軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

264話 その後……・その1

あれから一週間が過ぎた。

のんびりできたということはなくて……

嵐のように忙しい、怒涛の一週間だった。

まずは、昇格試験中の殺人事件に対しての再捜査。

それに対する協力をした。

アリオスの自爆とサーリャさまのおかげで、俺の容疑は完全に晴れた。

ただ、事件の詳細を詰めるために再調査をしなければならず、それに協力することになった。

再び捜査が行われることになり……もちろん、アリオスは関与していない。

俺は再び事情聴取をされて、現場検証などにも立ち会った。

ただ、容疑は完全に晴れているため、犯人扱いをされるということはない。

一協力者として、事件解決に貢献した形となる。

むしろ、騎士達はアリオスの命に従い剣を向けたことを悔いており、ひたすらに待遇がよかった。

一部では、アリオスに加担した騎士達の厳重処罰の声が出た。

しかし、軍人である以上、上の命令に逆らうことは難しい。

そんな彼らの立場も理解しているから、俺は必要以上のことは言わなかった。

これはみんなで決めたことだ。

そんなわけで厳罰は免れたが……

色々な罰は受けたらしい。

それは諦めてもらうしかない。

それはともかく……

再調査が行われたら、すでに完璧な証拠が出揃っている状態だ。

捜査が長引くことはなくて、数日で終わる。

そして……アリオスに有罪が言い渡されることになった。

――――――――――

王城の謁見の間。

国王アルガスの前に膝をついて、頭を下げているのはアリオスとその仲間達だ。

皆、一様に顔を青くしてイヤな汗を流している。

「顔を上げよ」

アルガスが言うが、誰一人として反応しない。

「顔を上げよ」

もう一度、アルガスが言うと、アリオスだけが顔をゆっくりと上げた。

その表情は……とても苦々しいものだった。

「これより、簡易的ではあるが裁判を始める」

アルガスの厳しい視線に射られて、アリオスは小さく体を震わせた。

「勇者アリオスよ。お前は勇者という立場にありながら、何も罪のない冒険者を殺めた。その動機は、以前、所属していたパーティーメンバーを陥れるためという、身勝手極まりないもの。これに対して、なにか申し開きはあるか?」

「……僕はそのようなことをした覚えはありません。なにかの間違いではないかと」

「第三王女サーリャが所持する魔道具により、お前が自白するところを多くの国民が耳にしている。それだけではない。試験会場を監視する魔道具の解析をしたところ、お前が他人になりすまして殺人を行うところが記録されている。それでも、なにも覚えはないと言うか?」

「はい、ありません」

アリオスは顔を青くしながらも……

それでも、きっぱりと言い切った。

厚顔無恥とはこういうことを言うのだろう。

これだけの証拠が揃っているというのに、なおも無関係と言い張ることができる。

王の隣で成り行きを見守っていたサーリャは、深い呆れから、思わずため息をこぼしてしまいそうになった。

「僕がかつての仲間を陥れるようなことをしたことは……それについては認めましょう。しかし、それは国のためを思えばこそ。ヤツは複数の最強種を従えているという危険な人物。もしも国に反旗を翻せば、どのような被害が出ることか」

「そのために、あえて卑劣な手段を選んだと? そういうことか?」

「はい、その通りです」

アルガスは顔色を変えることなく、アリオスの話を静かに聞いていた。

その表情からは感情をうかがうことが難しく、何を考えているかはわからない。

「では、冒険者を殺した件についてはどう弁明する?」

「あれは僕を陥れるために、何者かが故意に作成したものでしょう。まだ魔道具の解析は完全に終わっていないと提言します。真に調査が完了したのならば、僕の無実はきっと晴れるでしょう」

