作品タイトル不明
1084話 邪教
「うわーーーん、アニキーーー!!!」
記憶が蘇り。
現状を理解したライハは、泣きながら抱きついてきた。
その体は小さく震えている。
きっと、怖かったんだろうな。
負けただけではなくて、操られて……
俺だったら、心が折れていたかもしれない。
「大丈夫、大丈夫だからな」
「うぅ、ぐすっ……怖かったっす……あと、迷惑かけてごめんなさいっす」
「気にしなくていいよ。というか……もしかして、記憶が?」
「はい……操られていた時も、どうにもできなかったけど、自分、意識はあって……アニキ達に攻撃を……うううっ、かくなる上は腹を切り謝罪を!」
「しなくていいから!」
慌ててライハを止めた。
それから、もう一度、抱きしめる。
「こうして、ライハが無事だったから、それでいいんだよ。なにも気にすることはないさ」
「……ぁ……」
「おかえり。それと、無事でいてくれてありがとう」
「……ただいまっす」
ライハは、ちょっと照れた様子を見せつつも、ぎゅっと抱きついてきた。
しっかりと受け止めて、抱き返す。
カナデ達がちょっと瞳を潤ませていた。
「ふひぃ……もう大丈夫っす」
しばらくして落ち着いたらしく、ライハが離れた。
それから、再びベッドの上に戻る。
「ごめんなさいっす。なんかまだ、体力が戻っていないみたいで……」
「魔力も戻っていませんよ? 絶対安静とまではいきませんが、しばらくは、おとなしくしていないとダメですね」
「……私が看病するね」
「おや? この可愛い子は……」
そこでルリに気がついたらしく、ライハは、はてぇ? という感じで小首を傾げた。
「……っ……」
じっと見つめられて、ルリはびくっと震えた。
人見知りを発揮しているのかもしれない。
でも、俺の後ろに隠れるようなことはなくて、ライハを見返していた。
「こんにちはっす」
ライハは、にっこりと笑いかけた。
そのまま、優しい口調で言う。
「自分は、ライハっす。お嬢ちゃんは?」
「……ルリ」
「ルリちゃん、っすね。可愛い名前っす。あ、名前で呼んでもいいっすか?」
「……ん」
「よかったー。これで断られたら、自分、心をえぐられて、操られていた時とは別の感じで倒れていたっすよ」
「……大丈夫?」
「お、心配してくれているっすか? 大丈夫っすよー。ちょっとだるいだけで、もう頭はしっかりとクリアー! みんなの可愛いライハちゃんが戻ってきたっす」
「自分で言うの?」
「だって、可愛いっすからね!」
「……」
ルリは、ちょっとだけ笑ったような気がした。
それと、いつの前にか前に出ている。
こういうところはすごい。
ライハって、コミュニケーション能力お化けではないのだろうか?
「……ところで」
本来ならライハの回復を喜び、あまり無理はさせたくないのだけど……
できる限りのことは聞いておきたい。
「いったい、なにがあったんだ?」
「あ、そうだ! 聞いてほしいっす! めっちゃ聞いてほしいっす!」
ものすごい勢いよく言う。
ルリが、びくっと震えて驚いていた。
えっと……
こういう時のパターンは、「そ、それは……」っていう感じで、怯えたりするのでは?
いや、まあ。
元気なのはいいことなんだけど、その反応はアリなのか? と、なんか拍子抜けしてしまう。
「自分、偉い人に襲われたっす!」
「偉い人? もしかして、貴族か?」
「いや、そういう感じじゃなかったっすね。派手な感じはしなかったっす」
ライハの中では、貴族=派手、という認識なのか。
間違ってはいないかもしれないけど……うーん。
世の中には、まともな貴族もいるわけで……
そういうところを、きちんと教えておいた方がいいだろうか?
なんだか教師になったような気分だ。
「えっと、えっと……あれっすよ、あれ。アニキ、なんすか、あれって?」
「俺に聞かれても」
「えっとぉ……あっ、そうそう! ジ・ゼセル教とかいう、わけのわからない連中に襲われたっす!」