軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

368話 おにゃたせ

さすがに空からの奇襲は想定していなかったらしく、漆黒の人形はカナデの一撃をまともにうけた。

ぐらりとよろめいて、地面に片膝をつく。

「レインっ、おにゃたせ!」

漆黒の人形を殴りつけたカナデは、しなやかな動きで地面に着地。

そのまま、手を振りこちらに駆け寄ってくる。

「レーイーンー!!!」

「カナデ! って……危ない!」

漆黒の人形は体勢を崩しながらも、その体から刃を生成して、カナデに向けて射出した。

しかし、カナデが慌てることはない。

さらに三つの人影が降ってくる。

「ブラッドサイズ、いくよ」

「ティナちゃん、特大ホームランッ!」

「……っぽい」

リファ、ティナ、ニーナだ。

リファは血の鎌を生成して、黒の刃を弾く。

ティナは魔力を通わせたバットで、黒の刃を打つ。

ニーナは亜空間を開いて、その中に黒の刃を捨てる。

さすがというべきか。

みんなの圧倒的な攻撃力の前に、漆黒の人形はわずかにたじろいだ。

しかし、それも一瞬だけ。

すぐに殺気を撒き散らして、再び攻撃態勢に入る。

ただ……それを許さない二人がいた。

「「ドラグーンハウリングッ!!」」

今度は、ソラとルナが空から降りてきた。

同時に魔法を放ち、漆黒の人形を中心に爆撃が炸裂する。

それだけに終わらない。

トドメとばかりに竜形態のタニアが飛来して、

「これでもくらいなさいっ!!!」

必殺のドラゴンブレス。

巨大な光の柱が立つかのように、漆黒の人形が飲み込まれた。

精霊族の魔法と竜族のブレス。

その二つが相互干渉を引き起こして、威力を何倍にも高める。

その後、タニアは人間形態に変身して、舞い降りてきた。

たぶん、みんな、タニアの背中に乗りここまで来たのだろう。

「みんなっ!」

「レイン、おまたせだよー!」

「っていうか、ごめんなさい! あたしら、よくわかんない術にハマってて、なにが起きてるかぜんぜん気づかなくて……」

「でも、目が覚めた。だから、急いで駆けつけて、とりあえず敵っぽいの攻撃した。敵で合ってる?」

リファが小首を傾げながら、そんなことを問いかけてきた。

いつもと変わらない、らしい姿だ。

ものすごく久しぶりなような気がして……

ちょっとだけ涙腺が緩んでしまう。

「いや……助かったよ、ありがとう。ニーナもティナも、ありがとう」

「……えへへ」

「レインの旦那のためなら、地の果てまででも駆けつけるでー!」

本当に……頼もしい。

「ふふっ。なにやら、急に賑やかになりましたわね」

「おわっ!? イリスなのだ!?」

「生きていたのですね……というか、なぜレインと一緒に? む? いや、しかし……どこかでイリスと会っていたような?」

当たり前のような顔をして俺の隣に立つイリスの姿に、ソラとルナを始め、みんなが驚いていた。

俺と同じく、死んだと思っていただろうから、その気持ちはわからなくはない。

夢を見ていた時の記憶はぼんやりとしているらしく、鮮明には残っていないみたいだ。

ただ、今は説明しているヒマはない。

「みんな、悪い。説明は後で頼む! 今は、あいつを倒すのを手伝ってくれないか?」

「見た目があんなだから、ついつい問答無用で攻撃しちゃったけど、やっぱり敵なの?」

「もしも味方だったらどうするのよ、この後先考えない暴走特急猫」

「もはやなんでもいいよね、それ!? というか、タニアも攻撃してたよね!?」

まだ戦闘中なのだけど、時折、気の抜けた会話がこぼれる。

そんなところも、みんならしくて、俺も笑みを浮かべるのだった。

「アルファさんっていう、鬼族の人が魔族に変化させられたような感じだ。ホライズンの件と似ているから、たぶん、倒してしまっても問題はないと思う」

「もしも、命が一体化しているとしたら、どうするのですか?」

「助ける方法を探して、実行に移す」

「やれやれ、我らの主は難しいことをサラッと言うのだ」

「でも、レインらしいよ」

リファがうんうんと頷いている。

「それに、今はイリスもいるからねー。心強いよ、にゃん!」

「っていうか、あんた本当に味方なんでしょうね? この前みたいに、あたしらと敵対したりしない?」

タニアが疑わしそうな目を向けた。

それを真正面から受け止めて、イリスは小さく微笑む。

「ええ、ええ。信じていただいて、問題ありませんわ。わたくしは、レインさまの味方であると誓いましょう」

「それは、誰に誓うのかしら?」

「今は亡き、わたくしの家族と仲間に誓いましょう」

それはイリスにとって、とてつもなく重い言葉だ。

その覚悟と本気を感じ取ったらしく、タニアは満足そうに頷いた。

「オッケー。その言葉、信じるわ。でも、足を引っ張らないでちょうだいね?」

「あら。わたくしにそのような言葉をぶつけられるほど、タニアさんは力がありまして? 以前、わたくしと戦った時は、ぜいぜいと御老体のように息切れしていたかと思いますが」

「へぇ……」

「ふふっ……」

なにやら不穏な空気が!?

「ケンカ……めっ」

「ふざけるのは終わり。くるよ」

「「……」」

年少組の二人に叱られて、タニアとイリスはしょんぼりするのだった。

さすがに、小さな二人に怒られることは堪えるらしい。

よくわかる。

なんとなく、逆らえない雰囲気になるんだよな。

「レインさま」

イリスが隣に並ぶ。

「みなさん、目が覚めましたわね。しかも、絶好のタイミング。もしかして、最初からこうなると?」

「いや、さすがに、このタイミングは偶然だよ。ただ、きっと目を覚ましてくれると思っていた」

「信頼されているのですね。それは、なぜなのですか?」

「深い理由はないんだけど……仲間だから、かな」

その一言で俺の思いは十分に伝わったらしい。

イリスは優しく微笑み、

「……うらやましいですわね」

なにか、小さくつぶやいた。

問い返そうとするのだけど、

「レインっ、くるよ!」

カナデの鋭い声が飛ぶ。

見ると、漆黒の人形が体勢を立て直して、攻撃体勢に移行していた。

積もる話はたくさんあるのだけど……

今は、目の前の問題に対処しよう。

漆黒の人形を打ち倒して、アルファさんを救う!

「みんな、いくぞっ!!!」