「なるほど。お前が殺人を犯した記録もまた、虚偽のものと言うか」

「はい」

アルガスの言葉が止まる。

ここだ。

アリオスはたたみかけるべき時だと判断して、さらに言葉を重ねる。

「今回のような事件を招いてしまったこと、僕の責任でもあります。己の力不足を不甲斐なく思い、情けなく思い……そして、卑劣な犯人に対して憤りを覚えています」

「ふむ……それで?」

「僕にチャンスをくれませんか? 僕はこの手で自らにかけられた容疑を晴らしてみせましょう」

「それは、お前が今回の事件を捜査するということか?」

「はい。必ずや真犯人を見つけて、その罪を償わせてやりましょう」

場の流れはアリオスに傾いていた。

周囲の高官達は、アリオスの話を真剣に聞いていて、時折、相づちを打っている。

リーン、ミナも場の空気が自分達に都合の良い方向に流れていることを察して、顔色を明るくしていた。

アリオスが殺人なんてするわけがない。

これはなにかの間違いだ。

二人はそう思っているらしく、最初の時よりは緊張が薄れていた。

ただ……アッガスは無表情を貫いていた。

どことなく厳しい視線をアリオスに向けている。

「なるほど、お前の話は理解した。勇者であるアリオスの言葉だ。その言葉にウソはないのだろう」

「では……!」

「今回の事件についての再調査を認めよう……などと、そう言うと思ったのか?」

今まで無表情を貫いてきたアルガスだけど……

その表情が一変した。

烈火のごとく激しい怒りを宿して、アリオスをきつく睨みつける。

玉座の肘掛けが壊れてしまいそうなほど、手に力を込めていた。

「この……愚か者がっ!!!!!」

「っ!?」

落雷のような激しい叱責に、アリオスの体がビクッと震えた。

「この期に及んで罪を認めようとはせず、見苦しい言い訳を重ねるとは……愚の骨頂!!! 貴様っ、それでも勇者か!!!?」

「し、しかし、僕はウソなどは……」

「完全な証拠が出ているのだ。ありとあらゆる方向で検討した結果、貴様以外に犯人はいないという結論が出ているのだ。しかも、儂の不在を狙い、その間に行動を起こすとは……」

「ぐっ……!」

「儂がただ単に、公務を優先させて王都を離れていたと思うか? 他に目的があったとは思わないか?」

「ま、まさか……」

「貴様のことを調べるのが本当の目的だったのだ。王都にいては、どうしても地方で起きた細かいことを見逃してしまう。報告をさせるにしても伝言ゲームとなり、正しい形が歪められてしまう。故に、儂自らが赴いて、真実を確かめたのだ。その結果は……想像以上にひどいものだったがな」

「うっ、くぅ……」

「今回の件に関しても、勇者としての権力を振りかざし、騎士達を勝手に動かした。それだけではなくて、完全に支配下に置くために、権限を持つ一部の騎士を魔法で洗脳していたな? それはリーンかミナの仕業だろうか?」

リーンがビクリと震えた。

どうやらリーンの仕業らしい。

「……もうよい」

アルガスは疲れたような吐息をこぼして……

それから、アリオスに対して虫を見るような目を向けた。

「勇者であるからと、今までの貴様の行動を大目に見てきたが……それは過ちであった。間違いであった」

「な、なにを……」

「幸いにも、その過ちは正すことができる」

アルガスは玉座から立ち上がり、アリオスに判決を告げる。

「アリオス・オーランド! 今この時をもって、勇者の資格を剥奪するっ!!!」

「なっ……!?」

「そして、冒険者殺害の容疑で投獄とする! 仲間も同罪だっ!!!」

リーンとミナが震えて、顔面蒼白になった。

「処置は追って通達する。今は獄中で頭を冷やし、反省するがいいっ!」

「そんなバカなっ!? 僕は勇者だ! この僕を必要としないなんて……そのようなことをして、自殺願望でもあるというのか!? 魔族を相手に死にたいのか!?」

相手が王であることも忘れて、アリオスが大きな声で叫ぶ。

途端に周囲の騎士達が駆け寄り、アリオスの体を拘束した。

「ちょっ、なんで……やめて!? 触らないでよっ!?」

「どうして、このような……あぁ、神よ……!」

リーンとミナも拘束された。

アッガスも拘束されるが……彼は暴れることなく、おとなしくしていた。

「やめろ! 触るな! 僕は勇者だ、勇者なんだっ!!! 選ばれたものなんだ!!! それなのに、こんなこと……こんなことはありえないぞっ!? あってはならないというのに……なんなんだ、これは!!!?」

「黙れっ、勇者を名乗る愚か者が! 貴様の声を聞くだけでも不快だ。騎士よ、その者達を牢に閉じ込めておくがいい!」

こうして……

アリオスは勇者の資格を剥奪されて、投獄されたのだった。