軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104話 勇者の……

アリオス一行は、ホライズンの街を出た後、南に移動した。

ストライドブリッジを通り、南大陸へ。

そして、橋の近くにあるリバーエンドの街に辿り着いた。

リバーエンドは、ホライズンに比べると小さな街だ。

特にこれといった産業はなく、観光地でもない。

強いて挙げるとすれば、大陸を行き交う人々の宿泊地になっている、ということか。

南大陸に渡り、最初に辿り着く街がリバーエンドだ。

大半の旅人はこの街に立ち寄り、旅の疲れを癒やす。

そのため、ある意味では、リバーエンドは重要な街なのだ。

そのリバーエンドでは、今、魔物の存在に悩まされていた。

リバーエンドを下った先……そこに、Cランクの魔物の群れが現れたのだ。

Cランクの魔物単体ならば、そこまでの脅威ではない。

同じCランクの冒険者ならば、まず間違いなく撃退できる。

しかし、群れとなると話は別だ。

リバーエンドの騎士の偵察によると、Cランクの魔物の群れは30匹ほど。

おまけに、Dランク、Eランクの魔物も集まっていて、計100匹ほど。

軍隊に匹敵するほどの戦力になっていた。

通常ならば、知能を持たない魔物が群れるということはありえない。

同族同士でも、時に、共食いをするのが魔物というものだ。

しかし、例外はある。

スタンピード。

破壊の衝動にとりつかれた魔物が群れをなし、全てを飲み込む災厄の嵐となる。

魔王復活の前兆とか、終末の訪れとか、色々と言われているが、その原因は不明だ。

ただ一つ。

わかっていることは、一度、スタンピードが起きた場合は、とんでもない被害が生まれるということ。

リバーエンドの近くで発生した魔物の群れは、間違いなく、スタンピードの前兆だった。

このまま放置すれば、さらに魔物の数が膨れ上がり……

とある一点を超えた時に、津波のようになだれこんできて、一切合切を飲み込むだろう。

そうなる前に、魔物を全て討伐しなければならない。

そして、その役目を与えられたのが……アリオス達だ。

アリオスとしては、魔物の討伐には興味がなかった。

スタンピードが起きたとしても、関係ないと、立ち去るつもりでいた。

しかし、ホライズンの街で生まれた『勇者達は街を見捨てた』という噂がリバーエンドまで流れ着いていた。

まだ噂の段階で、実際に、何か問題が起きたというわけではない。

しかし、このまま放置しておくことは悪手だ。

なので、仕方なくではあるが、魔物の討伐を引き受けた……というわけだ。

「ちっ、うっとうしい……ギガボルト!」

アリオスが、勇者にしか使うことができない雷魔法を放つ。

地を這う龍のごとく、電撃が疾走して、数匹の魔物を消し炭に変えた。

続けて剣を取り、風を切るように振るう。

咆哮をあげて襲いかかってきたオーガの足が切断される。

体勢を崩したところに、トドメの一撃。

頭部を貫かれて、オーガが絶命した。

「ぬぅんっ!!!」

複数の魔物の突撃を、アッガスは巨大な剣を盾代わりにして受け止めた。

全身を使い、弾き返して……

大剣を横に薙ぐ。

体を両断される魔物達。

しかし、全ての魔物に致命傷を与えることは叶わなかった。

生き残った魔物が体勢を立て直し、再び襲いかかろうとするが……

それは読んでいた。

「リーンっ!」

「わかってるわよ! ほらっ、いくわよ……レッドクリムゾン!」

リーンの魔法が炸裂して、生き残った魔物を吹き飛ばした。

「ふふんっ、こんな雑魚相手にあたしが……」

「まだだっ、油断するな!」

「へ? ……きゃあっ!?」

爆炎の中からリザードマンが飛び出してきた。

剣が振り下ろされる。

リーンは横に跳んでかろうじて避けたものの、次はない。

二度目の斬撃がリーンを襲う……

「ホーリーアロー!」

それよりも先に、ミナの魔法がリザードマンを消滅させた。

「大丈夫ですか!?」

「う、うん……ありがと、助かったわ」

「言っただろう、油断するなと」

「た、たまたまよ! こんなこと、もう二度とないんだからっ」

「おいっ、遊んでいるな! まだ敵は残っているぞ」

「わかっている」

アリオスの言葉に、それぞれが再び武器を構えた。

……ホライズンを後にして、リバーエンドに辿り着いたアリオス達は、そこで街の人々に頼られた。

スタンピードの前兆があるから、今のうちに魔物の群れを討伐してほしい。

今、冒険者は出払っていて、他に頼りになる者がいない……と。

どうして、勇者である自分がそのような雑事を引き受けないといけないのか?

