軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

162話 別れた道

翌日。

事前の情報通り、討伐隊がジスの村に到着した。

冒険者と騎士団の混合部隊。

その数は百人以上だ。

そんな人数が小さな村に収まるはずもなくて……

討伐隊は村の外の広場に野営地を作っていた。

「にゃー……すごいいっぱいだね」

カナデがそんな感想をこぼした。

驚いているらしく、目を丸くしていた。

気持ちはわからないでもない。

これだけの冒険者、騎士が一同に集まる機会なんて、普通はないからな。

今回の事件……

上がどれだけ重く見ているのか。

どれだけ本気なのか。

そのことがよくわかる光景だ。

「おっ、いたいた」

振り返ると、アクスとセルの姿が。

「討伐隊が、これから会議を開くみたいよ。私達にも出席してほしい、って」

「俺達は調査班なのに?」

「悪魔と直接やりあったのは私達だけだから。その意見が欲しいみたい」

「それと、今後の方針が大きく変わるかもしれないから、話し合っておきたい、とも言ってたな」

「そうか……わかった。すぐに行くよ。カナデはみんなのところに戻っててくれるか?」

「あ、カナデさんもついてきてくれる?」

セルがそう付け加えてきた。

「にゃん? 私も?」

「たぶん、最強種であるあなたの意見が聞きたいんだと思う。これから戦う相手についての情報は、少しでも多い方がいいでしょうから」

「にゃあ……私達は戦うつもりはないんだけどなあ」

「今、なにか?」

「ううん、なんでもないよ。りょーかい!」

「それじゃあ、ちょっと待ってくれるか? 宿で待ってるみんなに、会議に出ることを伝えてくるから」

「ええ。悪いのだけど、急いでね」

アクスとセルと別れて、カナデと一緒に宿に向かう。

「レイン、レイン」

「うん?」

「やっぱり、私達も討伐隊に組み込まれるのかなあ?」

「……その可能性は高いな」

「どうするの?」

「抗ってみせるさ」

俺はイリスと戦うのではなくて、生かす。

そう決めたのだから。

――――――――――

宿に戻り、みんなに伝言を伝えた後……

俺とカナデは会議が行われるという、討伐隊が設置した大型のテントへ移動した。

中に入ると、すでにアクスとセルがいた。

その他には、冒険者と騎士達。

そして……

「おおっ、レインではないか。久しいな」

「ステラじゃないか」

ホライズンの街の騎士団長になったはずのステラが、なぜかここにいた。

「どうしてここに?」

「応援要請を受けてな。本来なら、もっと他に適任者がいるはずなのだが……なぜか、騎士をまとめる役を任されてしまったのだ」

「ステラなら問題ないだろう。能力、実績、共に申し分ないさ」

「くすぐったいことを言わないでくれ。私なんて、まだまだ未熟だ」

再会の握手を交わした。

「しかし、緊急依頼でレイン達が街を出たことは知っていたが、このようなところで再会するなんて……世界は広いようで狭いな」

「まったくだな」

「さて……すまないが、すぐに会議を始める。少し付き合ってもらえるか?」

「わかった」

俺とカナデは、案内された席に座る。

そして、ほどなくして会議が始まった。

まず最初に、悪魔……イリスについての情報が共有されることになった。

俺やカナデ、アクスやセルなどが証言をして、イリスの能力について話をした。

一切の制限がなく、無限に使用することができる召喚魔法。

そのとてつもない能力を話した時は、テント内がざわついた。

いくらかの冒険者や騎士は、そんなことはありえない、と噛み付いてきたものの……

アクスとセルはAランクの冒険者だ。

そして俺は、自分で言うのもなんだけど、『ホライズンの英雄』と呼ばれている。

そんな俺達がつまらない嘘をつくわけがないだろうと、ステラが皆を黙らせた。

噛み付いてきた冒険者や騎士達も、ただ動揺しただけなのだろう。

すぐに納得してくれて、落ち着いてくれた。

その後……

今後の方針を話し合うことになった。

「さて、これからについてだが……まずは、上の決定を伝えよう。調査班はその活動を停止。我ら討伐隊に参加してほしい」

「ん? そりゃ、どういうことだ?」

アクスの疑問に、ステラはその質問を想定していたようにスラスラと答える。

「悪魔の力は強大で、放置しておくことはできない。仮に封印に成功したとしても、いつかまた破られてしまうという恐れがある。後に遺恨を残さないために、今ここで、討つべきという結論が出たのだ」

