作品タイトル不明
504話 失踪者
いきなり目的の情報にたどり着くことができた。
それはうれしいのだけど……
「四天王と……それに匹敵する魔族?」
そんな話、聞いていない。
敵は一人じゃないのか?
ユウキを見る。
僕は知らない、というような感じで首を横に振られた。
想定外の事態ということか。
ひとまず、話の続きを聞こう。
「はぃいいい、そうですねぇ……魔族は二人いたらしいですよぉ、ふへ」
「それは確かな話なのかい?」
「あと、片方が四天王なのか、それもちゃんと確認しておきたいな」
「ええ、ええ。気になるところですよねぇ……でもでもぉ、マリリーちゃんの情報収集は完璧ですぅ。間違いということはありませんよ……ひひひ」
この人、語尾に不気味な笑いを入れないと、喋ることができないのだろうか?
この場にニーナがいなくてよかった。
もしもいたら、絶対に怯えていたと思う。
「目撃された場所は?」
「色々、ですねぇ……西大陸、この街の近く、平原……あちらこちら、ですぅ、ふへ」
「なるほど……他に、その魔族達に関する情報は?」
「今は、これくらいですねぇ……時間をかければ、さらに増えるかもしれませんがぁ……ど、どうします? ふひ」
「レインはどう思う?」
「……もっと情報が欲しいから、頼んでおくべきだと思う」
「うん、了解。僕も同意見だから……そんなわけで、お願いできるかな?」
「わかりましたぁ……確約はできませんが、調査は進めておきますねぇ……ふひゃ」
「「……ひぃ」」
ソラとルナが、そろそろ限界というような感じで怯えていた。
まあ、ニーナでなくても怖いよな。
「ひとまず、グレイを待とうか」
待ち合わせ場所の宿へ移動する。
宿はあまり広くなくて、客の姿は少ない。
こんな場所だから、他所からやってくる人は限られているのだろう。
大きめのテーブルをみんなで囲んで、ひとまず飲み物を注文した。
雑談を交わして、ユウキと親睦を深めて……
一杯目のドリンクがなくなったところで、グレイが姿を見せた。
「ぼっちゃん、おまたせしやした」
「おつかれさま。ジュースでいい?」
「本音を言うと酒がいいんですが……まあ、ジュースで我慢しておきやしょう」
グレイが席について、注文したドリンクを一気に飲む。
あちらこちら移動していたみたいで、喉が乾いていたらしい。
「さて……それじゃあ、情報の整理をしようか」
まずは、俺達が掴んだ情報を話した。
それからグレイの番に。
「自分が掴んだ情報は、魔族と関係あるかどうか、ちと微妙ですが……失踪者が増えている、というものでしたぜ」
「失踪者? それは、どういうことだい?」
「そのままですぜ。ある日突然、人が消えちまうそうで。神隠しとか、特殊性癖の犯人がいるとか、そんな噂が流れてやした」
「……その情報に目をつけるのは、なにかしら理由があるの?」
「魔族らしき姿を見かけた、っていう噂も流れているんですが……失踪者と魔族の目撃情報のタイミングが、ピタリ一致してるんですよ。これ、関連がないって考える方が無理っていうものですぜ」
「うん、なるほど……」
グレイの言葉を受けて、ユウキはなにかしら感じるものがあったらしく、考えるような顔に。
一方の俺も、頭の中で情報を整理していた。
四天王と、もう一人、強力な魔族が街の周辺に出没するように。
それと同時期に、失踪者が現れた。
「確かに、二つの問題が無関係と考えることはできないな。どこかで繋がっていると思う」
「しかし、その関連性がさっぱりなのだ。敵は、人間なんてさらってなにがしたいのだ? 奴隷にしたいのか?」
「ど、奴隷……」
「ん? 我が姉よ、なぜ顔を赤くしているのだ?」
「い、いえ、それはその……」
「もしかして、奴隷という単語から、よからぬことを想像したのか? 我は、労働力とかそういう方向で話をしたつもりだったのだが……そんな発想に至るなんて、びっくりなのだ。我が姉よ、ムッツリすぎやしないか?」
「う、うるさいですよ! ソラはまだ、なにも言ってません!」
「その態度で一目瞭然なのだ!」
「はいはい、いきなりコントを始めないの。まったく……そんなだから、目立つことができない芸人双子姉妹、って言われるのよ」
「「言われたことない!?」」
なにをしているのやら。
ユウキもグレイもキョトンとして、呆れているじゃないか。
「……あははっ」
我慢できないという様子で、ユウキが吹き出した。
「えっと……ごめん。みんな、からかっているとかそういうわけじゃないんだ。いつもこんな感じで……」
「いや、うん。怒っているとか、そんなことはないから安心して。ただ、楽しそうでいいなあ、って思っただけだよ」
ユウキは笑いつつも、どこか寂しそうな顔をする。
まるで、今の光景に憧れを抱いているかのような……
その顔がやけに印象に強く残る。
なにか悩みを抱えているのだろうか?
だとしたら、素直に彼の力になりたいと思った。
いつか、本物の笑顔を浮かべることができればいいなと、そう思った。
「ひとまず、今後の方針だけど……」
話を元に戻す。
今のところ有力な情報がないため、動くにしても動くことができない。
なので、まずは、このまま情報収集を続ける。
ただ情報が流れてくるのを待つのではなくて、街の周辺の探索など、こちらからも積極的に動いていく。
「……とまあ、こんなところでしょうか?」
俺の考えていることを代弁するかのように、イリスが言う。
相変わらず理解が早い。
とても助かるんだけど……
でも、たまに、心を読まれているのでは?
というような感じで、ドキッとすることがあるんだよな。
まあ、イリスは賢いからそう思うだけで、実際に心を読んでいるとか、そんなことはないだろう。
……ないよな?
「んー、でもちょっともどかしいわよね。基本、受け身じゃない?」
「それは、わたくしも思っておりましたわ。最近は、先手をうたれてばかりなので、反撃をしたいところですわね」
「サーチ・アンド・デストロイなのだ!」
だから、どこでそんな言葉を覚えてくるんだ……?
「そうだね……後手後手に回ることは避けたいね」
「相手は四天王やそれに匹敵する魔族となると、ちときついな。気がついた時には手遅れ、なんてこともあるかもしれねえ」
「うん、みんなの言う通りだ」
ぐるりとみんなの顔を見て……
そして、ニヤリと笑ってみせる。
「だから、ちょっとしたことを思いついたんだ」
「おぉ、レインが悪い顔をしているのだ?」
「それはなんなの?」
「釣りをしよう」