作品タイトル不明
520話 人質の場所
迷ったのだけど、ジルオールのことはみんなには伏せておいた。
大きな情報は得ていない。
危険人物ではなさそうだけど、俺の感想なので、そのことを口にしたら混乱させてしまうかもしれない。
その二つの理由から、黙っておくことにした。
情勢が大きく動いた時など、どんな小さな情報でも欲しいという時は、改めて話をすることにしよう。
みんなと合流した後、俺達は、ソラとルナの転移魔法で街の外へ。
長距離を跳ぶことは難しいのだけど、誰にも見られず街の外へ移動するくらいは問題ない。
そして、タニア達との合流地点へ移動した。
「ふむ? タニア達はまだ来ていないようだな」
「まだ約束の時間には早いですが……」
「魔族領だから心配だな」
なにかあったのではないか?
という嫌な考えがどうしても浮かんできてしまう。
「大丈夫だよ」
そんな俺を励ましてくれたのは、ユウキだった。
ぽんと俺の肩を叩いて、明るい笑顔を見せてくれる。
「僕は、まだ彼女達のことを詳しくは知らないけど……頼りになる仲間なんだよね?」
「ああ、そうだな」
「なら、心配いらないさ。心配する気持ちもわからないでもないけど……でも、こういう時は心配するんじゃなくて、なにもない、大丈夫だ、って信じるべきだと思うよ」
「……」
思わずぽかんとしてしまう。
そう……だな。
その通り、ユウキの言う通りだ。
俺がタニア達を信じないで、誰が信じるんだ?
「タニア達なら、なにも問題はないな」
「うんうん、その調子だよ」
「……ありがとう、ユウキ」
「あはは、どういたしまして」
頼りになる相棒の笑顔に、俺は落ち着きを取り戻すことができた。
……うん?
俺は今、ユウキのことを相棒、って思ったのか?
自然と、そんな考えが出てきたのだけど……
「むむ、レインとユウキが、なんだか良い雰囲気なのだ。けしからんのだ」
「そうですね、けしからないです。ですが……」
「ですが?」
「……これはこれで、アリですね」
「おおう……我が姉よ。変な性癖に目覚めていないだろうな?」
聞こえているからな?
「レインー!」
振り返ると、笑顔で手を振るタニアが。
彼女だけではなくて、イリスとグレイの姿も見えた。
「申しわけありません、少し遅れましたわ」
「大丈夫。たいして待っていないし、みんなが無事ならそれでいいさ」
「レインさまは、わたくし達のことを心配してくださっていたのですか?」
「その気持ちはうれしいけど、でも、あたしらだけでも問題ないわ。ちょっとは信頼してよね、もうっ」
「あー……うん、ごめん。今さっき、そのことを教えられたばかりだよ」
「「?」」
タニアとイリスは不思議そうな顔をしたのだけど、グレイは察したらしく、主であるユウキに笑みを向けていた。
親が子を見守るようなもので……
専属の護衛となれば、主の活躍、成長がうれしいのかもしれない。
「それじゃあ、情報交換といくか」
――――――――――
「魔族が人間と同じように、穏やかに普通に暮らしている……か」
「レインさま達の言葉を疑うわけではないのですが、にわかには信じられない話ですわね……」
まず最初に、俺達が見た話をした。
当然の反応というべきか、タニアとイリスは難しい顔に。
グレイも、信じられないという様子で眉をしかめていた。
「さらわれた人の情報や、四天王の計画については触れることはできなかったけど……これはこれで、とても重要な情報だと思う」
「そう……ね。今すぐに必要かって言われると、ちょっと迷うけど……将来的に、絶対に仕入れておきたい情報ね」
「わたくしは、魔族は滅ぼすものと教わってきたのですが……その教えは間違っていたのでしょうか? あるいは、教える側も間違っていた……? ふぅ、悩ましい話ですわ」
「タニア達はどうだった?」
俺達が手に入れた情報は、今はまだ、発展のしようがない。
なので、ひとまず保留にした。
「ふっふっふ、聞いて驚きなさい! なんと……」
「連れ去られた人間の場所を突き止めましたわ」
「それ、あたしが言おうとしてたヤツ!?」
「ふふっ、早いもの勝ちですわ」
イリスは、天使というより小悪魔という気がしてならない。
「詳しく頼む」
「そこは、俺が説明するぜ」
詳細はグレイがまとめているらしく、メモ用紙を手に口を開く。
曰く、さきほどの魔族の街から少し離れたところに、強行派が一時的な拠点としている遺跡があるらしい。
その周囲を調べてみたところ、その遺跡に人間が連れて行かれたという目撃情報がちらほらと。
さらに調査を進めたところ、四天王である、豪炎のアルテラの姿も確認されたという。
「……とまあ、ここまで情報が揃えば、もう間違いねえだろ。連れ去られた人、全員かそれはわからねえが……確実に捕まっている人間がいる」
「なるほど、遺跡か……」
「あたしらも確認したけど、ほぼほぼ間違いないと思うわ。ちょっと調べてみたら、魔族だけじゃなくて人間の反応もあったもの」
「その反応はどれくらい?」
「じっくりとはできなかったから、曖昧になっちゃうけど……二十、三十、っていうところかしら?」
「けっこうな数だな……遺跡を拠点にしている魔族は?」
「そちらは百ほどですわ」
「俺でもわかるようなやばい気配もいくつかあった。たぶん、四天王と、その側近だろうな」
「なるほど」
色々と情報が揃ってきた。
でも、まだ足りない。
「今ひとつ、アルテラの目的がハッキリしないな」
どうして人をさらうのか、それはわからないが……
街を襲うフリをして、その裏で大量の人をさらう計画を立てている。
今捕まっている人達は、その前段階でさらわれた人達だろう。
それらの情報に関しては、事前に仕入れた通りだ。
ただ、そこに強行派と穏健派の対立、という図式が加わった。
アルテラは人をさらうことだけを目的としているのか?
それとも、プラスアルファで、穏健派の街とジルオールの排除を企んでいるのだろうか?
「アルテラがジルオールの排除も考えていて、そのために動いているとなると、かなり厄介だな……」
下手すると、四天王同士の争いに巻き込まれることになる。
そんなことになれば、捕まっている人達の安全もそうだが、俺達も危うい。
「とはいえ、四天王同士が激突することは、状況を見れば明らか。っていうことは……剣や魔法が飛び交う戦場の中に突撃して、人質を助けないといけないのか」
これは、成功するのだろうか……?