軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154話 追及

「だから、レインはそのままでいてね? レイン『らしく』あってね? そんなレインのことが、私達は好きなんだから」

「そっか……」

カナデの言葉が胸に染みる。

俺は、誰かに肯定してほしかったのかもな。

大丈夫、って背中を押してほしかったのかもしれないな。

「ありがと、カナデ」

「にゃふー」

カナデの頭をぽんぽんと撫でる。

言ってもらったというか、言わせてしまったというところがあるのだけど……

それでも、俺の心は軽くなっていた。

一人じゃないということが、俺の心の負担を軽減していた。

「……ふぁっ!?」

何かを思い出した様子で、突然、カナデが赤くなった。

「どうしたんだ?」

「えっ!? いや、あの、その……今さっき、す、好きって言ったのは、そのあの、そういう意味じゃなくて、仲間としてっていうことで、でもでも、やっぱりそういうことだけじゃなくて……ふにゃあああああ!?」

「か、カナデ?」

「うぅ……気にしないで。ちょっとした自爆をして、ものすごく恥ずかしいだけだから」

「そ、そうか?」

カナデは顔を真っ赤に染めていた。

傍から見ていると、何か大きなことをやらかした、というように見えるんだけど……

まあ、カナデがなんでもないと言っている以上、追及するのもどうかと思う。

迷った末に、注意して様子を見ておくだけに留めることにした。

おかしな様子が続くようなら、その時は、改めて話をすることにしよう。

「えっと……レイン、レイン」

「うん?」

「あの天族は撃退したけど、これからどうするの? 封印方法を探すの?」

「それもあるけど……その前にやることがあるな」

「にゃん? やること? なんかあったっけ」

「あるよ」

……アリオスを追及しないといけない。

――――――――――

「何の用かな?」

村長の家にアリオス達一行を呼び出した。

中にいるのは、俺のパーティーとアクスとセル。

それと、村長と村人が少し。

それなりの広さがある家とはいえ、これだけの人数が集まると手狭に感じる。

とはいえ、誰が聞いているかわからないところで話すようなことじゃないので、そこは我慢してほしい。

「僕達は忙しいんだ。これから、あの天族を追わないといけないからね。つまらない話なら後にしてくれないか?」

「そうやって逃げるつもりか?」

「なんだと……?」

あえて挑発するように言った。

アリオスはこちらを睨みつけてくるが、ぜんぜん怖くない。

「イリスが現れた時に、こんな話をしていたよな? イリスはアリオスに協力している。その理由が、アリオスに解放してもらったから……と」

「っ!?」

アリオスの表情が歪む。

「な、なんじゃと……」

「まさか、そんなことがあるわけないだろう!」

「勇者様がそのようなことをするはずがないっ」

村人達の間に動揺が走る。

ただ、それでもまたアリオスを信じている人は多く、擁護するような言葉が飛び出した。

先の話が出た時、村人達はみんな避難していたからな。聞いていないのだろう。

そんな村人達を見たアリオスは、口元に笑みを浮かべる。

「……つまらない言いがかりはやめてくれないか? 僕は村人達を助けるために、命を賭けて戦ってきたんだ。それなのに、悪魔を解放するなんてことはしない。ましてや、その悪魔と協力するなんて……世迷言もほどほどにしてくれ」

「どうかな? 怪しいものだ」

「なんだと?」

「目的は知らないが、アリオスがイリスを利用しようとしたのは間違いない。確かに、そういう話を聞いた。でも……アリオスはイリスのことを甘く見ていた。たぶん、制御できると思っていたんだろう。だけど、イリスの方が上だった。アリオスの手を離れて暴走して、手痛いしっぺ返しを食らった……そんなところじゃないか?」

