作品タイトル不明
273話 カナデとタニアと一緒に……
「んー♪」
太陽の光をいっぱいに浴びるように、カナデが大きく伸びをした。
弾けるような笑顔。
尻尾はとても気分よさそうに、ふりふりと揺れていた。
「良い天気だね。絶好のお散歩日和だよ」
「そうだな。こういうのんびりした時間って久しぶりだから、なおさら気持ちいいな」
「うんうん、まさにそれ! あと……にゃー、レインと一緒だからうれしいな」
カナデが、なぜか照れながら言う。
「うん? よくわからないが……俺も、カナデが一緒にいるとうれしいよ」
「ほ、ホント?」
「ウソなんてつかないさ。カナデはいつも元気で明るいからな。一緒にいると、俺も元気になってくるよ」
「えへ、えへへへぇ……そっか。うん。私、レインを元気にしてあげることができているんだ。うれしいな」
「ちょっと、あたしがいるの忘れて、なにいい雰囲気作ってるのよ」
一緒に散歩をしているタニアが、ジト目で睨んできた。
今朝、朝食を食べた後……
のんびりしていると、タニアに散歩に誘われたのだ。
そこにカナデが加わり、三人で外に出た……というわけだ。
「あたしが散歩に誘ったんだからね。いわば、企画の立案者! そのあたしを置いておいて、二人で楽しんでるんじゃないわよ」
「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「これはもう、お詫びをしてもらうしかないわね」
「お詫び? えっと……なにをすればいいんだ?」
「そうね……」
タニアが考えるような仕草をとる。
って、特に決めていなかったのか。
「じゃあ……あたしと腕を組みましょう」
「えっ」
タニアと腕を組む?
その光景を想像して……
さすがに顔を赤くしてしまう。
「それは、なんていうか……ダメじゃないか?」
「なんでよ?」
「いや、だって、ほら……まずいだろ。色々と」
「あたしが良いって言っているの。なら、特に問題はなくない?」
「そう言われると……」
「ほ、ほら。レインはあたしの機嫌をとらないといけないんだから。おとなしく、あたしと腕を組みなさい」
自分で言っておいて、タニアもちょっと照れているらしく、頬がうっすらと朱色に染まっていた。
ただ、前言撤回をするつもりはないらしく、腕を差し出してくる。
「にゃー……あ、あんなにぐいぐいと迫るなんて……タニア、恐るべし!」
カナデがなぜか戦慄していた。
「ほら」
「えっと……」
「んっ」
「……わかったよ」
ちょっと……いや、かなり恥ずかしいが、タニアがそれを望んでいるのなら。
そう思い、タニアと腕を組む。
「はぅ」
タニアが奇妙な声をあげた。
見ると、さきほどよりも赤くなり、顔全体がリンゴみたいになっていた。
後ろで尻尾がせわしなく左右に揺れている。
「こ、これは、その……なんていうか……て、照れるわね」
「だ、だろう? だから、これくらいで……」
「だ、ダメよ! こんな風にして、レインはあたしの機嫌をとらないといけないの。そう……これは、あたしの主である義務よ!」
どんな義務だ、それは?
「ぐぬぬぬっ……タニア、やるね。そんなに体を張るなんて……おそろしい子!」
カナデがおかしな顔をして、やたらと悔しそうにしていた。
すると、なにかを決意した顔になる。
ずんずんと近づいてきて……
「にゃん!」
カナデが反対側の腕に抱きついてきた。
「か、カナデ!?」
「た、タニアと腕を組んでいるなら、わ、わた……わたたたしと腕を組んでも構わないよね!?」
「いや、でもこれは……」
おもいきり抱きついているせいか、距離が近い。
ふわりと甘い女の子の匂いがして……
それだけじゃなくて、その……ふにふにと柔らかくて弾力のある感触が。
「うにゃあああ……こ、これは、すごく恥ずかしいね……」
「もうっ、カナデまであたしの真似をするなんて……ずるいわよ!」
「タニアが抜け駆けしようとするんだもん!」
「こうでもしないと、レインのことだから、ぜんぜん気づいてくれなさそうなんだもの!」
「まあ、それは同感だよね……」
「でしょ?」
よくわからないが、二人の間に妙な連帯感が生まれていた。
「そういうわけだから……ここは争っている場合じゃないわ。まずは意識してもらわないと」
「うん、そうだね。わかるよ。ものすごくわかるよ」
「なら、協力しましょ」
「にゃん!」
二人が同時にこちらを向いて……
顔を赤くして照れながらも、ぐいぐいと迫ってくる。
「え、えっと……カナデ? タニア? 二人共、なにをして……」
「ね、ねえ、レイン……このままお散歩に行こう?」
「たまには、その……こういう距離感も悪くないんじゃない? ほら、なにか新しい発見があるかもしれないわよ」
そんなものがあったとしても、それを見つける前に羞恥でどうにかなってしまいそうだ。
というか……
二人は恥ずかしくないのか?
無理をしているように見えるんだけど。
「えっと……やっぱり、これはやめないか?」
「なんでよ」
「その……迷惑なの?」
「そんなことはないというか、むしろ、二人に申し訳ないというか……」
「にゃん?」
「申し訳ないって、どういうこと?」
こんなことを口にしたら、二人をさらに恥ずかしがらせてしまうと思うが……
だからといって、放っておくわけにもいかない。
「あー……怒らないでくれよ?」
「うん」
「ええ」
「その……胸が当たってる」
わずかな沈黙。
「「っ!!!?」」
ややあって、二人の顔がぼんっと赤くなった。
腕を組むことでどうなるか、そこまでは考えていなかったらしい。
しかし、二人は離れることはなくて……
「「あ、当ててるの!!」」
揃って奇妙なことを口にした。
「ほ、ほら。行くよ、レイン! こ、こここ、これくらいにゃんでもにゃいんだから!」
「ふ、ふふんっ。これくらいで照れちゃうなんて、レインったら、こ、こここ、子供ね!」
二人共、ニワトリのように『こ』を連発していた。
ものすごく動揺しているように見えるのだけど……
でも、しっかりと腕を組んでいて離してくれない。
こうなったら仕方ないと、俺は諦めて二人に付き合うことにした。
……ちなみに、俺たちのことを知る街の人からは冷やかされたり、一部、ものすごい嫉妬の視線を向けられたりで大変だった。
やっぱり、こんなことは二度とないようにしよう。