作品タイトル不明
429話 一緒に
「邪魔をするつもりですか、人間! もしかして、あの女をかばうとでも!?」
「いえ、そんなつもりは欠片もありません」
元仲間ではあるが、リーンに対して思うところはなにもない。
強いて言うのなら、徹底的に堕ちたことに対する哀れみや蔑みといったところか。
それくらいしか感じるところはない。
これ以上、ふざけたことを繰り返させないために、ここで倒してしまう。
その命を……断つ。
それに賛成だ。
「リーンの力は圧倒的です。バラバラに戦っていたら、勝てるものも勝てなくなる。ここにいるみんなで連携をとらないと」
「……それもそうですね。すみません、頭に血が上っていたみたいです」
「いえ。仲間があんなことになれば、仕方ないと思います」
「そう言っていただけると、助かります。ありがとう」
「……」
「どうしたのですか?」
「いえ、その……まさか、素直にお礼を言われるなんて思わなくて」
「……連携はやめましょうか」
「す、すみませんっ。つい」
「やれやれ」
エルフィンさんが小さな吐息をこぼした。
ただ、軽く笑っていた。
「連携して挑みましょう」
「はいっ」
エルフィンさんが、残り二人の不死鳥族に目で合図を送る。
彼らは困惑した様子ではあるが、エルフィンさんの命令に逆らうことはなくて、サポートをするかのように俺達の後ろへ回る。
「レイン、あなたが指揮をとりなさい」
「えっ、俺が?」
「二度は言いません。任せます」
「……わかりました!」
なんだかんだ言いつつも、エルフィンさんなりに、俺のことを信頼してくれているのだろう。
その期待を裏切ることなく、しっかりとやり遂げなければ。
カナデ達は左へ展開。
シグレさんとサクラとフィーニアが右へ展開。
半円を描くようにして、リーンを囲む。
「あははっ。あたしの力を見て、まだやるつもり? 実力の差が理解できないって、かわいそうね。まあ、逃がすつもりはないんだけどね。あんたらをたっぷりかわいがった後、そこのダンジョンにいる連中も全員、痛めつけてあげる。徹底的に、ね……あはははっ!」
魔力を収束させているらしく、リーンの両手が光る。
「それじゃあ、あんたらが作戦立てるの待ってあげたんだし、今度はあたしからいくわよ?」
くる!
「死になさいよっ!」
光が弾けた。
閃光と衝撃が俺達を包み込む。
ソラとルナが好んで使う、フラッシュインパクトだ。
視界は封じられてしまうが、これなら大したダメージはない。
今ならリーンは、魔法を放ったばかりで隙があるはず。
一気に近接戦に持ち込めば……
と、普通ならそう考えるかもしれない。
でも、簡単に先を読まれてしまうような行動を取るだろうか?
曲がりなりにも、元勇者パーティー。
その力も知恵もかなりのもの。
それに性格も根性もねじ曲がっているから、罠があると考えた方が妥当だ。
だとしたら、不用意に接近しない方がいい。
「みんな、そのまま警戒を! 追撃が来るはずだっ」
「っ!?」
俺の言葉に、反撃に移ろうしていた不死鳥族達が動揺した。
そんなバカな、という顔をするものの……
エルフィンさんから指揮権を預かる俺の言葉ということで、すぐに防御体勢に移る。
「あはははっ、ざんねーん。めっちゃくちゃ遅いんですけどぉ!?」
「なっ!?」
リーンは自ら距離を詰めてきた。
驚く不死鳥族達の懐に潜り込むと、そっと腹部に手を当てる。
その状態で、魔法を解き放つ。
「がっ!?」
竜の幻影が解き放たれて、ゼロ距離でその一撃を受けた不死鳥族は、大きく吹き飛ばされて、背中から岩に叩きつけられた。
ドラグーンハウリング、か。
フラッシュインパクトを使ったばかりなのに、すぐに次の行動に移ることができるなんて。
もしかして……と、一つの可能性に至る。
「あなたは、彼の手当を! お願いしますっ」
「くっ……わかった。仲間の仇を頼む!」
もう一人の不死鳥族は、悔しそうにしつつも、仲間のところへ。
開幕五分で、すでに五人が脱落。
完全にリーンのペースだ。
これ以上、主導権を握られたくないが……
なかなかに厳しいような気がした。
リーンは、こちらが思っている以上の力を身につけている可能性がある。
これ以上の犠牲を出さないように、慎重に進めないと。
「カナデっ、シグレさんっ、一緒に!」
「らにゃー!」
「了解だよ」
「リファ、ニーナ、シフォンは遠距離で援護を! エルフィンさんは、ここぞというところで、とびっきりの一撃をお願いします!」
「オッケー」
「がん、ばる」
「うん、わかったよ!」
「仕方ありませんね」
簡単にではあるが指示を飛ばした後、カナデとシグレさんと一緒に駆ける。
途中、リーンが迎撃の魔法を放ってくるが、リファ達の援護で相殺されて、俺達の足が止まることはない。
たぶん、近接戦は好まないのだろう。
さきほど、自ら距離を詰めたのは、相手の意表を突くため。
魔法を主体として戦うため、懐に潜り込まれるのはイヤがるはずだ。
「マルチ・ブースト!」
「なっ!?」
あと少しというところで、俺とカナデとシグレさんの身体能力を魔法で向上させた。
リーンの不意を突くため、計算を狂わせるための一手だけど、うまく機能したようだ。
リーンは軽く舌打ちをしつつ、後ろへ跳ぶ。
同時に無詠唱で魔法を放つ。
炎の槍を叩きつける、イグニートランスだ。
身体能力が強化されているので、その軌道を正確に読むことができた。
体を捻り、回避。
そして、リーンの懐に……
「……ふふっ」
「くっ!?」
リーンがニヤリと笑うのを見て、イヤな予感を覚えた。
急ブレーキをかけて、横に跳ぶ。
カナデとシグレさんも危機感を覚えたらしく、咄嗟の方向転換を測る。
一瞬遅れて、さっきまでいた場所を炎の槍が薙ぐ。
複数のイグニートランス。
それはつまり……俺と同じように、リーンは、一つの魔法を複数同時に詠唱できる、ということを示していた。