アリオスは、当初、難色を示したものの……

ホライズンで生まれた悪評は、商人や旅人のせいで、リバーエンドにまで広がりつつあった。

このままでは、ホライズンの二の舞になりかねない。

そこで、仕方なく討伐を引き受けることにしたのだ。

本来ならば、簡単な依頼のはずだった。

スタンピードを相手にするとなると骨が折れるが……

その前兆というのならば、アリオス達にとって大したことではない。

圧倒的な火力をもって蹴散らせばいいだけのことだ。

すぐに終わる仕事だ。

……そう思っていた。

しかし、実際はどうだ?

苦戦とまではいかないが、アリオス達は魔物の群れを相手に少しだけ手こずっていた。

一対一で負けることは、まずありえない。

相手が複数だとしても、負けることもない。

今までの経験が確かならば……

アリオスが切り込み、アッガスが敵の攻撃を引き受ける。

ミナが援護をして、最後にリーンが上級魔法で一掃する。

そのパターンが通用するはずだった。

しかし、現実はどうだろう?

連携を繋げようとしたところで、狙ったように敵が邪魔をしてくる。

絶妙なタイミングで仲間が狙われて、次の一歩に進むことができない。

どうして、うまくいかない?

あと一歩のところで、どこかでつまずいてしまう。

まるで、神様にイタズラをされているみたいだ。

(これは……もしかして)

どうしてもうまく戦うことができず、アリオス達が苛立つ中……

アッガスだけは、一人、冷静に物事を考えていた。

今の自分達と以前の自分達。

違うものは何か?

……レインの存在だ。

レインは、敵に対してダメージを与えることができなかった。

そのくせ、敵に狙われて、味方の手を煩わせる始末だった。

しかし……その考えは、間違っていたのではないか?

レインが敵にダメージを与えられなかったのは、攻撃よりも味方のサポートを優先していたからではないのか?

そのおかげで、自分達はうまく連携を繋げることができたのではないか?

そして、レインが狙われたのは、敵が、レインこそがパーティーの要だと見抜いていたからではないのか?

(まさか……な)

アッガスは、自分で自分の考えを否定する。

しかし、否定しようとしても、一度思い浮かんだ可能性は消えてくれない。

むしろ、それこそが正しいのでは? と思い始めていた。

今になって冷静に考えてみると、そういうところはあった。

レインに力がなかったことは確かな事実だ。

しかし、本人はそれを自覚していて、別の方法でパーティーを支えようとしていた。

絶妙なタイミングで味方のサポートに入り、そして、時にあえて敵に狙われることで味方の代わりに被弾して……

あらゆる意味で、レインは仲間達の『盾』になっていたのではないか?

(……いや、考えすぎだ。そんなはずがない、あるわけがない)

アッガスは頭を振り、己の考えを、今度こそキッパリと否定した。

そのようなことがあるわけがない。

本当にあったとしたら……

レインを追放した自分達は、本質を見抜くことができない、とんだ間抜けということになるではないか。

そのようなことは認められない。

アッガスはそれ以上は考えないことにした。

――――――――――

「まとめて一掃するっ!!!」

アリオスの合図に、アッガス、リーン、ミナは後ろに引いた。

それを確認するよりも先に、アリオスが上級魔法を解き放つ。

「ルナティックボルト!!!」

天より極大の雷が落ちた。

さらに、それに追随するように稲妻が乱舞する。

荒れ狂う光の乱舞は魔物の群れを飲み込み、消滅させた。

「はぁ……はぁ……これで終わりか?」

アリオスは汗を拭い、周囲を確認する。

今の魔法のせいで土埃が舞い、視界は極めて悪い。

1メートル先が見えないほどだ。

生き残りがいないか、警戒するが……

「ガァッ!!!」

「アリオスっ、後ろです!」

「っ!?」

アリオスの隙をつくように、背後からオーガが現れた。

巨大な拳を振り上げて、アリオスを……

「にゃんっ」

「……なに?」

何か、素早いものが駆け抜けた。

その直後、オーガは頭を砕かれて倒れる。

そのまま絶命して、魔石となった。

何が起きたのだろうか?

アリオスは、慌てて周囲を見回した。

しかし、まだ土埃が舞っていて、よくわからない。

「ど、どういうことだ……今、なにが……?」

……視界の端で、わずかに猫耳が見えたような気がした。