「なるほどな……まあ、わからないでもない話だな」

やっぱり、そうなるか……

あらかじめ予想はしていたけれど、俺にとって望ましくない展開になりそうだ。

「他の隊も合流させるつもりだ。そして、こちらの最大戦力をもって悪魔を撃破する」

「んなことしていいのか? 戦力を一箇所に集中させたら、他の守りが手薄になるだろ?」

「アクスがまともな意見を……あなた、ニセモノなのかしら?」

「なんでだよ!?」

アクスとセルが漫才を披露していた。

やっぱり、この二人、なんだかんだで仲が良いのかもしれない。

ステラが苦笑しながら答える。

「それはわかっているつもりだ」

「なら、どうして?」

「戦力を分散させれば、その分、悪魔を撃破できる可能性が低くなる。というか、最大戦力で挑まなければ、蹴散らされてしまうだろう。他の守りが手薄になってしまうが……そこは、どうにかしてカバーするしかない。最低限の見張り、索敵要員だけを残して、本体はここで待機。悪魔を発見したら早急に駆けつけて、決戦に持ち込む……という作戦になるな」

「それは、またなんつーか……」

「行き当たりばったりで、作戦になっていないわね」

「わかっている。しかし、下手に戦力を割いても各個撃破されるのがオチだ。レイン達の話を聞いて、悪魔の力を知り、なおさらそう思うようになった。これ以外に方法はないのだ」

「まあ、それもそうか」

「……上がそういう方針を出したというのならば、反対はしないわ」

アクスとセルは思うところはあるみたいだけど、一応、納得はしてみせた。

ステラがこちらを見る。

そちらは問題ないか? と、その目が問いかけてくる。

それに対して、俺は……

「……すまない」

「え?」

「悪いが、俺達は一緒に行動することはできない」

驚くステラに、俺はハッキリと自分の意思を伝えた。

「……それは、どういう意味なのだ?」

最初は驚いていたステラだけど、すぐに我を取り戻して、強い視線をこちらに向ける。

問いただすような、厳しいものだ。

あのステラに、こんな目を向けられるなんて、思ってもいなかったなあ……

若干、心が痛むのを感じながら……

それでも、俺は俺の意思を伝える。

いや……

この場合は、俺達の意思……か。

「俺達は、このままイリスを封印する方法を探す」

「封印という選択肢は消えた、と言ったと思うが?」

「わかっている」

「封印をしても、再び復活するかもしれない。問題の先延ばしにすぎない。そのことは、レインならばわかるだろう?」

「わかるが、わからない」

「む?」

「殺すだけが解決方法なんて……そんなこと、俺は納得できない」

イリスの過去を知らないステラに納得してもらうことは難しいだろう。

いや。

例え、イリスの過去を知っていたとしても、納得してもらえないかもしれない。

最悪、ステラを敵に回してしまうかもしれない。

それでも。

俺は、自分が正しいと思う道を進むと決めた。

「レイン」

隣のカナデが、そっと俺の手を握る。

俺のやることは間違っていない。

応援している。

そんな言葉をもらったみたいで、胸が温かくなる。

「……わかった」

しばらくの沈黙の後、ステラは小さく頷いた。

その顔は……仕方ないな、という感じで笑っていた。

「なら、レインは今まで通り、調査班として行動してくれ。上には、私から取り計らっておこう」

「ありがとう、助かるよ」

「ホライズンでは、色々と助けられたからな。今度は、私がレインの助けになる番だ。とはいえ、これくらいで借りを返せるとは思っていないが」

「十分だよ」

俺とステラは互いに笑みを交わした。