軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キャステン公爵

「旦那様……もう……になった方が……旦那様……」

クリスティアナの墓があった場所から動けずにいると、執事が現れ何か訴えていたが聞き取れない。

地面に突っ伏したままの私を執事は立ち上がらせ、馬車へと促す。

クリスティアナが私の元から消えていく…

現実ではない。

これは夢なんだと思い込もうとするも、執務室の机の上には手続き完了の書類が置かれている。

全てを奪われたかのようにやる気も起きず、仕事も放棄するようになっていた。

「旦那様、ニルヴァーナお嬢様の行動が徐々に明らかになりました」

「…そんなものはどうでも良い、クリスティアナの宝石は?」

アレの行動なんてどうでもいい。

大切なのは、クリスティアナの遺品。

「…指輪が二点、ネックレスが四点、ピアスが七点、ブローチ一点を回収致しました」

「そうか…それで今は?」

クリスティアナの宝石は八割が戻ってきた。

貴族女性にしては宝石がかなり少ない。

クリスティアナは宝石を好むが、気に入った物しか身に付けない。

宝石を贈ろうとすれば、『自分で選ぶので独断で購入しないで』と婚約時代にきつく言われていた。

なので、贈り物はいつも彼女の意見を聞いてから贈るようにしていた。

彼女を驚かせることは出来ないが、気に入ってさえくれれば何度でも身に付けてくれる。

気に入らなければ決して身に付けない意志の強い女性だった。

我が家にある宝石はクリスティアナが選んだ特別な物と、誕生日なので贈られたが決して身に付けることのない宝石で分かれている。

アレが持ち去ったのは、クリスティアナが気に入っていた物だけだった。

「宝石は只今クリーニングに出しております」

「…わかった」

あの店主もそうだったが、宝石に慣れていない者や価値の分からない者が営む店にクリスティアナの宝石は転売されていた。

アレが何故あんな店を選択したのか理解できない。

金貨数枚のはした金の為に手放す品ではないのを知らない愚かな行為…

命を懸けてまで産む価値がアレにはあるのか?

あの愚か者のせいで薄汚い人間の手に渡ってしまった宝石は未だに私の手元にない。

美しいクリスティアナの宝石を見知らぬ汚れた男が触れたかと思うと虫酸が走る。

それでも残すはあと数点。

いち早く全てを取り戻したいが、クリスティアナの遺言もある…

「こちら、お嬢様が屋敷を出てからの報告書になります」

「…そんなもの」

執事は何度私がアレに関しての物や報告は『必要ない』と伝えても、置いていく。

置いていった所で私は全て処分する。

主の手間を増やす執事には問題だが、そんな下らない事で優秀な人材を辞めさせたりはしない。

暖炉に投げ入れるだけで済むこと。

今回も読まずに投げ入れ…

気の迷いか読んでみることにした。

「卒業式後。宝物庫に保管していたローレルからの贈り物を見たいと言うので鍵を渡したが、実際にはクリスティアナの宝石だけを持ち出し出奔の準備を行ってから制服姿でパーティーに参加…」

仕方なく報告書を読み始めるも最初の一文からして不愉快だった。

自身が贈られたものだけを持っていけば良いものを、クリスティアナの宝石まで持っていくとは。

「制服姿でパーティーに出席とは貴族としての矜持はないのか?」

ドレスならいくらでもあるだろうがっ…

怒りしか感じないが、今後執事に下らない報告書を止めさせるために一度だけ時間を無駄にすることにした。

「学園在学中に疑いをかけられた疑惑は全てニルヴァーナではなくローレルの犯行と王子により証明。王子とダンスを行った後会場を退出。屋敷に戻る…」

疑いをかけられた時に違うなら『違う』と断言すればすむことを、わざわざ大事にしてパーティーの雰囲気を壊したにも関わらず途中で抜け出す。

我が儘に育っているとは感じていたが、アレを知れば知る程怒りを覚える。

「最小限の荷物を持ち御者を使い王都まで向かい髪を売った…」

髪を売るのは平民がする事。

公爵令嬢のすることではない。

髪を切って恥を晒すとは、どこまでも貴族に向いてない奴だ。

「それから裏路地に入り、質屋で宝石を売り金貨十五枚を手にし乗り合い馬車を使い、宿を取り馬車を乗り換え手持ちが無くなると宝石を金貨に換えていた。だが、どこの質屋にも適格な値段では買い取られず数十枚で売買成立…」

どこまでも愚かなんだ…

「そして今現在は、ウェルトンリンブライド王国に入国し、第三王子の別邸に滞在中…第三王子…だと?」

何故急に第三王子が登場する?

「外交官を辞任したヨシュアルト侯爵が頻繁に訪れ良好な関係を築く。そして、第三王子とニルヴァーナは…」

読んで損するほど下らない、興味のないことばかりだった。