「……まるで、見てきたかのように言うんだな」

「これでも、アリオスのことはそれなりに把握しているからな」

それなりに一緒に旅をした仲だ。

アリオスの性格、やりそうなことは、ある程度予想できる。

イリスを利用しようとしたけれど、逆に利用された。

今回の真相はそんなところだろう。

でも……

そんなくだらないことをしたせいで、被害が拡大した。

アリオスが封印を解かなければ、こんなことにはならなかった。

そのことを考えると、怒りが湧いてきてしまう。

「ふんっ、くだらない。全部、君の憶測でしかないことだ。証拠はあるのか?」

「それは……」

「ないだろう? あるわけがない。君のつまらない妄言なんだからね。そんなことで僕の名誉を貶めようとするなんて……覚悟はできているな?」

アリオスは勇者だ。

国と深く通じている。

俺のことを反逆者なりそういう風に報告すれば、たちまち指名手配されてしまうだろう。

とはいえ、ここで引き下がるわけにはいかない。

こんなことをしでかしたアリオスを野放しにしたら、次はどんなことをするか……

しかし、まずは現状をなんとかしないといけない。

アリオスの言葉がウソだという証拠を突きつけないといけないのだけど……

「俺が証人になる。レインはウソなんて言ってないぜ」

「私も証人になるわ」

アクスとセルが前に出た。

「レインの言っていることは本当だ。俺は、確かにこの耳で聞いた」

「同じく。彼はウソをついていないわ。ウソをついているのは、勇者の方よ」

「なっ……」

思わぬ証言者に、アリオスが慌てた。

「き、貴様ら……この僕に対してそんなことを……どうなるかわかっているのか? 僕の一声で、貴様らを国の反逆者にすることもできるんだぞ?」

「はっ、するなら勝手にしろ! なにが勇者だ。あんたに憧れてた自分がバカみたいだ。こんなクズ野郎だったなんてな」

「何が目的か知らないけれど、あなたが今回の事態を招いているのよ? その自覚はないの?」

「ぐっ……こ、こいつら……!」

アリオスの顔が青くなって、次いで赤くなる。

「アリオス、落ち着いてください」

「そーそー、うちらやましいことなんてなんもないし。慌てたらダメだって」

ミナとリーンの言葉で、アリオスは多少、落ち着きを取り戻したみたいだ。

表情は険しいままだけど、口調は穏やかに、冷静に話を進める。

「なるほど……君達の言い分はわかった。が、証拠は?」

「それは……」

アクスが口ごもる。

「僕がそのようなことをしたという証拠はないだろう? 当たり前だ。僕がそのようなことをするはずがないのだから。僕は勇者だ。この国に生きる人々を守るために戦っている。それなのに、人々を危険に晒すようなことはしない。君達が証言するというが……ただの冒険者と勇者である僕の言葉、人々はどちらを信じるかな?」

「ぐっ……こいつ……」

「やめなさい。気持ちはわかるけれど、ここで手を出したらダメよ」

アクスが拳を握りしめるが、セルが制止した。

それを見たアリオスが、ますます調子に乗る。

「つまらないことを言ってくれたな? この借りは必ず返すことにしよう。今は悪魔の事件で手一杯だが……終わったら覚悟しておくといい。冒険者ライセンスの剥奪だけじゃすまないだろうな。投獄もありえるかもしれない。僕を愚弄した罪、しっかりと償ってもらわないと」

「証拠があればいいんですね?」

ふと、ソラが口を出してきた。

「証拠ならありますよ」

「……なんだと?」

「おい、そいつは本当か?」

アクスが話に食いついてきた。

「はい、本当ですよ」

「うむ。動かぬしょーこ、とやらがあるぞ!」

ルナも会話に加わった。

「馬鹿な……くだらない、ただのハッタリだ。そんなものがあるわけないだろう」

「ふっはっは! ところがあるのだ! さあ、ソラよ。見せてやるがいい」

「ソラが言い出したことなのに、なぜルナが仕切っているのでしょうか……まったく」

ぶつぶつ言いながらも、ソラは魔法を唱えた。

すると……

『いくらわたくしを解放してくれたとはいえ……所詮は、人間。しかも、勇者。そのような者に、いつまでもわたくしが従うと思いまして?』

『なっ……き、貴様! 話が違うぞっ』

『解放してくれたお礼に、あなたに協力をする……そういう約束でしたが、もう、飽きました。というか、そろそろパゴスの生き残りは殺したいと思っていたので……協力関係はここまでにいたしましょう』

『なっ、ぐっ……貴様……恩知らずが! よくもそんなことが言えるなっ。貴様は、この僕が解放してやったんだぞ!? それなのに裏切るつもりか!?』

『約束は破るためにあるものですわ』

宙にイリスとアリオスの幻影が投射された。

「これは……?」

「場の記憶を魔法で再現したものです」

問いかけるようにソラを見ると、そんな答えが返ってきた。

「過去の特定の時間を切り取り、再現する……まあ、簡単に言うと、過去に起きたことをもう一度見ることができる魔法ですね。見ての通り、精巧に再現されているので、自分の都合のいいように改ざんすることは不可能です。事実をそのままに再現します。これ、十分な証拠になりますよね?」

「なっ……バカな……」

アリオスの顔が青くなる。

ついでに、ミナとリーンも青くなった。

アッガスは……無表情を保ち、何を考えているのかわからない。

「ついでに言うと、もう一つ、証拠があります」

そう言って、ソラは血で汚れた短剣を取り出した。