き込めば、それでいい。

「くらえええええぇっ!!!」

「くうううっ!?」

アルテラが炎となるのならば……

さらなる業火を持って、焼き尽くしてしまえばいい。

それだけの威力が……ある!

ガガガガガッ!!!

アルテラは再び炎の剣を生成して、俺を迎え討つ。

刃と刃が交差して、激しく競り合う。

ここまで来ると、もう力は関係ない。

どちらの想いが……心の強さが上か、それだけだ。

西大陸に来たことで、魔族に対するイメージが変わった。

全ての魔族が破壊を好んでいるわけではなくて、俺達人間と変わらないところがあって……

もしかしたら、和解ができるのでは? と思った。

でも……

アルテラは違う。

コイツは、自分以外の存在を否定して、決して認めようとしない。

悲しみを撒き散らすことしかできない。

こんなヤツに……

こんなヤツに負けてたまるか!!!

「私が、こんなところでぇ……! 絶対に殺してやるんだからぁっ!!!」

「ぐっ……!?」

アルテラの剣圧が一気に増した。

重い。

まるで山を相手にしているかのようだ。

こちらも全力で応戦するものの、押し切ることができない。

それどころか押し切られてしまう。

ダメか!?

魔力が足りないのか!?

こんなところで、俺は……!

「……ったく、だらしねえな。ほら、がんばれよ」

ふと、どこからともなくそんな声が聞こえた……ような気がした。

グレイはいない。

彼はもう……

でも、そうか……そうだったんだ。

「グレイは、一緒にいるんだ!」

みんなの心の中に!

「お前なんかに……」

「えっ……な、なにこれ!?」

「負けてたまるかぁあああああっ!!!」

押し切る。

押し切る。

押し切る。

みんなの力が。

グレイの力が。

アルテラを押し超えていく。

「な、なに、この力!? 聞いてないよ、人間にこんな力があるなんて……なに、これ!? これじゃあ、まるで……」

「アルテラ」

「ひっ!?」

「俺は……言ったよな」

「な、なによ!?」

競り合いを続けつつ、最後の言葉を投げかける。

「お前は……倒す、と」

「っ……!?」

「これで終わりだっ!!! お前だけは、許さないっ!!!!!」

イリスの力を使い、左手に使い捨ての剣を召喚。

アルテラの手を切り裂いた。

炎化しているためダメージを与えることはできないが、一瞬、炎でできた体が剣圧で散らされる。

その影響で炎の剣が揺らいで……

一瞬の隙を見逃すことなく、押し切り、カムイを叩き込んだ。