軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209話 タニアの想い・その2

パーティーに戻るつもりになれなくて……

もう少し、一人でいたいと思い、あたしはレインと母さんがいる反対側……家の裏手にある丘へ移動した。

ここは眺めが綺麗だ。

街が一望できるし……

上を見れば、星が輝いている。

あたしは地面に座り、空を見上げた。

それから、そっと手を伸ばす。

星空に手が届きそうだった。

「ふぅ」

なんとなく、レインと母さんの会話を思い返して……

ニヤニヤしてしまう。

盗み聞きをして悪いとは思うのだけど……

だけど、レインが普段、どんなことを考えているのか、知ることができた。

うれしい。

うれしいといえば、もう一つ。

「やめろ、って言っておいてなんだけど……あの時のレイン、ちょっとかっこよかったかも」

あたしを助けてくれた時のことを思い返した。

ボロボロになったあたしを見て、レインは怒っていた。

今まで見たことがないくらいに怖い顔をしていた。

あんな顔をさせてしまったことは申し訳ないと思うんだけど……

でも、同時に、うれしいとも思ってしまう。

勝手な思いなんだけど……

あたしのためにあれだけ怒ってくれる、っていうのは、ついつい喜んでしまうことなのよね。

怒ってくれる=大事に思ってくれている、ってことだもの。

止めておいてなんだけど、うれしく思うあたしであった。

矛盾しているけど、仕方ない。

乙女心は複雑なのよ。

「……レイン……」

一度考えたら、ずっとレインのことばかり思い浮かべてしまう。

レインの怒った顔。

レインの笑った顔。

レインの困った顔。

レインの……

なんでか知らないけど、レインのことが頭から離れない。

今までに似たようなことはあったのだけど……

今回のように強烈なものは初めてだ。

いったい、どういうことなのかしら?

「……って、考えるまでもないか」

あたしは膝を立てた。

そして、その間に顔を埋める。

誰にも見られていない、ってわかっているんだけど……

それでも、この火照った顔を誰かに見られたくないから。

膝の間に顔を隠すようにして……

それから、自分にしか聞こえないような小さな声でつぶやく。

「あたし……レインのことが好きなのね」

言葉にすると、一気に実感が湧いてきた。

胸の中が温かい想いでいっぱいになり、顔の火照りがどんどん強くなる。

ドクンドクンッ、と心臓がうるさいくらいに跳ねた。

「あーもう……まさか、こんなことになるなんて……」

最初に会った時は、ちょっと変わった人間、っていう程度の印象。

一緒にいたらおもしろそうだなあ、って考えてついていくことにした。

それから、一緒に旅をしているうちに、レインに対する興味が大きくなり……

次第に、レインのことを考える時間が増えて……

気がつけば、視線で追うようになっていて……

そして、今回の事件だ。

あたしのためにあそこまでがんばってくれるところを見せられたら……もう、たまらないじゃない?

ハートをおもいきり射抜かれても、仕方ないじゃない?

「ふふっ」

レインのことを考えていたら、知らず知らずのうちに笑みがこぼれていた。

たぶん、今のあたしは、にへらとだらしらない笑みを浮かべているんだと思う。

他の人には絶対に見せられない顔だ。

でも、レインにならいいかも……

「って……恥ずかしいこと考えているわね、あたし……ホント、どれだけレインのことが好きなんだか」

自分で自分の想いに苦笑してしまう。

でも、仕方ないわよね。

だって、それくらいレインのことが好きなんだもの。

「レインは……あたしのこと、どう思っているのかしら?」

あれだけ怒るくらいだから、大事に思ってくれているわよね……?

でも、それが好意かどうかとなると、怪しいところだ。

「んー……彼女はまだいないわよね? そんな雰囲気はないし、それは確定っぽいのよね。好きな人は……どうなのかしら?」

レインと一番接点が多い女の子といえば、あたしたちだ。

カナデ、ソラ、ルナ、ニーナ、ティナ。

ニーナはまだ幼いから、さすがにないとして……

ソラとルナも、若干、怪しい年齢よね?

そういう対象として見るには、やっぱりまだ足りない気がする。

そうなると、ライバルはカナデとティナ、っていうところかしら?

でも、ティナは一番付き合いが浅いから、好きになるにしては急な気がする。

そしてカナデは、恋人というよりは親友という雰囲気だ。

それらしい甘い雰囲気は漂ってこない。

となると、一番可能性があるのはあたしということに……

「っっっーーーーー!!!?」

その瞬間、ひときわ強く顔が火照る。

なんだかむしょうに恥ずかしくなって、両手で顔を押さえた。

あたし今……レインと結ばれたことを考えていた。

その時のことを想像して、ニヤニヤして……

「あーもうっ」

じたばたじたばたと、その場で暴れた。

近くに人がいたら、きっと何事かと首を傾げていただろう。

「恋って、こんなに厄介なものなのね……」

まるで、あたしがあたしでなくなるみたい。

でも……ふわふわとしていて、とても心地いい。

あたしは今……恋をしている。

「レイン……大好き……」

今はまだ告げられない想いを口にして……

星空の下。

もうしばらくの間、レインのことを想うのだった。